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024・もうすぐ2年

第24話になります。

よろしくお願いします。

 2ヶ月後、姉さんから手紙が届いた。



 ―――――――



 おめでとう、アナリス!


 8歳で1人前の狩人として認められるなんて、凄いね。


 私、びっくりしちゃった。


 アナリスの成長が嬉しいです。


 アナリスに置いていかれないように、私もがんばらなきゃ。


 いつも勇気をくれて、ありがとう。


 アナリスは、本当に、本当に私の大好きな自慢の弟です。



 ―――――――



 なんて文章も書いてあった。


(…………)


 なんか、照れくさい。


 でも、置いていかれないように……って変だよね?


 だって、僕の方が、どんどんと先に行ってしまう姉さんを、必死で追いかけてるんだから。


 …………。


 手紙を眺めていたら、


『ウォン』


 外から、ミカヅキの僕を呼ぶ声がした。


 おっと……もう時間か。


 僕は手紙を、机に大切にしまう。


 それから、狩人の証となる小型の『狩猟弓』を手にして、玄関に向かった。


 さあ、今日も狩りをがんばるぞ!



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ミカヅキの背中に乗って、森の中を駆ける。


 ドドドッ


 そんな僕らの後ろを『岩皮の猪(ロック・ボア)』という魔物が追いかけていた。


 ズガン ドゴォン


 進路上の木々をなぎ倒し、迫ってくる。


 僕はミカヅキの背で狩猟弓を構え、


「やっ!」


 ヒュオッ ズパァン


 放った金属の矢は、狙い通り、岩皮の猪の眼球を貫いた。


『プギッ!?』


 岩皮の猪は、転倒する。


 矢じりは、眼球の奥の脳髄にまで達していた。


 土煙が舞う中、


「やっ、はっ!」


 ズパン ズパン


 残り2本の矢も、残った眼球に突き刺さった。


 体長4メードもある魔物は、大きく痙攣して、やがて絶命した。 


(よし)


 僕は、小さく拳を握る。


 岩皮の猪は、岩みたいな外皮をした頑強な魔物だった。


 目以外に矢は通らない。


 けど、無事に倒せた。


 ミカヅキのおかげだね?


 走り続けるその背中にいるおかげで、僕は安全圏から余裕を持って攻撃できるのだ。


「よしよし」


 ポンポン


 その首を叩く。


 ミカヅキは、大きな尻尾を左右に揺らす。


 それから、硬い外皮を物ともせず、岩皮の猪の死体をガツガツと食べ始めた。


 ベキッ ガキッ ボキン


 森の中に、凄い音が響く。


 …………。


 ミカヅキの体長は、3・8メードほどになった。


 大きくなったよね。


 そして、この子は強くもなった。


 実は先日、森の深部であの『魔爪の白熊』と遭遇したんだ。


 2年前に現れたのと同じ魔物だ。


 そしてミカヅキは、その魔物を自分1匹だけで噛み殺してしまった。


 その光景にびっくりしたよ。


 2年前は、みんなで協力してようやく倒せた魔物だったから。 


(…………)


 ミカヅキは、ダークウルフという魔物だ。


 でも、僕らと暮らしているせいか、知恵がついた。


 そのせいで、普通のダークウルフより強くなったのかもしれない。


 ハグッ ムチャッ


 魔物の肉を美味しそうに食らう、巨大な黒い狼。


(……うん)


 本当に頼もしい相棒に育ったよ。


 僕の視線の先で、魔物を食べ終えたミカヅキは、長い舌でペロッと口元を舐めていた。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 あれから、半年が経った。


 ミカヅキと共に、僕は『森の狩人』として日々を過ごしていた。


 そんなある日、


「お?」


 姉さんからの手紙の一文に、僕は目を丸くした。




『――この間、冒険者パーティーに入りました』




 あの姉さんが……!?


 人見知りで、家族以外と話せなかった姉さんが……ついに仲間を……?


 慌てて、手紙を読み進める。


 …………。


 それによれば、冒険者ギルドからの勧めがしつこくて、ついに姉さんが折れたみたいなんだ。


 組んだ相手は、女の子2人。


 2人組で活動していたパーティーに、姉さんが加わった感じだね。


 年齢も近いみたい。


 知人の受付嬢さんの人選だから、人柄も問題なさそうだって。


 そして、


『1人は、エルフの女の子だったの』


 だって。


 エ、エルフ!


 異世界の象徴ともいうべき種族だ。


 僕はまだ見たことがないけれど、そのエルフさんが姉さんの仲間になったらしい。


 …………。


 ……いいなぁ。


 今はまだ組んだばかりで、お互いぎこちない関係だそうだ。


『私、大丈夫かな……?』


 姉さんも不安そうだった。


 でも、姉さんは優しくて、心の強い人だ。


 それが伝われば、きっとその2人とも仲良くなれると思う。


 なので、


(姉さんなら大丈夫だよ……っと)


 そう返事を書いた。


 …………。


 これが、姉さんにとっていい出会いになるといいなぁ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌々月、姉さんからまた手紙が届いた。



 ―――――――



 アナリスへ




 アナリス、お元気ですか?


 私は毎日忙しいけど、何とか元気にやっています。


 おじさん、おばさん、ミカヅキも変わりない?


 もうすぐ冬がやって来るから、みんな、体調には気をつけてね。 



 ~中略~



 アナリスの言った通り、2人と仲良くなれました。


 最初は不安だったけど、今はだいぶ打ち解けて、言いたいことが言えるようになったの。


 2人とも、本当にいい人です。


 レイは、真面目なの。


 責任感も強くて、リーダーとして、私たち2人をいつも引っ張ってくれる。


 とっても頼もしいのよ?


 アリアは、ちょっと偉そうな子。


 エルフであることに、凄く誇りを持ってるみたい。


 最初は私、怖かった……。


 だけど、一緒にいるうちに、本当は優しい子だってわかったの。


 今は、安心しているわ。


 私は口下手だけど……でも、2人はそんな私を受け入れてくれた。


 だから、私もがんばる。


 がんばって、2人の役に立つようになるわ。


 ……アナリスも応援してくれたら嬉しいな。


 あ、そうそう。


 2人に自慢の弟だってアナリスのことを話したら、2人もアナリスに会いたいって言ってたよ?


 私も会わせてあげたい。 


 いつか、そんな機会を作ろうね?


 これからも、レイとアリアと一緒にがんばっていきます。


 またお手紙、書くね。


 それじゃあ。



 アナリスの姉 ユーフィリアより



 ―――――――



「…………」


 僕は、手紙を折り畳んだ。


 心配していた姉さんと2人の仲間の関係は、良好みたいだ。


(よかった、よかった)


 僕は、ホッとしてしまう。


 ……それにしても、レイさんとアリアさん、か。


 姉さんがこれだけ褒める2人がどんな人なのか、僕も興味が湧いた。


(…………)


 姉さんと別れて、もうすぐ2年。


 1度、会いに行ってもおかしくないよね?


「――うん」


 僕は頷いた。


 来年の春になったら、僕も領都まで行ってみよう――そう思ったんだ。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ ミカヅキが可愛い過ぎて何かもうミカヅキ成長記みたいな作品でもいい気がしてきた(*´ω`*) しかしアナリスは主人公とはいえ、一応は十歳にも満たない子どもなの…
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