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DAY 38-4

「良い感じ。そのまま力を緩めずに、手のひらだけ集中させて⋯⋯」

「⋯⋯っ」

「今! 一気に放つっ!」

「はっ!」


 手のひらから糸を束ねた様に収束された光の粒子の球体は、ベレスの力の解放に反応し拡散すると、強い衝撃波を起こして周囲の風を強く乱れさせたのでした。

 風を乱れさせ、ベレスのフードが脱げただけ。ですがそれだけで大収穫でした。

 光魔法が放てると、二人は種族の壁など忘れ、手を取り合って喜びを分かち合いました。


 すっかり日も暮れて、一頻りはしゃいだ二人は洞窟の中で休息をとっていました。

 

「なあなあ、聞かせてくれよ。どんな感じなんだよ? ぶっ放してみた感想はさ?」

 ベレスよりもウキウキになって、アンジェが語りかけます。今まで出会ってきた誰よりも距離感の近いアンジェに、少したじろいでしまうベレスでありました。

「どうって。そ、そうだな⋯⋯き、気持ちがいい、と思う。私にも、そういう力があったんだなって⋯⋯強くなった気分だ」

「だろ〜! やっぱ魔法ってのは戦いで使っていくべきなんだ!」

「⋯⋯? アンジェは戦いたいのか?」

「うん、そんな感じ。昔の時代に⋯⋯憧れちゃうんだよ。魔族と戦い合う時代。自分の武器を持って、自分を守るんだ」

「自分を、守る⋯⋯」

「武器だけじゃなくて、鎧とかもそうだろ? 自分の命を守る為に身に付けて、鎧は初めて、鎧としての役目を果たすんだ」

「⋯⋯」

「だから私は、今の魔法の扱われ方が嫌なんだよ⋯⋯」

 アンジェ自身の想いを話してくれたのだから、私も何か応えたい。そう思ったベレスはベレスなりの想いを話してみました。

「だったら⋯⋯アンジェのしたい事が叶えられる形を、取れば良いんじゃないか?」

「それって⋯⋯?」

「戦う事が全てなら、それを実践してみれば良い。レグメンティア人にも悪い奴はいるだろ? 昨日のギガント族が取り締まっているからそれで済んでいるかも知れないが⋯⋯この先何かあった時、アンジェが魔法で人を守ってやれば良い」

「⋯⋯! 守る為に、戦う⋯⋯!」

「守る為に魔法を使うんだから、それも正しいやり方なのかなって⋯⋯ごめん。適当に思いついただけで、ちゃんとした答えには──」


「なってるなってる! なってるよベレス!」

 アンジェは全身で喜びを感じながら、ベレスと更に身体を寄せ合いました。

「そ、そうか、それなら良かった⋯⋯」

「そうじゃん⋯⋯! ギルドを作れば良いんだよ! 市場ギルドしか無い今、そういう、戦う事で人助けをする為のギルドを!」

「ギルド、か⋯⋯良いんじゃないか?」

「だったらこうしちゃいられないよな! わたし、学校を卒業したらすぐに旅に出て、エイジスに行って、ギルドを作りに行くんだ! そして戦っていく為に、魔法の練習、しなくちゃな!」

「うん⋯⋯アンジェならきっと出来るよ」


「任せろ! その時にはベレスも誘ってやるからな!」

「え? いや、私は⋯⋯魔族だから」

「そんなの関係ない! ベレスはベレス、だろ?」

「アンジェ⋯⋯」

 アンジェの真っ直ぐな視線に、ベレスら思わず息を呑み込みました。そして次に発された言葉は、ベレスの内にある鎖のような物を溶かすものでした。


「うーん⋯⋯じゃあそうだな、一つ約束しろよ、ベレス。いつかわたしと一緒に旅をしようぜ。世界中の誰もがベレスは良い奴だって、証明する為の旅を」

「え⋯⋯?」

「へ、へへ⋯⋯え、ベレス? もしかして、泣いてんのか?」

 それは、ベレスの身体の真ん中を射抜いて離さない、かけがえの無い光のような言葉。

 目覚めてから閉ざされて眠りについていた鍵穴を、そっと開放するような、そんな魔法のような言葉。

 それを聞いた瞬間、気付けば、ベレスの膝には幾つもの雫と、瞳から溢れ出して止まない沢山の涙で、ベレスの内に秘めているものが、溢れていました。

「いや⋯⋯違う⋯⋯ここが⋯⋯あったかくなっちゃっただけだ⋯⋯」

 今まで感じた事はあっても、その正体が分からないままだったものが──


 メアトたちと過ごした日々の中で育まれたものに、ベレス自身が鍵をしてしまったものが、今──


「⋯⋯それが、心って奴なんだぜ、ベレス」

 解き放たれて、ベレスの鼓動を、はやくさせました。

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