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026・火を噴く赤いトカゲ

第26話になります。

よろしくお願いします。

(――あれかな?)


 しばらく走ると、街道で横転している馬車を見つけた。


 周囲には、騎士らしい人が5人ほど。


 そして、その正面には、体長5メードもある首の長い赤いトカゲがいた。


 ……あ。


 あれ、火を噴くトカゲだ。


 前に父さんと森の奥に行った時、唯一、倒せなかった魔物だった。


 しかも、あの時より大きいサイズ。


「はっ!」


 騎士たちが剣で斬りかかる。


 ガッ ギィン


 火花と共に弾かれた。


 うん、鱗が物凄く硬いんだよね?


 逆に、大きな爪で殴られて、騎士の1人が吹っ飛んだ。


 鎧が大きく裂けている。


(ん?)


 よく見たら、馬車のそばに女の子がいた。


 まだ幼い。


 僕と同じぐらいの年齢じゃないかな?


 騎士たちは、その子を必死に守ろうとしているみたいだった。


 …………。


 うん。


 僕は、姉さんに顔向けできない自分にはなりたくない。


 カチャッ


 矢筒から1本の矢を取り出す。


 狩猟弓につがえて、赤いトカゲへと狙いを定め、


「やっ」


 ヒュボッ


 金属の矢を鋭く放った。 




 ズパァン


 僕の放った矢は、見事、トカゲの眼球に突き刺さった。


『ギュアッ!?』


 トカゲは悲鳴をあげる。


 騎士たちに意識が向いて、こちらに気づいていなかったのがよかった。


 仰け反る巨大トカゲに、


 ドゴォッ


 ダークウルフの黒い巨体が真横から体当たりをかまして、吹き飛ばした。


『ガルルルッ!』


 牙を剥き出し、ミカヅキが吠えた。


 僕は、その背から飛び降りる。


 主戦力は、ミカヅキだ。


 か弱い僕は、サポート役に回らなければならない。


 突然の乱入に、騎士たちは驚いていた。


 ガシャッ


 すぐに剣を向けられる。


「何者だ!」


 そう怒鳴られた。


 彼らの後ろには、守らなければいけない少女がいた。


 この対応も理解できる。


 カチャッ


 僕は、次の矢を狩猟弓につがえて、赤いトカゲへと構えた。


「味方です」


 振り返らず、そう答えた。


「あのダークウルフは、僕の従魔。皆さんが危険な状況だと思ったので、加勢しました」

「…………」

「…………」


 彼らは、顔を見合わせる。


 後ろの少女も目を丸くして、僕を見ていた。


 そして、


「すまない。助勢、感謝する」


 リーダーらしい騎士の人がそう言った。

 

 僕は頷く。


「ミカヅキが……あのダークウルフが魔物の相手をします。皆さんは、サポートに回ってください」

「わかった」


 4人の騎士は頷いた。


 2人が女の子のそばに残り、もう2人は僕の左右に並んだ。


 そして、視線の先で、


『ゴガァア!』


 怒りの咆哮をあげて、赤いトカゲが起きあがった。


 口元から、チロチロと炎が漏れている。


『グルルッ!』


 その正面で、ミカヅキは、いつでも飛びかかれる低い姿勢になった。


 パチッ パチッ


 額の青い雷角に、小さく放電が散っている。


 睨み合う2体の魔物。


 そして次の瞬間、両者は同時にお互いへと襲いかかった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 怪獣大決戦。


 体長4メードと5メードの魔物の戦いは、まさにそんな感じだった。


 ズガン ドゴォン


 両者の牙が、爪が振るわれるたび、周囲の地面や木々が吹き飛んだ。


 力は、赤いトカゲ。


 速さは、ミカヅキ。


 どちらも優勢な能力を使って、相手を殺そうとする。


 でも、状況は互角だった。


 赤いトカゲが大きく喉を膨らませ、口から炎を噴けば、ミカヅキも青い雷角を光らせ、放った電撃でそれを相殺する。


 ドパパァアン


(わあっ!?)


 凄まじい爆発が起きて、僕は吹き飛ばされそうになった。


 騎士たちも、必死に女の子をかばっている。


 もちろん、僕もただ見てるだけじゃない。


 ヒュボッ


 何度も赤いトカゲを狙って、矢を放った。


 狙いは、もう1つの眼球。


 でも、動きが激しくて外れてしまう。


 ガチッ ガチィン


 目の周囲の鱗で、火花と共に弾かれてしまうんだ。


 くそぅ……。


 残る矢は、あと1本。


 騎士たちもミカヅキに加勢したそうだ。


 でも、あまりに激しい戦闘で、近づくこともできない様子だった。


 時間だけが過ぎていく。


 疲れてきたのか、ミカヅキの動きが落ちてきた。


 赤いトカゲも、ミカヅキの牙や爪で、全身に細かい傷があった。


 けど、大きなダメージにはなっていない。


 …………。


 このままじゃ、まずい。


 焦りと緊張が、心を染めていく。


 その時、


 ズルッ


 赤いトカゲの噛みつきを避けたミカヅキが、着地と同時に足を滑らせた。


(あ……)


 一瞬、動きが止まった。


 その正面で、赤いトカゲの喉がカエルみたいに膨らんでいた。


 まずい。


 まずい、まずい。


 あのままじゃ、ミカヅキが炎に焼かれて死んでしまう!


 そう思った瞬間、


「――――」


 僕の中で何かが弾けた。


 世界が妙に遅く見える。


 その中で、トカゲの膨らんだ喉がはっきりと見えた。


 皮膚が伸びたことで、鱗と鱗の間に、小さな隙間ができている――そう気づいた瞬間、僕はそこに矢を放っていた。


 ヒュボッ


 空気を裂き、金属の矢が飛んだ。


 それは狙い違わず、鱗の隙間に突き刺さる。


 その瞬間、


 ドパァアアン


 膨らんだ喉は、風船が破裂したみたいに爆発した。


 喉の中で、炎が爆ぜたのだ。


『ゴバ……ッ!?』


 首に大きな穴を開けたトカゲは、何が起きたのかわからないという顔をしていた。


 口から、喉から、大量の血がこぼれている。


 そんな瀕死の獲物を、賢いダークウルフのミカヅキが見逃すはずはなかった。


 ガブッ


 漆黒の風となって、その喉に食らいつく。


 鱗のない無防備な内側を晒した首は、


 ブチィン


 簡単に引き千切られた。 


 長い首のついた頭部が、地面に落ちる。


 残された首無しの胴体も、ゆっくりと横に倒れた。


 ドドォン


 土煙が舞い上がる。


 赤いトカゲは、2度と動かなかった。


 僕は、小さく拳を握る。


 4人の騎士たちは歓声をあげ、女の子は両手を口元に当てながら驚いていた。


 赤いトカゲの頭部を、黒い前足が踏みつける。


 そして、ミカヅキは、


『ウォオオオン!』


 勝利の雄叫びを、空へと高らかに響かせたのだった。

ご覧いただき、ありがとうございました。


もし少しでも『面白かった』『続き気になるかも……』なんて思って貰えたなら、ブクマや★★★★★評価などしてやって下さいね。作者の心が助かります♪

どうぞ、よろしくお願いします♪

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ ミカヅキの危機にアナリスが覚醒モードへと突入して見事な援護。 最初の魔爪の白熊との戦い時もそうですが戦闘力がヤバすぎ。 タイトルのチートなしは流石に偽り有り…
[気になる点] サラマンダーかな? 途中の覚醒っぽい状態も気になります!
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