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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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40/80

040・トールバキン伯爵

第40話になります。

よろしくお願いします。

「あの、アナリス……この人は?」


 何も知らない姉さんが、僕に顔を寄せて小声で聞いてきた。


 あ、そうか。


 姉さんは初対面だっけ。


 僕は、前にも話した領都への道中で出会った1人であることを伝えた。


 姉さんは、


「トールバキン家の騎士様……?」


 と、目を丸くして赤毛の女騎士さんを見つめた。


 ライシャさんは「その節は、弟様にお世話になりまして」と頭を下げる。


 姉さんは「あ、いえいえ」と慌てて両手を振った。


 そういえば、


「ライシャさん、もう身体は大丈夫なんですか?」


 思い出した僕は聞いた。


 出会った時、火炎蜥蜴にやられて怪我をしてたんだよね。


 ライシャさんは微笑んだ。


「はい。あの時、アナリス様に頂いた薬草が効いたようで、医師にも適切な処方がされていたと感心されました。今はもう普通に動けます」


 そっか、それはよかった。


 僕も笑ってしまった。


 もちろん彼女も騎士なので、一般人より体力があったのも要因だろう。


 何にしても元気なら何よりだ。


 姉さんは、そんな僕らを見つめる。


 それから、


「あ、あの、今日はアナリスに何の御用でしょうか?」


 と問いかけた。


 ライシャさんはハッとする。


 頷いて、


「はい。本日は、我が主クリスティーナ様からの言伝を伝えに参りました」


 と言った。


 …………。


 クリスティーナ様の……?




「端的に申し上げれば、アナリス様に会いたい、早く家に来て欲しい、とのことです」


 ライシャさんは、そう言った。


 僕は目を丸くする。


 えっと、


「つまり……催促ですか?」

「はい」


 赤毛の騎士様は、苦笑しながら頷いた。


 確かに約束していたし、2~3日後には会いに行く予定だったけど……ちょっとびっくりだ。


 ライシャさんは、詳しい話をしてくれた。


 それによると、実はクリスティーナ様たちは、昨日、領都へと帰還したそうだ。


 ご実家に戻られたお嬢様は、すぐに僕の訪問がなかったか確認したけれど、まだだと知って大層がっかりされてしまった。


 そして、ライシャさんに催促の言伝を頼んだそうな。


 …………。


 でも、どうやって僕の所在を?


 そう聞くと、


「冒険者ギルドで教えてもらいました」


 だって。


 僕が『冒険者の姉』に会いに領都に向かっているのは、道中、話していた。


 そこで冒険者ギルドで、『アナリスという名前』で『9歳の男の子』で『ダークウルフの従魔』を連れている子を知らないか、確認したというんだ。


 そうしたら、聞いた全員が『知っている』と答えたんだって。


 …………。


 ……え、何で?


 姉さんは苦笑して、


「だって最近、アナリス、ずっとギルドに通ってたもの。それにたくさん稼いでたし、ミカヅキも凄く目立ってたと思うよ?」


 なんて、おっしゃる。


 ……僕は返す言葉もない……。


 結果、僕の姉のことも判明し、その宿泊先も把握できてしまったとのことだ。


 …………。


 個人情報、駄々洩れだね?


 さすが異世界だ……。


 放心してしまう僕に、ライシャさんは困ったように笑った。


 それから、


「勝手な真似をお許しください。ですが、お嬢様にとってアナリス様は、命の恩人であり、竜を倒した勇者なのです」


 と言った。


 …………。


 そんな大層な人間じゃないのだけれど……でも、あの幼い女の子に憧れてもらえていることはわかった。


 少しくすぐったい気持ち。


(はぁ)


 僕は息を吐く。


 顔をあげて、


「わかりました。それでは明日の午前中にお伺いすると、クリスティーナ様に伝えてください」


 と、返事をした。


 ライシャさんは嬉しそうに「はい」と頷く。


 そうして用事を終えた彼女は、僕らに一礼すると、主人に報告するために宿屋を去っていった。


 姉さんとそれを見送る。


 すると、姉さんはこちらを見て、


「明日は、私も一緒に行っていい?」


 と聞いてきた。


 え?


「うん、僕はいいけど」


 僕は頷いた。


 多分、クリスティーナ様も許してくれると思う。


 姉さんは微笑んだ。


 僕の頭を軽く撫でて、それから、ふと遠くを見る。


 金色の長い前髪の奥にある目を細めて、


「……私はアナリスのお姉さんだから、その女の子がどんな子なのか、この目で見ておきたいの」


 そう呟くように言った。


 ……???


