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侯爵令嬢の恋愛結婚  作者: こじまき
目指せ婚約
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お友達ができました

入れ替わるようにビオネッタ様がやってきて、私たちはまず睡蓮の池へ向かった。


ビオネッタ様の植物の知識は私など遠く及ばないくらいの相当なもので、私はクラスメイトにこんな人がいたのかと驚かされた。私は今まで植物と言えば花ばかり見ていたが、ビオネッタ様は花だけではなく木、草、ハーブなどの知識も豊富だ。


いつも何となく「きれいだな」と眺めて終わっていた植物園の散策も、優秀なガイド役がついてくれるとこんなに充実するのだと思い知らされた。


「植物園でこんなに楽しいと思ったのは初めてですわ。ビオネッタ様のおかげです」

「そういっていただけると、とても嬉しいですわ。私もイベリス様と一緒にまわるのがとても楽しいです。ぜひまたご一緒いたしましょう」


聞けば、ビオネッタ様は、夏休みにはサフィア伯爵領内にある山で高山植物の観察をする予定らしい。


「まあ、高山植物ですか。実際に山に咲いているところは見たことがございませんわ」

「とてもきれいですのよ。見られるところまで登るのは大変ですけれど」


それほどの時間と労力を植物に注ぎ込むとは、尊敬させられる。私には、それほど情熱を傾けられることがない。正直に気持ちを伝えると、ビオネッタ様は頬を赤く染めた。


「そんな風に言ってくださって嬉しいですわ。父も、兄も、女だてらに植物にのめり込んでどうするつもりかと言いますの。そんなことでは結婚できないって」

「そうでしたの。でも私には、それだけ情熱を注げるものをお持ちのビオネッタ様が眩しく見えますわ。まるで研究者ですわ」

「ええ、ええ、私は植物学者になりたいんです。新しい植物を発見したいのですわ」


私はまたまた驚いた。サルトス国王陛下の改革によって、今では女性でも大学に進み、学者や政府職員になることができる。しかし実際にその道に進む女性は少ない。いわば、まだまるで舗装されていない悪路なのだ。けれど…


「ビオネッタ様なら、きっとなれますわ」

「イベリス様、ありがとうございます。つい先日初めて話したばかりなのに、私、イベリス様のことを本当に大切なお友達だと思っています」


私は泣きそうになってしまう。こんな風に言ってくださるなんて。


「ビオネッタ様、私もビオネッタ様のこと、大切なお友達と思っています。我が国初の女性植物学者がお友達なんて、本当に素敵だわ」

「私、新しい植物を見つけることができたら、イベリス様のお名前をつけますわ」

「まあ素敵…!」


名前の大切さを教えてくれたときにトバイアス様が漏らした言葉が蘇る。


「人が自分の名前をどれだけ愛しているかは、建物の名前を見ればわかりますよ。自分の名前を病院や学校につけてほしいがために、大金を寄付する大金持ちがたくさんいるでしょう」


確かに自分の名前を尊重されると気分がいいものだ、と私は思い知った。

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