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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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54/80

054・昇印試験

第54話になります。

よろしくお願いします。

「行くよ、ミカヅキ」


『ウォン』


 僕の言葉に応えて、ミカヅキは走り出した。


 その背中に跨ったまま、僕は手にした『狩猟弓』から金属の矢を放つ。


 ズパァン


 それは、赤角の猪の1頭の眉間を貫いた。


 矢の先端は、確実に脳まで届いている。


 ドタン


 絶命した巨大な猪は、大きな音を立てて地面に倒れた。


『プギッ!?』


 群れの魔物たちは驚く。


 そして、すぐに斜面を下って接近するダークウルフの存在に気づいた。


『ピギィ!』


 ボスらしい猪が吠えた。


 それに応えて、13頭の魔物の群れが赤い角を突き出しながら、僕とミカヅキ目がけて突進してくる。


 ドドドッ


 地鳴りのような足音が響く。


 その中で、僕は、次々と矢を放った。


 ズパン ズパァン


 2頭目、3頭目の赤角の猪が同じように眉間を貫かれて、地面へと転倒した。


 そしてミカヅキは、


 タン タタン


 素早い動きで、魔物たちの突進をかわしていく。


 その慣れた揺れの中で、


「はっ」


 僕は止まらずに矢を放った。


 ズパァン

 

 また1頭、赤角の猪が絶命する。


 これで4頭目。


 魔物の群れの動きに、戸惑いが生まれた。


 自分たちの攻撃は一向に当たらず、一方的に仲間が殺されていく状況に、恐怖を感じ始めたみたいだ。


 逃げようとする個体もいる。


(させない)


 僕は、ミカヅキの背を叩く。


 気づいたミカヅキは、魔物を逃さないように、群れの周囲を円を描くように走りだした。


 僕は、円の中心に向かって矢を放つ。


 ズパン ズパン


 魔物たちは、次々に倒れていく。


『プギィ!』


 決死の覚悟で、赤角の猪の1頭が突進してきた。


 けれど、


 バチッ ドパァン


 ミカヅキの額に生えた雷角から青い『雷撃』が飛んで、魔物を弾き飛ばした。


 巨体が木に激突する。


 体毛が焦げ、肉が焼けていた。


 ズパァン


 その無防備な心臓へと、僕の放った金属の矢が突き刺さった。


 これで、7頭目。


 ふと気づけば、窪地の上にいる姉さんたちが、僕らの戦いを見守っていた。


 姉さんは目を輝かせている。


 レイさんは頷いて、アリアさんは呆れた顔だ。


 熊さんは、


「……嘘だろ?」


 唖然とした顔で、あんぐり口を開けていた。


 チャッ


 僕は、次の矢を狩猟弓につがえる。


 残りの矢は、あと3本。


 僕は、再び赤角の猪の1頭に狙いを定めると、


「はっ」


 金属矢を鋭く放った。


 …………。


 やがて矢筒の矢がなくなった。


 そして僕の目の前の地面には、きっちり10頭の『赤角の猪』の死体が倒れていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 矢も尽きた以上、僕の出番はここまでだ。


 次の主役となる3人も、窪地の斜面を駆け降りて、僕らと入れ違うように前に出た。


 ガシャン


 レイさんが円形盾と片手剣を構えた。


 前を向いたまま、


「さすがだったよ、アナリス君」


 と笑った。


 アリアさんも「ふん」と鼻を鳴らして、


「相変わらず、とんでもない弓の腕よね。もしかして、前より威力も上がってるんじゃないの?」


 と唇を尖らせる。


 最後に姉さんが、


「ありがとう、アナリス。あとは私たちに任せて」


 そう言って、低い姿勢で槍を構えた。


 その背中で、2つ折りのポニーテールにされた長い金色の髪が、風になびいた。


 僕は「うん」と頷いた。


 ミカヅキと一緒に、後ろに下がる。


 残った5頭の赤角の猪は、興奮した状態で、新しく現れた3人の冒険者を睨みつけた。


『プギィオ!』


 体格のいいボスが吠えた。


 ドドドッ


 途端、4頭の魔物は、姉さんたちへと突進した。


 3人とも、落ち着いた顔だ。


 レイさんが前に出ると、先頭の猪の巨大な赤角を円形盾で受け止めた。


 ガギィン


 火花が散る。


 同時に、レイさんは身体を捻った。


 突進した力の方向性を狂わされて、その赤角の猪は転倒した。


 ドォン


『!?』


 目の前での仲間の転倒に、他の3頭は反応できなかった。


 横倒しになった巨体に躓いて、次々と地面にぶつかり、3頭ともが転がっていった。


 ドシュッ


 レイさんの片手剣が、その心臓を貫く。


 ドスッ ドスッ


 姉さんの槍も、他の2頭の急所を正確に貫いていた。


『プギッ』


 最初に転倒した魔物は、慌てて立ち上がる。


 ゴポン


 その鼻と口を、青い水球が包み込んだ。


 最後方にいたアリアさんが、高く掲げた杖の魔法石を青く輝かせていた。


 気泡が湧く。


 窒息した魔物は混乱し、隙だらけだ。


 それを逃さず、レイさんの片手剣、姉さんの槍は、即座に魔物の命を絶った。


 ドサッ


 絶命した魔物が倒れた。


(3人とも、強い)


 半年前と比べて、戦いの連携がより洗練されていると感じられた。


 まるで、3人で1つの生き物みたい。


 もしかしたらこれが、手紙にもあったダイダロスさんに特訓してもらった成果なのかな?


