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転生した弓使い少年の村人冒険ライフ! ~従姉妹の金髪お姉さんとモフモフ狼もいる楽しい日々です♪~  作者: 月ノ宮マクラ


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010・命名ミカヅキ

第10話になります。

よろしくお願いします。

 魔物――それは前世の世界にはない『魔素』という大気成分の影響で、特殊な性質となった生き物の総称だ。


 この異世界では、人々の最も身近な脅威でもあった。


 だからこそ、


(この子も……そうなの?)


 僕は、腕の中の灰色の小さな生き物を呆然と見つめてしまった。




「それの額を触ってみろ」


 そんな僕に、父さんがそう促した。


 僕は戸惑いながら、抱いている狼の子供みたいな毛玉のおでこを触る。


 コリッ


(ん……?)


 灰色の毛の中に、小さな堅い感触があった。


「雷角だ」


 父さんは言った。


「成長と共に伸び、そこから雷の魔法を放つようになる。灰色の毛も、成体となるにつれ黒くなるぞ」

「…………」

「それは『ダークウルフ』という魔物だ」


 僕と姉さんは、言葉もない。


 その視線の先で、


『?』


 そのダークウルフの子供は、キョトンとしていた。


 母さんが不安そうに聞く。


「飼って、大丈夫なの?」

「あぁ」


 父さんは頷いた。


「群れを作る魔物は、大抵、家族と認めた存在を裏切らない。幼少期から育て、人が使役するダークウルフもいる。まぁ、大丈夫だろう」


 家族……。


 お前は、僕を家族と思ってくれてるの?


 丸っこい顔をジッと見つめる。


「…………」


『…………』


 金色の瞳が不思議そうにこちらを見つめ、


 ペロッ


 甘えるように僕の頬を舐めた。


 わっ?


 パタパタ


 驚く僕に、なぜか嬉しそうに尻尾を振っている。


 隣の姉さんもびっくりした顔だ。


 そんな僕らに、


「大丈夫そうね」


 母さんは笑っていた。


 父さんも頷いて、


「もしもの時は、俺が殺そう。だから問題はない」


 …………。


 物騒なことを淡々と言うの……やめてよ、父さん……。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 その日から、新しい家族が増えた。


 魔物ということで驚いたけど、実際には、犬とそんなに変わらない感じがする。


 モフモフ


 身体を撫でると、嬉しそうな顔だ。


 姉さんも一緒になって撫でながら、


「な、名前、どうするの?」


 と聞かれた。


(う~ん)


 しばらく考えて、


「ミカヅキなんて、どう?」


 と言った。


 由来は、おでこに残ってしまった傷跡が三日月みたいだったからだ。


 姉さんは微笑んだ。


「ん、いいと思う」


 よかった。


 僕は、モフモフな顔を両手で挟んで、その丸っこい顔を見つめた。


 笑って、


「よし、今日からお前はミカヅキだ!」


『ワフン!』


 まるで僕の言葉がわかったみたいに、ミカヅキは元気に吠えた。




 ミカヅキの首には、赤いスカーフが巻かれた。


 村の人に、野良犬とか、野良魔物だと間違われないように、姉さんがつけてくれたんだ。


「ありがと、姉さん」

「う、ううん」


 姉さんは、恥ずかしそうにはにかむ。


 ミカヅキも、その赤いスカーフがどこか誇らしそうだった。


 …………。


 ミカヅキは魔物だ。


 村で飼っていいのか、実は不安だった。


 でも、父さんは、ちゃんと村長さんに報告もして、飼育の許可ももらってきてくれていた。


 よく許可してもらえたよね……?


 と思ったら、母さん曰く、父さんはハイド村でも1番の狩人だから、色々と大目に見てもらえるのよ――とのことだった。


 ……うん。


 僕の中での父さんの株は大きく上がりました。




 ミカヅキは、ずっと僕と姉さんのそばにいた。


 僕らが家にいる間は同じ家にいて、僕らが森に『薬草摘み』に行く時には、一緒に森までついて来る。


 母さんは、


「2人のことを守っているつもりなのね」


 と言っていた。


 僕と姉さんは、つい顔を見合わせてしまったよ。


 …………。


 森に入ると、たまにミカヅキは、30分ぐらい姿を消すことがある。


 最初は焦った。


 でも、しばらくすれば、必ず帰ってくることがわかった。


 そしてその時には、いつもリスやウサギ、時には鹿みたいな大きな獲物をしとめて持ってくるんだ。


 自分の食事は、自分で用意している感じ。


 あるいは、僕ら家族のための食事も用意しているつもりなのかも……?


