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DAY 98

 勇者の国は、日を増すごとに騒がしくなっていきました。


 城下町ではお祭り騒ぎでずっと賑わっていて、城の中でもベレスに対する優遇が留まる事を知らない。

 それほど信仰の対象が実在している事は、国のみならず世界にとって重要とされており、今日もまたベレスは城の人間との手厚い交流を避けながら、一人部屋に籠る毎日。

 ですが今日は少し違って、事前に呼び出していた少女が先に部屋へ入っていました。

 少しした後、ベレスは少女のフードの奥の暗闇を見つめながら言いました。

「二つ聞きたいことが⋯⋯ああ、いや⋯⋯」

 言いたげな表情と共に、喉元まで出たその言葉を掻き消すようにベレスは視線を大きく落とします。

 そんな悲しい目で下を向くベレスを見て、少女は軽く頭を傾げながら疑問に思うのでした。

「どうされました?」

「⋯⋯うん。お前の事を聞こうと思ったけど⋯⋯違うよな。本当に知りたいのは⋯⋯本当に知りたい事は、私がこの先どうなるのかって事。その一つだけ知れたら、もう他の事は良いんだ」

 自分から見えた世界から一歩距離を置くような、そんな切ない表情で、ベレスは話しました。

「⋯⋯元々貴方は、データと呼称される別世界の存在が魔王の娘として受肉したばかりにとっ散らかってしまった、余りにもイレギュラーな者。知る権利くらいありますよ⋯⋯そして、それを伝えるのも、この世界での私の本来の役目の一つですので」

「別の世界⋯⋯最近、知らない女の子の夢を見るんだ。透明な壁に閉じ込められた女の子の夢を」

「⋯⋯それは、貴方の存在が薄らいできている証拠。頭の痛みからきっかけに存在が一時的に二分されてしまったのも、転生前の、データの女の子の影響による物でしょう」

「このまま普通に生きても、勇者として生きる道を選んでも、私は徐々に自分の存在を保てなくなってこの世界から消える。一日を重ねる毎に、何故だか分かってきちゃうんだよな⋯⋯」

「ええ。そして、貴方は魂だけの存在となり、それを私が見送るというのが、この世界での終わりの景色なのです」


「なら、少し頼みたい事があるんだけど⋯⋯」

 いずれ消えゆく自分を噛みしめながら、ベレスは少女に向けて、あるお願いを託すのでした。


「──それが答えですか」


 ベレスは決意に満ちた表情で口にします。


「ああ。それで良い」


 そんな決意に満ちたベレスの答えに、珍しく少女は言葉に詰まり、頭を抱えてしまいます。


「この結末は、私の決めた最後の決断だ」

 ベレスが話した事は、全て事実。少女の予想していなかった答えを出し、非常に驚かれていました。

「まさかこんな結末を望むなんて⋯⋯予め予知しておけば良かったです」

「⋯⋯じゃあ、約束通りお願いするね」

 少女はため息を吐くと、仕方なしとベレスに同意するのでした。



     ✳︎


 暗闇に包まれながら少女が一人、完全に眠りについた勇者の国を見据えながら、ポツリと口を開き言葉を漏らします。


「あと二日⋯⋯ですよ、ベレスさん。最後まで、悔いのない終わりを⋯⋯」


「⋯⋯。これが終われば、私もようやく帰れますね」


「──九生絶花、もうすぐです」

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