やきもち合戦
お待ちくださいクレイト様!裏はだめ!この流れで裏に書いてあるメッセージを読まれたら、誤解される!!
必死で念を送るが、魔法使いでも何でもない私が念じたところで、実際には念は送れていないし、何かが起こるはずもない。クレイト様はくるりと栞を返し、メッセージに目を落としてしまわれた。
"トバイアス様
あなた様のおかげで、私は変わることができました。
あなた様は私にとってずっとずっと大切な方です。
あなたを敬愛するイベリス"
「…イベリス、ちょっといいかな。私の私室で今すぐ話がしたい」
「クレイト、その栞は…」
「叔父上は黙っていてください」
引きずられるように、私はクレイト様の私室へ連れて行かれる。
「この栞を作ったのはイベリス?」
「はい」
「どういうことか説明してくれるかな。私が初恋だというのは嘘だったのか?」
ソファに腰掛けたクレイト様の口調は穏やかだが、苛立ちが透けて見える。どう説明すればわかっていただける?どうすれば穏やかに解決できる?
「以前に恋をしていたというのは、私がどうこう言えることではない。けれど嘘をつかれては困る」
「あの栞を見れば、クレイト様が、私とトバイアス様の間に何かあったとお考えになるのは当然です。私がクレイト様なら、同じように、私が嘘をついたと考えたでしょう」
「そう、とても親密そうな内容だったからね。”私にとって大切な人”というのは」
「ええ。誤解を生むような書き方をしてしまった私が悪かったのです。実際には、私たちが恋仲だったとか、私がトバイアス様を恋愛対象として好きだったなどということはございません」
「トバイアス様は、引っ込み思案な私がクラスメイトと話せるようにアドバイスをしてくださって…」と説明するが、クレイト様は黙ったまま。まだ納得しきれていないようだ。
私の中にもイライラが溜まりだす。クレイト様だって、私以外にデートしてきたご令嬢がいるのに。それに、アイリシア様とだってあんなに仲がいいのに。私がずっと、どんな気持ちでお二人のことを眺めてきたか…
思わず口に出てしまう。
「クレイト様も、アイシリア様と仲が良くていらっしゃるでしょう。隣で見ていて、私など入り込めないと思わされるほど」
「アイリシアは家族のようなものだ!ずっと一緒に育ってきたのだから。図書館の司書と利用者だった叔父上とイベリスとは違うだろう。それに今はアイリシアは関係ない」
「私にとっても、トバイアス様はお兄様のような方なんです!」
二人とも押し黙った膠着状態が続き、涙が出そうになる。
喧嘩したいわけではないのに。本当に何もないのに。クレイト様の以前のお相手やアイリシア様のことをとやかく言いたいわけでもないのに。
馬鹿みたい。ほんと、馬鹿みたい。
ふと冷静になって、ジェスロ様とチャートを作ったときのことを思い出した。意見を変えさせようとして何か言われても、人は簡単には折れない。だけど自分で思いつかせたら…
クレイト様。冷静になって考えてみてください。
「…クレイト様は、本当に、私がクレイト様以外の誰かに恋をしたことがあると思われますか」
「…?」
「その…あの…クレイト様にキスされたり見つめられたり、そういったときの反応を見て、私が他の誰かとの恋を経験したことがあると思われますか」




