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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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034・氷結の鹿

第34話になります。

よろしくお願いします。

 翌日、僕らは領都を出発した。


 討伐対象の魔物がいるのは、馬車で3~4時間ほどの場所だそうだ。


 ガラガラ


 僕ら4人は、馬車に揺られる。


 その後ろを、ミカヅキがついて来ていた。


 車内では、今回のクエストについてを詳しく教えてもらえた。


『氷結の鹿』


 それが、今回の討伐対象の魔物だ。


 氷の魔法を使う体長3メードほどの巨大鹿だそうだ。


 レイさん曰く、


「魔爪の白熊を倒せるなら、これぐらいの魔物でも大丈夫だろうと判断した」


 と、受注理由を教えてくれた。


 …………。


 うん、倒せるようにがんばろう。


 ちなみに報酬は2000ゴルダ――日本円で20万円だ。


 1人5万円。


 日給だと考えたら、ずいぶんと高額だ。


 姉さんは、


「その分、命の危険があるんだよ?」


 と苦笑した。


 ……うん。


 でも、今の僕とミカヅキなら大丈夫じゃないかな、と思うんだ。




 目的地に着いた。


 どうやら街道に近い森みたいだ。


 レイさんを先頭に、アリアさん、ミカヅキ、その背中に僕、最後に姉さんといった順番で森に入っていく。


(へぇ……)


 こっちの森は、背の高い木々が多いみたいだ。


 植生が違うのかな?


 ハイト村の森では珍しい薬草も、チラホラと見かけることができた。


 …………。


 時間があったら、あとで集めようかな?


 そんなことを考えながら、姉さんたちと森の中を進んでいく。


 …………。


 …………。


 …………。


 2時間ぐらいしたけど、目的の『氷結の鹿』は見つからなかった。


 う~ん?


 他の魔物や動物は見かけるんだけどな。


 3人は地図を見ながら、別の方向に行くか、このまま進むか話をしていた。


「…………」


 僕は、水筒の水をミカヅキに飲ませる。


 モフモフ


 その黒い毛を撫でていると、3人の話が終わったようだ。


 姉さんが近づいてきて、


「あのね、アナリス? 少しここで待っていてくれる?」


 と言った。


 え?


「私とレイで、先の様子を少し確認してくるの。アリアは残ってくれるから……いいかな?」


 アリアさんと居残り?


 僕は、青い髪のハーフエルフさんを見る。


 彼女は、小さく肩を竦めた。


 僕は「うん、わかった」と頷いた。


 姉さんは、


「ありがとう。すぐ戻ってくるからね」


 と微笑んだ。


 それからレイさんと一緒に、森の茂みをかき分けて、木々の向こうに行ってしまった。


 …………。


 残されたのは、僕とアリアさんとミカヅキ。


「んしょ」


 アリアさんは、近くの倒木に座った。


 こっちを見て、


「アンタも座ったら?」


 と声をかけられた。


 僕は「うん」と頷いた。


 彼女の隣に、ゆっくりと腰を下ろした。


 ミカヅキは、そんな僕らの前で丸くなって、そのまま目を伏せてしまった。


 アリアさんは、


「のんきな奴ね……」


 と呆れていた。


 でも、ミカヅキの耳は立ったままなので、本当に眠っている訳ではないようだ。


 …………。


 図らずも、アリアさんと2人きり。


 嫌われてる訳ではないけれど、仲良しというほどでもない微妙な距離だ。


「…………」


 何を話したらいいんだろう……?


 ちょっと困ってしまった。


 すると、


「あのさ、アナリス。アンタに、ちょっと聞きたいことがあるの」


 と声をかけられた。


 え?


 彼女から話しかけられるとは、予想外だった。


 アリアさんは僕を見つめる。


(?)


 少し迷ったような表情だ。


 でも、意を決したように、


「アンタ、クレイマンって名前のエルフ、知らない?」


 と聞かれた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 クレイマン?


 僕は、キョトンと彼女を見つめ返した。


 アリアさんの瞳は真剣だ。


 僕は首を振る。


「ううん、知らない。そもそも、僕が初めてあったエルフは、アリアさんだし」


 そう答えた。


 アリアさんは「そう」と頷いた。


 落胆したような、安心したような不思議な感じ。


 僕は首をかしげ、


「その人、誰?」


 と聞いた。


 アリアさんは正面を見つめて、


「狂人よ」


 と言った。


 ……狂人?


「転生の秘術とやらを追い求めて、狂ってしまったエルフよ。ううん、もはや外道に落ちた殺人鬼だわ」


 そう語る声には、強い憎しみがあった。


 …………。


 そのクレイマンというエルフとアリアさんには、何か因縁があるみたいだ。


 でも、聞ける雰囲気じゃない。


 それに、


(……転生の秘術?)


