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DAY 15

 ベレスは背中を鞭で叩かれ続け、抉れるような痛みに耐えながら反転した景色を眺めるだけの時間を過ごしていました。

 しかしそんな日々を過ごす中で、今日は少し変化がありました。


 あの貴族の男の息子が興味本位で地下に入り、同じようにベレスに悪戯するようになったのです。

 そしてその翌日、珍しい玩具で遊ぶようにベレスを痛ぶっていた生意気な息子を、ベレスはゴミを見る目で睨みつけてみました。

 それに気付いた貴族の息子は「玩具の癖に生意気だな!」と、置いてあった鞭でベレスの顔を怒りに任せて叩きつけます。

 けれどもベレスはまだ少し反抗してみたくなって、貴族の息子に向けて血を含んだ唾を吐き捨てるとその一瞬で立場は一転し、「うわぁぁぁああ!!!!血がッ!! 血がァァッ!!」と情けない悲鳴と共に一目散に去っていきました。

 その惨めさに大きくため息をつき、力を抜いて床を見つめ直していると、一つの違和感を感じ取りました。

 宙吊りのベレスの真下に、あの息子が抱えていた本が一冊、開かれて置いてあったのです。

 手を伸ばそうとしますが、宙吊りのままでは当然、触れることも出来ません。ベレスは目を逸らし、地面に置かれた本に描かれた絵を見ていました。


 ページに描かれていたのは、この世界の大陸を表した絵でした。ベレスに文字を読む事は出来ませんでしたが、暫くそのページをボーッと眺めて時間を過ごしていました。

 そして、それを見るうち、ベレスはある事に気付きます。


 これ、なんだろう──


 地図に赤い丸で囲われた場所。ベレスはそれが気になって仕方ないようで、しかしそれが何を意味するかも分からないまま、その一点を見つめていました。

 でも、何を意味するか分からなくても、ベレスにとって、それは微かな望みでした。こんな所から早く出て、その場所へ行ってみたい、いつしかそう思うようになったのです。


 そんな純粋無垢な心だけは、どんなに醜い仕打ちを受けても、汚れる事は無かったのです。


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