表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/80

051・睡眠と麻痺の薬

第51話になります。

よろしくお願いします。

 姉さんの手紙は、2ヶ月に1度、届く。


 だから、昇印試験の結果は、次の手紙で教えてもらえるんじゃないかな?


 …………。


 少しドキドキするね。


 その時を待ち侘びながら、僕は日々を過ごした。




 春も半ばになって、ようやく裏庭の薬草が育った。


 うん、立派な葉っぱだ。


 この植物の葉には、『睡眠』と『麻痺』の2種類の効果があるんだ。


 グツグツ


 換気のいい場所で煮詰める。


 口と鼻には、マスク代わりの布を当てていた。


(こんなものかな?)


 やがて、ドロリとした液体ができあがる。


 これが『睡眠の薬』だ。


 同じ葉を乾燥させてすり潰すと、『麻痺の粉』もできあがった。


「うん」


 早速、効果を試してみよう!




 ということで、森にやって来た。


 ミカヅキにも来てもらって、その優秀な鼻で獲物を探してもらった。


『ウォン』


 ミカヅキが小さく吠えた。


 さすが、すぐに獲物を発見したみたいだ。


 ミカヅキは音も立てずに、僕を背中に乗せたまま、森の奥へと移動していく。


 チャポッ


 その間に、僕は金属矢の先端を、瓶に詰めた液体に浸した。


 ドロッとした液体が矢じりを濡らす。


 …………。


 しばらくして、ミカヅキが足を止めた。


(――いた)


 頭から角を生やした黒ウサギだ。


 20メードほど前方で、地面を掘って小さな植物の根を懸命にかじっていた。


 僕は『狩猟弓』を構える。


 よく狙って、


(えいっ)


 ヒュボッ


 金属の矢は、その長い耳をズパンと貫通した。


『ピギッ!?』


 驚いた魔物の黒ウサギは、耳から血を流しながら、まさに脱兎となって逃げだした。


 もちろん、耳を狙ったのはわざとだ。


 致命傷を与える訳にはいかないからね。


 慌てることなく、ミカヅキに匂いを追跡してもらって、ゆっくり追いかけた。


 …………。


 1分ほどして、


「あ」


 地面に倒れている黒ウサギを発見した。


 眠っている。


 スゥ スゥ


 耳から血を流しながら、でも、気持ち良さそうに寝息を立てていた。


 姿を晒して、完全な無防備だ。


 ……うん。


 まさか、こんなに睡眠の薬が効くなんて驚いたよ。


 トン


 僕はミカヅキから降りて近づいた。


 起きる気配はない。


 それに満足して、僕は『山刀』を鞘から抜くと、眠る黒ウサギへと振り下ろした。




 麻痺の粉は、水に溶いた。


 睡眠の薬と同じように瓶に詰めて、そこに矢の先端を浸ける。


(…………)


 次の獲物は、尻尾の先がずっと燃えている狐――『炎尾の狐』という魔物だった。


 体長2・5メード。


 尾の炎から、火の玉を飛ばしてくる、なかなか厄介な奴だ。


 …………。


 その狐の魔物は、草むらに隠れている僕とミカヅキに、まだ気づいていなかった。


 僕は『狩猟弓』を構え、


 ヒュボッ


 鋭く矢を放った。


 ズパン


『!?』


 太い後ろ足に突き刺さって、炎尾の狐は驚いた顔をした。


 すぐに僕らに気づく。


 怒ったように牙を剝いて、その先端に炎の灯った尻尾を大きく振り回そうとした。


 けれど、


 コテン


 その瞬間、バランスを崩して、炎尾の狐は転んだ。


 狐は驚いた表情だ。


 手足は、ピクピクとかすかに動いている。


 でも、それだけ。


 それ以上は動かない。


(うん、麻痺が効いているんだ)


 どうやら身体だけでなく、魔法の発動もできなくなっているみたいだった。


 僕らは魔物に近づく。


 そして、ミカヅキが大きく口を開けて、狐の首に噛みついた。


 ガブッ


 大きな牙が食い込み、頚椎がボキリと折れた。


 炎尾の狐は、何も抵抗できないまま、ダークウルフの胃袋に収まってしまった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 森での検証を終え、家に帰ってきた。


 実験は大成功。


 どっちも予想以上の効果で、僕としては大満足だ。


 恐らく、10メード以上あるような大型の魔物相手にも通じるんじゃないかな?


(――うん)


 これで、より強い魔物も狩れるかもしれない。


 でも、薬の量が少ないんだ。


 裏庭で育てただけの薬草だからね。


 種からまた育てるとしても、採取できるまでには時間がかかるだろう。


 つまり、


「奥の手かな?」


 僕は呟いた。


 今後は、強敵――例えば、あのミノタウロスのような魔物を相手にする時などに使う最終手段として考えておこう。


 それ以外の普段の狩りでは、封印だ。


 …………。


 可能なら、栽培範囲を広げて、もっと育てたいけどね。


 チャポッ


 僕は2つの瓶を持ち上げ、太陽に透かした。


 液体が揺れて、キラキラと陽光に輝いた。


 とても綺麗だ。


 これが、あんなに凶悪な性能を秘めているなんて、誰も想像もできないんじゃないかな……?


 そうして眺めていると、


「アナリス、少しいいか?」


 父さんにそう声をかけられた。


 ん?


 僕は瓶をしまって、父さんを振り返った。


 父さんは旅装束だった。


 そして、僕を見つめて、


「実はな、魔物災害に遭った北西の村に、ハイト村から援助物資を送ることになった。その輸送に、お前とミカヅキも参加して欲しい」


 と言った。


 …………。


 ……援助物資の輸送?




 父さんから、詳しい説明をしてもらった。


 去年、北西の村は魔物災害に遭った。


 何とか冬は越せたのだけれど、立て直しにはまだ時間がかかりそうで、物資が不足しているんだって。


 幸い、ハイト村には余裕があった。


 こうした小さな村は、近隣同士で互助しながら生活をしているんだ。


 なので、ハイト村からの援助も決まった。


 そうして物資の輸送を行うことになったのだけれど、


「この村のダークウルフならば、馬よりも多くの物資を運べるのでは? ……と、村長からの提案を受けた」


 とのことだ。


 確かに、ミカヅキは馬より大きく力持ちだ。


 より多くの荷物が背負えるし、より大きな荷車だって引けるだろう。


 …………。


 まぁ、好みではないかもしれない。


 でも、ミカヅキは賢いし優しいから、頼めば、きっとやってくれると思う。


 それに、困っている人を助ける行為だ。


 反対する理由もない。


 僕が了承すると、父さんも安心したように「そうか」と頷いた。


 …………。


 …………。


 …………。


 それから数日後、僕らと共に、たくさんの荷物を背負い、荷車も引いたミカヅキが北西の村へと出発した。

ご覧いただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ ふと思ったんだけど、麻痺薬にやられた獲物の首に噛み付いたミカヅキは麻痺薬に対する耐性でもあったのでしょうか? …とはいえ、アナリスの持ち札が増える分には問題な…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