 実際に日本人から転生した身としては、ドキッとする話だ。


 関わらない方がいい、と思った。


 下手をしたら、今の平穏な生活が終わってしまう気がする。


「…………」


 黙り込んだ僕に、アリアさんが気づく。


 少し気まずそうだ。


 長く伸びた青い髪を指でかいて、息を吐く。


 そして、


「そういや、アンタ、ユフィとは本当の姉弟じゃないんだって?」


 と、話題を変えた。


 僕は頷いた。


「うん、従姉妹」


 と答え、


「でも、僕は、姉さんのことを本当の姉さんだと思ってるよ」


 と笑った。


 アリアさんも「そう」と微笑んだ。


 それから、


「でも、ユフィの方はどうなのかしらね?」


 と呟いた。


 え?


「あの子の話を聞いてると、弟ってよりも、恋人を自慢してるような、のろけてるような感じなのよね。……これがブラコンって奴なのかしら?」


 そう少し考え込んだ顔で言う。


 ブラコン……か。


 確かに、姉さんには、そんな一面もありそう。


 でも、嫌じゃないんだよね。


 僕自身、シスコン気味なのは自覚してるしさ。


 う~ん。


 ひょっとしたら、僕らは、似た者姉弟なのかもしれないね?


 アリアさんは、


「ま、仲が良いのはいいことね」


 と笑った。


 僕も「うん」と笑った。


 彼女の笑顔に、この青髪のハーフエルフさんとも少しだけ仲良くなれたかな、と思った。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 10分ぐらいして、姉さんたちが戻ってきた。


「足跡、見つけたわ」


 とのこと。


 僕らは再び4人と1匹になって、追跡を開始する。


 30分ほどで、


「――いた」


 目標の『氷結の鹿』を見つけた。


 ……綺麗な魔物だな。


 そう思った。


 青と白の美しい毛並みに、水晶みたいな透明な角が長く生えている。


 体長は3メードぐらい。


 森を流れる小川の岸辺で、水を飲んでいた。


 3人が僕を見る。


 初手は、僕に任せてくれるみたいだ。


 僕は頷いて、気配を殺しながら、狩猟弓に金属矢をつがえて構えた。


 ヒュボッ


 矢を放つ。 


『!』


 瞬間、魔物の鹿がこちらを見た。


 角が光り、突然、氷雪交じりの強風が吹く。


(あ)


 ズパァン


 矢は、魔物の後ろ足に突き刺さった。 


 本来は、頭部を狙っていたのに、氷雪の風で逸らされてしまったんだ。


「ミカヅキ!」


 僕は叫ぶ。


 それに応えて、ミカヅキは『ウォン!』と吠えると飛び出した。




 ミカヅキと巨大鹿の戦いだ。


 でも、体格ではミカヅキが大きく、『氷結の鹿』は後ろ足も負傷して機動力をなくしていた。


 魔物は防戦一方だ。


 僕も矢を放ち、何本も突き刺さる。


 その動きはますます鈍くなった。


 それでも、氷結の鹿は、


 キィン


 時々、角を光らせ、氷の矢を放ってくる。


 けれど、それもミカヅキの雷角から放たれる雷撃で、全て打ち砕かれてしまった。


 そしてついに、


 ガブリ


 ミカヅキが、その首に噛みつく。


 メキメキ ボキン


 首の骨の折れる音が、森に響いた。


 倒れる鹿の巨体。


 ズパァン


 とどめとして、僕は、その心臓にも矢を撃ち込んでおいた。


 鹿は、完全に動きを止めた。


 それを見下ろすミカヅキ。


 そして、顔をあげ、


『ウォオオオン!』


 勝者のダークウルフは、森中へと高らかに咆哮を響かせたのだ。




「よしよし」


 僕は、ミカヅキを撫でる。


 ミカヅキは嬉しそうに、僕に鼻先を擦りつけてきた。


 あは、くすぐったい。


 その一方で、レイさん、アリアさんは茫然としていた。


「……凄いな」

「何よ、一方的じゃないの……」


 そう呟く。


 姉さんは得意げだ。


「言ったでしょ? アナリスとミカヅキは強いんだって。これぐらい、当然だよ」


 そう言って、鼻を高くしている。


 レイさんは苦笑した。


 アリアさんは、


「なんか、アタシら、いらなかったわね?」


 と肩を竦めた。


 それに2人は、また苦笑を浮かべた。


 そのあとは毛皮や角、魔石などの素材を回収し、肉も売れるということでほとんどが切り取られた。


 残された部位をミカヅキが食べる。


『…………』


 でも、量が少なくて、少し寂しそうだ。


 モフモフ


 その首を撫でながら、


「帰ったら、お肉、買ってあげるからね」


『ワフッ』


 僕の言葉に、ミカヅキは嬉しそうに尻尾を振った。


 そのあと、荷物はミカヅキに背負ってもらって、僕らは森をあとにした。


 これで、討伐クエスト完了だ。


 姉さんは、


「お疲れ様、アナリス」


 と頭を撫でてくれる。


 僕は「うん」と笑った。


 そうして帰りの馬車に乗って、僕らは領都へと帰っていったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新作が書かれていることに数日前に気づき、少しずつ読んでようやく追いつきました! こちらの方も応援しています
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 能力が高くガタイも大きいミカヅキが正面を受け持って、援護が出来るアナリスやユーフィリアが居ればソコソコの相手なら余力を持って対処出来る気がする。 ミカヅキっ…
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