 どういう意味?


 よくわからないけど、姉さんには不思議な迫力があって、僕は深く聞けなかった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、宿屋の前に、トールバキン家から迎えの馬車が来た。


 貴族の馬車だ。


 道を歩く人たちは『何事か?』とこちらを見ながら通り過ぎていく。


「お待たせしました」


 ライシャさんが笑った。


 僕と姉さんは、あまりの豪華さにポカンとしてしまう。


 そして、ポカンとしている間に馬車に乗せられてしまった。 


 女将のポーラさんは「生きて帰るんだよ……」と、そんな僕らに手を合わせて見送ってくれた。


 え、縁起でもない。


 ガラガラ


 馬車は通りを移動する。


 賑やかな一般区画を抜けて、領都中央の貴族街へとやって来た。


 …………。


 貴族の作法なんて知らない。


 無礼なことをしちゃって、処刑されたりしないよね……?


 姉さんも緊張した顔だった。


 カタン


 やがて、馬車は、貴族街でも1~2を争う大きな屋敷の玄関前で停まった。


(うわぁ……)


 メイドさんが並んでいる。


 僕と姉さんは、馬車を降りた。


 すると、玄関が開いて、


「アナリス様!」


 紫色の長い髪をなびかせたお嬢様が僕に飛びついてきた。


 わっ?


 慌てて受け止める。


 9歳なのに、香水の匂いがした。


 さすが貴族の子女だ。


 僕は「こんにちは、クリスティーナ様」と微笑んだ。


 クリスティーナ様は橙色の瞳を細めて、嬉しそうにはにかむ。


 それから、唖然としている姉さんに気づいた。


「こちらは?」

「姉です」


 僕の答えに、クリスティーナ様はハッとした。


 姉さんに向き直ると、


「初めまして、お姉様。わたくし、クリスティーナと申します」


 フワッ


 幼いながらも綺麗なカーテシーを披露した。


 姉さんは反応しない。


 ツン


 僕は肘で軽く、姉さんのことをつついた。


 姉さんはハッとして、


「ご、ご丁寧にどうも、クリスティーナ様。わ、私はアナリスの姉のユーフィリアです」


 と、頭を下げ返す。


 クリスティーナ様は姉さんをジロジロ見つめて、


「透き通った肌に艶やかな黄金の髪……さすが、アナリス様のお姉様、とてもお美しいですわ」


 と、熱い吐息をこぼした。


 姉さんは「お、おうつ……っ!?」と息を飲む。


 その頬が赤くなる。


 それから顔をしかめて、


「うぅ……いい子」


 と呟いた。


(???)


 昨日の迫力はどこに行ったんだろう?


 そんな僕らを、ライシャさんは微笑ましそうに眺めている。


 そうこうしている内に、再び玄関が開いた。


 そこから出てきたのは、領都への道中で出会った隊長騎士さんともう1人、紫色の髪をした美しい男の人だった。


 その佇まいから、気品が漂う。


 …………。


 この人が、トールバキン伯爵様だ――そう直感した。


 僕は頭を下げる。


 それを見て、姉さんも慌てて、長い金髪を揺らして頭を下げた。


「楽にしなさい」


 柔らかな声。


 それに促されて、僕らは顔をあげた。


 トールバキン伯爵は、娘と同じ橙色の瞳を細めて、穏やかに微笑んでいた。


「ようこそ、小さな勇者様」


 そう僕に語りかける。


 威圧的なものは何もなく、とても落ち着いた声だ。


 これが貴族様?


 もっと怖いものを想像していた僕は、驚いてしまった。


 クリスティーナ様は「お父様!」とその腕に抱きついた。


 お父様は、優しく笑う。


 それから、


「今日はよく来てくれたね。中庭でお茶の用意をしてあるんだ。さぁ、入りなさい」


 と、僕らを誘った。


 僕は、


「ありがとうございます」


 と笑って、お礼を言った。 


 それにトールバキン伯爵様も微笑んだ。


 そうして僕と姉さんは、初めての貴族様とのお茶会に応じることになったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばそうか。 亜種とはいえドラゴンスレイヤーには違いない。 確かにドラゴンを倒した勇者と言えるな~。
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ <「……私はアナリスのお姉さんだから、その女の子がどんな子なのか、この目で見ておきたいの」 つまりユーフィリアは、「ワレェ!? ナニ人の大切な弟に手ェ出…
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