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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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046・事件の真相

第46話になります。

よろしくお願いします。

 犯罪者ギルド。


 それは、非合法な仕事を斡旋する犯罪組織のことだ。


 ライシャさんは、


「例の『黒い笛』の販売記録を追ったところ、犯罪者ギルドに辿り着きました」


 と教えてくれた。


 それによると、とある貴族からクリスティーナ様を狙う依頼があったとのこと。


 その貴族の名前まではわからないらしい。


 けれど、恐らく権力争いをしている『ルイーズ家』で間違いないだろうと伯爵様は考えているそうだ。


 ……酷い話だ。


 貴族の世界って、本当に恐ろしい。


 アリアさんは、


「それで、クレイマンについては?」


 と聞いた。


 感情を押し殺した声だ。


 ライシャさんの話によれば、依頼を受けた犯罪者の1人だろうとのこと。


 狂信の魔術師クレイマン。


 それが、裏の世界での奴の通り名だそうだ。


「そちらの世界ではかなり有名なようで、多くの人を誘拐し、殺している重要度4の手配書が出ている犯罪者です」


 その声は険しい。


 1歩間違えれば、クリスティーナ様も殺されていたんだ。


 …………。


 クレイマンの現時点での所在は不明。


 ただし、街道に検問を敷いたため、アルパ領内から出られないだろうとのことだ。


 数日以内に、似顔絵付きの手配書も出る予定らしい。


「……そう」


 アリアさんは、短く呟いた。


 それから、ライシャさんを見て、


「奴に関して、また新しい情報が入ったら教えてちょうだい」


 と強く言った。


 ライシャさんは「はい」と頷いた。


 …………。


 もしかしたら、アリアさんは自分で捕まえたいのかな?


 あるいは、自分の手で……とか?


 その思い詰めたような横顔を見ていると、そんな気がしてしまった。




 そのあと、ライシャさんからは、あの『黒い笛』についても教えてもらった。


 あれは『獣の魔笛』という魔道具らしい。


 名前の通り、従属させた獣系の魔物を操れるそうだ。


 そして、ライシャさんは、


「これは内緒なんですけど、最近、そうした魔物操作系の魔道具の取引が、とても多くなっているんです」


 と、こっそり教えてくれた。


 …………。


 それって、もしかして?


 最近、領内で魔物災害が頻発していて、騎士団が人手不足になっている噂があった。


 その魔物災害は……もしかしたら、人為的な……?


 僕の予想に、姉さんたちは「まさか」と驚いた顔だ。


 でも、ライシャさんは真面目な顔だった。


 唇に人差し指を当てて、


「伯爵様も、その可能性を憂慮なさっています。でも、他言は無用ですよ?」


 と釘を刺された。


 それから、


「まだ憶測の段階ですが、その魔物災害にも『ルイーズ伯爵家』が関わっている可能性がありますからね」


 なんて口にした。


 …………。


 僕も、姉さんたち3人も渋い顔だ。


 でも、ライシャさんは全て話せて、すっきりした顔だ。


 やがて、


「では、私はこれで」


 赤毛の女騎士さんは、報告を終えるとトールバキン家へと戻っていった。


 …………。


 ……うん。


 なんか、あまり聞いてはいけない部分まで深入りしてしまった気がするなぁ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 個室を出ると、窓の外は夕暮れだった。


 結局、クレイマンというエルフの居場所はわからなかったけど、それも時間の問題だろう。


 アリアさんは、


「…………」


 窓から、ただ赤い空を見ていた。


 姉さんは、僕の手を握って、


「宿に帰ろっか」


 と微笑んだ。


 僕は頷いた。


 すると、アリアさんは、


「――ユフィ。アンタの弟、大事にしなさいよ」


 と呟いた。


 え……?