 おかげで、毛皮なども行商で売れた。


 母さんは、とても上機嫌だ。


 父さんも、ミカヅキの狩りの能力には感心してるみたいだった。


「ミカヅキ、凄いね」


 モフモフ


 僕は褒めながら、その灰色の柔らかな毛を撫でまくる。


 ミカヅキは気持ち良さそうに床に転がって、お腹を上にして『もっと撫でて!』とアピールしていた。


 うん、もちろん期待に応えてあげたよ。




 姉さんと裏庭で槍と山刀の素振りをしている時も、ミカヅキはそばにいた。


 近くに伏せて、ジッと僕らを眺めている。


 なんだか、見守っている感じ。


 …………。


 悪戯で、鞘に納めたままの山刀でミカヅキに襲い掛かってみた。


 ヒュパッ


 簡単にかわされて、ズボンの裾を引っ張られる。


 僕は簡単に地面に転がって、


「……へ?」


 気がついたら、青い空を見上げていた。


「だ、大丈夫、アナリス?」


 そこに、姉さんの美貌が飛び込んでくる。


 長い金髪が滝のように顔にこぼれてきて、そっちに、ちょっとびっくりしてしまった。


 ペロッ


 そんな僕の頬を、ミカヅキは舐めた。


『気は済んだ?』


 そんな顔だ。


 僕は苦笑して、「参りました」と言いながら、モフモフと首回りを撫でてやった。


 ミカヅキは、やっぱり気持ち良さそうだった。


 そのあと、好奇心がうずいた僕は、ユーフィリア姉さんとミカヅキにも戦ってもらえないか、お願いした。


「ア、アナリスが見たいなら……」


 と姉さん。


 ミカヅキも『やれやれ』って顔だったけど、引き受けてくれた。


 姉さんが、怪我をさせないよう石突を前側にして槍を構える。


 ミカヅキはそれを見つめて、姿勢を低くした。


「…………」


『…………』


 見つめ合う両者。


 そして、


 ヒュッ ヒュヒュン


 姉さんが連続で槍を突き出し、ミカヅキは素晴らしい速さでそれを回避していく。


 ミカヅキが噛みつこうとすると、


 ヒュパン


 姉さんは槍を回転させて牽制し、接近を許さない。


 一進一退の攻防。


 10分ぐらいそれが続いて、やがて、どちらも戦いの構えを解いた。


 結果は、引き分け。


 姉さんは、


「……た、多分、これ以上やったら、お互いに本気になり過ぎて、どちらかが怪我しちゃうと思うの」


 だって。


(2人とも強いんだなぁ)


 僕も負けていられない。


 刺激を受けた僕は、その日から、裏庭での練習をよりがんばることにした。




 そんな風に、僕と姉さんとミカヅキは、ずっと一緒にいた。


 お昼寝する時も、ミカヅキを2人で抱き枕にして、寄り添って眠ったりしていた。


 まるで3人姉弟。


 僕には、姉だけでなく、弟までできたみたいだった。


 そんな話を姉さんにしたら、


「あ……えっと……その、ね、アナリス。……ミカヅキって、女の子だよ?」


 と困ったように言われてしまった。


 …………。


 僕は、灰色の毛玉を見る。


 ミカヅキは大きな欠伸を1つ、しているところだった。


 ……あ~、うん。


 ちょっと訂正。


 どうやら僕には、可愛い妹分ができたみたいです。

ご覧いただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様ですヽ(´▽`)/ 村に対してキチンと説明した上でミカヅキ飼う手続きをした父ちゃんに抜かり無し。 狩人としての実力も確かですが、村からの信頼もあるのでしょうね。 息子からの尊敬…
[良い点] ミカヅキ、かわいいですね! ウチの猫も女の子。 そして赤いスカーフ型の首輪をしているので、思わずほっこりしてしまいました。
2023/03/04 19:41 退会済み
管理
[気になる点] 雷角に女の子等々。 気になるキーワードが色々と・・・。 この先の展開に規定しています!
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