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DAY 20-2

 少し経って、同じ鎧を着た人達がベレスのいる牢屋の前へ集まると、あの女騎士が代表してベレスを牢屋の外へ出してくれました。


 ベレスは警戒こそしていたもののその人らを襲う事はせず、騎士たちに囲まれながらも声を上げず、ただ女騎士の後ろをピッタリと付いていました。


「こいつ、魔族の割に大人し過ぎねえ? つーか名前は?」

「名前というか、まだ何一つ聞けてないや。だからまず私たちの信用を得ることから始めないとね」

「物凄くムッキムキの巨体なのかと思ってたけど、めっちゃ可愛いじゃんね、この子」

「背中の痛々しい傷は鞭のような物で何度も叩かれた物の様だな。ふむ⋯⋯傷薬と、着る物も見繕わねば」


 四人の騎士はベレスを囲いながら話を交わしながら、さきほどの牢屋と同じくらいの大きさの部屋にベレスを案内すると、各々はそれぞれの位置に移動し、腰を掛けました。


 なんとなく賑やかな場所、女騎士に引っ付いたままベレスはそんな事を考えながら部屋を眺めていると、調子の良さそうな男の騎士がベレスに近寄り、いきなり頭を撫でてきてこう言ってきました。


「しかしここまで大人しいと、そこら辺の子供と変わんねえもんだな〜」

 手を差し出された時に身体が跳ねるほど驚くベレスですが逃げる間も無く、そのまま訳も分からず撫でられます。


 男の騎士に呼応するように調子の良さそうな女の騎士もベレスに近寄ってきて「ホント、書物で見たのと全く違うよね〜」と手でベレスの顔をクイっと持ち上げてきました。

 この騎士たちにはベレスへの警戒心はほとんどありませんでした。

 そして二人を静止するように女騎士がやっと割って入ります。


「その辺にしといてよ。多分、ずっと賊達に良いように使われて来たんだ。ちょっとした仕草でも、まだこの子にとって不快な事なのかもしれないから」

 女騎士の言葉を聞いて、顔を見上げようとするベレス。しかしその視界の隅で大きな男の騎士がいる事に気付くとベレスは驚いて女騎士の背後に隠れてしまいました。


「おーおー、ガンドゥはやっぱ怖えか?」

「ギガント族は皆大っきくて強面だからね〜。この前だって、街を歩いてただけなのにマキア族の子供を泣かせちゃったもんね〜」

「う、ううむ⋯⋯すまない。これでも努力はしているつもりだ」

「あはは⋯⋯ごめんね。ガンドゥは確かに大柄だけど、寡黙で思いやりのある奴だからさ」

「うぅ⋯⋯」

 ガンドゥという名前の巨体の騎士は少し俯いて、反省するようにベレスから目を逸らしました。

 そしてその場の空気を変えるように女騎士は手を軽く叩き、提案を口にしました。

「そうだ、皆から自己紹介をしておこうよ。この子の名前を聞くよりもまずは、この子に私達を慣れさせないと、ね?」

「うぅ⋯⋯?」

 まだよく分からないベレスに四人は前を向き、それぞれ名乗りを上げました。


「因みに私は、メアト。メアトって呼んでね」

「オレはエミルっていうんだ。これからよろしくな〜」

「アタシはアミーよ。魔族だろうと女の子同士。困った事があったらいつでも頼ってね」

「⋯⋯ガンドゥだ。よろしく頼む」


 メアト、エミル、アミー、ガンドゥ、四人はその後もベレスに優しく接していました。

 目覚めてから初めて受ける優しさに、ベレスはほんの少し、心がほぐれるような感覚を覚えました。

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