王太子妃イベリス
イベリス目線に戻りました!
ついに結婚式の日がやってきた。モーディやサラがテキパキと支度をしてくれて、さきほどようやく準備が整った。
オフショルダーにエンパイアラインのウェディングドレス。上半身と裾には、手の込んだ刺繍が施されている。後ろ姿は、長いトレーンが美しい。
「言葉にできないほどお美しいですわ、イベリス様。いえ、イベリス妃殿下」
「モーディ、これからもずっとイベリス様でいいのよ」
目にうっすら涙を浮かべているモーディを見て、私まで何かこみあげてくる。
「モーディ、今日を迎えられたのもあなたのおかげよ」
「そんな!私は何も」
「いいえ、本当にあなたのおかげなのよ。ありがとう。これからもよろしくお願いしますね」
「ええ、イベリス様。ええ、ええ…」
2年ほど前、トバイアス様にもらったアドバイスを初めて実践した相手がモーディだったのだ。あれから私の人生は大きく変わった。ついに堪えきれずに泣いてしまったモーディの手を、私はしっかりと握った。
侍女たちは口々に褒めそやし、式次第読み上げ係のエレアも褒めてくれる。けれど、誰に褒めてほしいかと聞かれたら、やはり…
「イベリス、いいかな」
「ええ、クレイト様。ちょうど準備ができたところでございます」
部屋に入ってきたクレイト様の顔が綻ぶ。
「ああイベリス、想像していたよりもずっとずっときれいだ」
「光栄でございます。クレイト様も普段以上に凛々しくていらっしゃいます」
「ありがとう。イベリスに褒められるのが一番嬉しい」
「私も、同じことを思っておりました。クレイト様に褒めていただくのが一番嬉しいですわ」
見つめあって微笑む私たちを、侍女たちがうっとりと眺めていることに気づき、私の頬は赤くなる。「じゃあ私は先に行くよ。バージンロードの先で待っている」と、クレイト様は私の手にキスをして部屋を出て行った。
王宮の大聖堂の扉が開くと、参列者たちが「ほう」と息をのむのがわかった。バージンロードをお父様と並んで進む。その先にクレイト様。強くて、頼りがいがあって、時々は弱さも見せてくれる、私の愛しい人。微笑みをたたえて待っている。
クレイト様の手を取り、永遠の愛を誓う。大聖堂の出口に向かうために振り返ると、サルトス国王陛下が「新郎新婦に祝福を」と声をあげ、手をあげる。すると、無数の紫の光の粒が降ってくる。「祝福を」とトバイアス様も手を挙げ、青い光。トバイアス様の隣にはアイリシア様がいて、光の粒を見てトバイアス様に嬉しそうに話しかけている。次々に、口々に、あちこちから「祝福を」と声が上がり、大聖堂の中は色とりどりの光で満たされた。
「なんて美しいのかしら…」
「魔法使いの祝福だ」
光の中を出口に向かって進む。
左手にはトバイアス様。いつも優しいお兄様のような方、そして、全てのきっかけをくれた方。いつもと同じ優しい笑みを浮かべている。
トバイアス様の横にはアイリシア様。「魔法は使えないけれど、精一杯祝福しますわ」と笑っている。明るくて、お節介で、いつも背中を押してくれる方。
右手側には、手がちぎれそうなほど拍手してくださっているビオネッタ様。高等部で初めてできた、聡明で逞しいお友達。隣にはカラバス様がいる。
三人がいなければ、今ごろ遠い異国で愛のない結婚生活を送っていたかもしれない。私の人生を動かしてくれたお三方、どうかどうかお幸せに…
声に出ていたのだろうか、クレイト様が「自分の結婚式で、他人の幸せを祈るのか?」と耳元で笑いながら囁く。
「変でしょうか」
「いや、イベリスのそういうところも好きだ。もう一度キスしていいかな」
「ここで、でございますか?」
「そう」
私の返事を待たずにクレイト様が私を横抱きにしてキスをした。「わぁっ!」という歓声があがり、光の粒がより一層強く煌めいた。