 思わず、姉さん、レイさんと一緒に振り返った。


 アリアさんは、どこか泣きそうな顔で夕焼けを見つめて、


「クレイマンはね、死んだ妻を甦らせようと人体実験を繰り返してる異常者なの。……その実験で10年前、実の娘も1人、殺してるわ」


 そして、


「それが……アタシの妹よ」


 そう告白をした。


 ……え?


 僕は目を見開く。


 その死んだ娘がアリアさんの妹って……つまり、クレイマンはアリアさんのお父さん……?


 姉さん、レイさんも驚いていた。


 アリアさんは静かに語る。


 アリアさんのお母さんは人間だった。


 けれど、病で亡くなり、エルフの父はおかしくなってしまったという。


 そして、古の『転生の秘術』を追い求め、母を生き返らせようと多くの罪を犯しているというのだ。


 …………。


 でも、そのために人体実験なんて……。


 それも実の娘まで。


 夕焼けを背に、アリアさんは僕らを見る。


「あの日、アタシは妹を守れなかった。……でも、アンタたちは、そうなるんじゃないわよ?」


 真っ直ぐな眼差しで、僕らにそう言った。


 …………。


 僕と姉さんは、頷いた。


 ギュッ


 繋いだお互いの指に力がこもる


 姉さんは、


「――アナリスは、絶対に失わない」


 はっきりと言い切った。


 アリアさんは小さく微笑み、頷いた。


 そして、また赤い空を見る。


 僕ら3人は、ただ黙って、青髪の流れるそんな彼女の背中を見つめていた。


 …………。


 やがて、僕と姉さんは、2人と別れて宿に帰ったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 僕が村に帰る日がやって来た。


 宿屋の前では、旅支度をした僕とミカヅキがいて、姉さんが見送りに立っていた。


「アナリス、またね」


 ギュッ


 姉さんが僕を抱きしめる。


 僕は「姉さんも」と、その背中をポンポンと叩いた。


 姉さんは泣きそうだった。


 でも、必死に笑ってくれていた。


 …………。


 それから姉さんは、ミカヅキにも抱きついて、柔らかな黒い毛を撫でていた。


 身体を離すと、


「私がいない間、アナリスをお願いね?」


 そう語りかける。


 ミカヅキの金色の瞳は、姉さんを見つめ返して、


『ワフッ』


 短く吠えた。


 それに、姉さんも安心したように微笑んだ。




 やがて、僕はミカヅキの背に跨った。


 昨日の内に、レイさん、アリアさんには別れの挨拶を行っていた。


 心残りはない。


(…………)


 短かったけど、楽しい領都での日々だった。


 今の姉さんの生活もわかったし、冒険者みたいな生活も面白かった。


 また来たいな……。


 そんな思いで、街並みを眺めてしまう。


 すると、


「アナリス……」


 姉さんの声がした。


 振り返る。


 長い金色の髪をゆるやかになびかせて、姉さんは僕を見つめていた。


 大好きな姉さん。


 …………。


 僕は笑って、


「また来年、会おうね、姉さん」

「うん」


 泣きそうな姉さんも微笑み、頷いてくれた。


 ポン ポン


 ミカヅキの背中を叩く。


 それに応えて、大きなダークウルフは領都の通りへと歩きだした。


 周囲の人が、ちょっと驚いてる。


 宿屋の前で、姉さんは「元気でね、アナリス」と大きく手を振っていた。


 僕も、小さな手を目一杯、振り返した。


 …………。


 やがて、その姿も歩く人々の中に消え、見えなくなる。


 僕は、前を向いた。


 村に帰ったら、やることはいっぱいある。


 父さん、母さんへのお土産話もたくさんできた。


「……ん」


 太陽の日差しが眩しい。


 思わず、僕は、青い瞳を細めてしまった。


 …………。


 快晴の青空の下で、僕はこうして領都を出発して、ハイト村へと旅立ったのだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 幾ら娘さんのお気に入り兼命の恩人とは言え、よく此処までの情報開示をしたな。 あわよくば引き込めるとでも思ったのか? ともあれ暫くはハイト村への旅路になるのでし…
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