 残るは、ボス1頭。


 ボス猪の体長は、4・5メードほど。


 ミカヅキよりも大きい。


 そして、仲間が全滅したのにボス猪は逃げずに、姉さんたち3人と戦うつもりみたいだ。


 ガッ ガッ


 前足で、地面を強くかく。


 頭部に生えた赤い角は、とても立派だ。


 あの巨体の重さと突進力なら、直撃したら、森の木だって簡単にへし折れるだろう。


 当たれば、致命傷だ。


 …………。


 でも、姉さんたちに怯んだ様子はなかった。


 ガシャン


 それぞれの武器を構えて、隊列も組み、完全な迎撃態勢を取っていた。


『プゴォ!』


 ボス猪は高く吠えた。


 地響きを立てながら、姉さんたちへと突進した。


 ドドドッ


 姉さんたちはその動きを冷静に見極めて、3人同時に武器を振るった。


 …………。


 ボス猪は、よく粘ったと思う。


 でも、4頭の赤角の猪を倒せる姉さんたち3人相手では、どうしようもなかった。


 少しずつ傷が増え、


 ドシュン


 最後は、姉さんの槍に片目を貫かれ、その奥の脳まで刃が届いてしまった。


 ドォン


 重い音と共に、巨体が倒れる。


 血だまりが地面に広がった。


 その絶命を確認して、姉さんたちは武器を下ろした。


 …………。


 安心した表情だ。


 そして、姉さんは僕を見て、


「アナリス、やったよ」


 と、手にした槍を掲げて、嬉しそうに微笑んだんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 戦いが終わると、熊の獣人も窪地へと降りてきた。


 15頭の魔物の死体。


 それを見回して、


「なるほど、いい腕だな」


 と頷いた。


 それから姉さんたち3人を見て、


「お前たちなら、この小僧とダークウルフがいなくても、工夫して15頭を倒せていただろう」


 と評価してくれた。


 うん、僕もそう思う。


 試験官にそう言われて、姉さん、アリアさんも嬉しそうだ。


 レイさんも笑って頷いている。


 それから熊さんは、僕も見た。


「……それとお前は、本当に噂通り……いや、噂以上だな。あまり言いたくはないが、村の狩人にしておくのが勿体ないレベルだったぞ?」


 なんて言われた。


 そう言われても、僕はただの狩人だ。


 よく誤解されるけど、本当に強いのはミカヅキなんだ。


 そして僕は、そんなミカヅキの背中という安全な場所から、ただ弓矢を射っているだけなんだよ?


 そう言うと、


「はっ、自覚がないってのも呆れるな」


 と、大きな肩を竦められた。 


 レイさんは苦笑し、アリアさんは頷いている。


 姉さんは困ったように微笑んで、僕と熊さんのやり取りを見ていた。


 …………。


 そのあとは、毛皮や魔石などの素材を集め、僕は10本の矢を回収した。


 そして熊さんは、


「他にも魔物がいるかもしれない。まだ試験は終わりじゃないぞ」


 と言った。


 姉さんたちは頷いた。


 そうして僕らは、再び森の探索を始めようとした――その時だった。


『!』


 ピクッ


 ミカヅキが何かに反応して、顔を持ち上げた。


 ん?


 その金眼の視線は、窪地の斜面へと向けて固定されている。


 …………。


 あそこに何かあるのかな?


 僕は首をかしげると、その斜面へと近づいた。


「アナリス?」


 気づいた姉さんが声をかけてくる。


 レイさん、アリアさん、熊さんもこちらを見た。


 その視線の先で、


「あ」


 僕は、斜面の茂みの奥に隠されるように、大きな地面の亀裂があるのを発見した。


 …………。


 これ、洞窟だ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ミカヅキは従魔扱いだからアナリス君はソロで緑級クラス?9歳で。 [一言] 金属を使った現代アーチェリーで使われる弓は科学的な分析によってエネルギー効率を考えて作られているので、その大き…
[一言] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ アナリス&ミカヅキが強過ぎて姉パーティーの印象が薄く感じてしまう問題(笑) いや、ユーフィリア達が弱い訳ではないのですが、如何せん比べる相手が悪い。 しかしま…
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