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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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62/80

062・新しい生活

第62話になります。

よろしくお願いします。

「お世話になりました、ポーラさん」


 宿屋の前で、姉さんは深く頭を下げた。


 新しい家を決めて1週間、ついに今日、姉さんは4年間暮らした宿から引っ越すんだ。


 ギュッ


 宿の女将ポーラさんは、姉さんを抱きしめる。


「元気でやるんだよ、ユフィ」

「はい」


 姉さんは、少し涙ぐんでた。


 ポーラさんは目を潤ませながら、でも笑って、姉さんの髪をクシャクシャと撫でた。


 それから僕を見て、


「弟君もお姉ちゃんとがんばってね」


 と激励してくれた。


 僕も「はい、がんばります」と頷いた。


 そうして、姉さん、僕、ミカヅキは、お世話になった宿屋をあとにして、領都の通りを歩いていった。




 新しい家に着いた。


 玄関に入ると、


「お、来たな」

「おかえり、ユフィ、アナリス」


 と、先に引っ越していたレイさん、アリアさんが出迎えてくれた。


 おかえり。


 その言葉に、あぁ、これからここで暮らしていくんだな……と改めて実感した。


 姉さんは少し照れながら、


「ただいま」


 とはにかんだ。


 姉さんに荷物を預けて、僕は、ミカヅキを連れて庭へと向かった。


 芝生の広い庭だ。


 敷地の境は、生垣になっている。


 そして、家に面した庭の奥に、大きな小屋があった。


 業者に特注で造ってもらったんだ。


 4メードの巨体のダークウルフが入れるので、そこそこの大きさだ。


 クンクン


 ミカヅキは臭いを嗅いで、それから中へと入った。


 床には藁が敷いてあり、ミカヅキは、軽く前足で凹みを作ってから、そこに身を横たえた。


『……ワフッ』


 リラックスした顔だ。


 うん、ミカヅキも気に入ってくれたみたい。


(よかった)


 モフモフ


 僕は笑いながら、ミカヅキの首回りを撫でた。


 金色の瞳を細めて、この賢いダークウルフは、自分の新しい居場所を受け入れてくれたんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 家に戻ると、僕と姉さんに割り当てられた部屋へと向かった。


 カチャッ


 室内に入る。


 それほど広くない部屋に、ベッドが2つ、机と椅子が1組、タンスが1棹、木箱の物入れが2つあった。


 ポーラさんの宿とあまり変わらない。


 でも、少し広くなり、窓も大きかった。


 何より、ここは借りた部屋ではなく、もう自分たちの部屋なのだ。


(……うん)


 そう思うだけで、感じ方も少し違うよね。


 姉さんは、タンスや物入れに引っ越し荷物の整理をしていた。


 僕も、着替えの服などをタンスにしまう。


 とはいえ、元々、宿屋暮らしで最低限の物しか持っていなかったため、荷物はそう多くなかった。


 作業はあっという間に終わってしまう。


 窓を開け、部屋の換気をしながら、姉さんが僕を振り返った。


「ふふっ、いよいよだね?」


 と笑った。


 差し込む日の光に、金髪が輝いている。


「アナリスと一緒の生活、ようやく始まったね」

「うん」


 僕も笑った。


 昔のように、また一緒に暮らせるのだと思うと、僕も心が温かくなった。


 姉さんも嬉しそうだ。


 その時、


 コンコン


 部屋の扉がノックされ、


「ユフィ、アナリス? レイがお昼ご飯を作ってくれたわ。片付けが終わったら来て」


 と、アリアさんの声が聞こえた。


 僕と姉さんは顔を見合わせる。


 姉さんが、


「わかった、すぐに行くわ」


 と答えた。


 昔と違って、ここではレイさん、アリアさんとも暮らしていくんだ。


 どんな日々になるのか、少し不安で、とても楽しみだ。


(…………)


 これも、父さん、母さんが言っていた『外の世界を見てくる』ということなのかな?


「行こ、アナリス」


 姉さんが僕の手を引っ張った。


 輝く笑顔。


 それを見つめて、僕は「うん」と頷いた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(わ、美味しい)


 初めて食べたレイさんの手料理は、とても美味しかった。


 パクパク食べる僕に、レイさんは笑う。


「お口にあったようで、何よりだ」


 その笑顔は、とても満足そうだ。


 料理が趣味と言っていたけれど、その味は、お店の料理と変わらない気がした。


 将来、冒険者を辞めても、料理屋で食べていけるんじゃないかな……?


 食べ慣れているのか、姉さん、アリアさんは、普通に食べていた。


 モグモグ


 僕もお腹いっぱいに食べさせてもらった。


 ……うん。


 これからも、レイさんの料理を食べれるのは嬉しいな。




 食事後の食器洗いは、姉さん、アリアさんがやってくれた。


 僕も手伝いたかったけど、洗い場が狭かったので、3人ではできなかったんだ。


(夕食の時は、僕がやろう)


 そう思ってる。


 所在なく、リビングのソファーに座っていると、


「アナリス君? このあと買い物に行くんだが、もしよかったら一緒に来てくれるかな?」


 と、レイさんに誘われた。


 もちろん、役に立てるなら何でもするつもりだ。


 僕は「うん」と了承する。


 レイさんは笑った。


「ありがとう。ミカヅキ君もいてくれたら、荷物運びも助かるよ」

「…………」


 あ、はい。


 自分ではなく、ミカヅキ目当てと知って、少し寂しくなる僕だった……。




 レイさんと一緒に外出した。


 歩幅の小さな僕は、相棒のダークウルフの背中に乗って、彼女に同行していた。


 姉さん、アリアさんは留守番だ。


 姉さんは行きたがったけど、まだ共同部分の荷物整理が終わってなかったんだ。


 なので、2人にはそっちを任せている。


 …………。


 領都は広く、人も多い。


 通りを歩いていると、ダークウルフは目立つようで、よく通りすがりの人に驚かれた。


 やがて、商店通りへ。


「これと、これを……」


 店主さんと話しながら、レイさんは食材を購入する。


 冒険でよく家を空けることになるからか、食材は保存の利く物が多い。


 買った物は、ミカヅキの身体の左右に括られた鞄に収められた。 


 モフモフ


「重くない?」


『ワフッ』


 撫でながら聞くと、『全然平気』と返ってきた。


 うん、いい子だ。


 レイさんも労うように黒い巨体を撫でて、ミカヅキも満更でもなさそうだった。


 食材を買い終えると、


「じゃあ、次はアナリス君の装備を買いに、武器防具屋へ行こう」


 と、レイさんは笑った。


 …………。


 え……僕の?



 ◇◇◇◇◇◇◇



 レイさんと訪れたのは、前に姉さんとのデートでも来たお店だった。


 そういえば、


(ここ、レイさん、アリアさんの行きつけの店だっけ)


 そう姉さんが言っていたのを思い出した。


 店内に入ったレイさんは、店員と挨拶する。


 そして、二言三言、言葉を交わして、店員が奥から何かを持ってきた。


 何だろう……?


 受け取ったレイさんは、それを広げる。


(あ……マントだ)


 それは冒険者の格好をしている時、3人がつけているマントと同じ物だった。


 レイさんは笑って、


「これは私たちパーティーのお揃いでね。アナリス君の分も作ってもらったんだ」


 と、僕に羽織らせた。


 …………。


 見た目より重い。


 雨の日にも活動できるよう防水で、弱い魔物の牙や爪なら破けないほどの防御力もあるそうだ。


 ヒュッ


 お店の弓を借りて、試しに構えてみた。


(うん、動ける)


 動作を邪魔することもなかった。


 レイさんも頷いた。


「問題ないようだね」


 そう笑って、店員に購入代金を支払った。


 ……え?


 あの、僕が払うんじゃないの?


 そう驚いたけど、


「これはパーティーとしての備品だからね。そのための財布から出すんだ」


 と、レイさん。


 クエスト報酬から一部を抜いて、パーティー用の共同貯金にしているのだそうだ。


 レイさんは笑って、


「これからは、アナリス君も仲間だからね」


 と言った。


 …………。


 なんだか胸に来た。


 羽織らされたマントを見つめ、小さな手で撫でる。


 僕も、3人の仲間。


 そう認められた証拠みたいに思えた。


 僕は目を細め、


「ありがとう、レイさん」


 笑って、素直にお礼を言った。


 そんな僕に、レイさんは虚を衝かれた顔をする。


 苦笑して、


「……アナリス君のその笑顔は、とても破壊力があるね。ユフィが射貫かれた理由が少しわかったよ」


 なんて言った。


 少し頬が赤い気がする。


(???)


 意味がわからず、僕は首をかしげた。


 …………。


 そうして僕とレイさんは、武器防具屋をあとにして、姉さんたちの待つ我が家へと帰ったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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