そして、プロポーズ
「な…何なりとおっしゃってくださいませ。私にできることなら何でもいたします」
「2か月後に開催される父上と母上の成婚20周年祝賀会に、私と一緒に出てほしい」
それは…それは…
それは、かなりの大役なのでは!?
「驚かせてしまったね。いつもなら、どうしてもパートナーが必要なときは長年の付き合いのよしみでアイリシアに頼むんだが、今後はずっとイベリス嬢に頼みたい」
今後はずっと。
「殿下、それは…あの…」
「私の婚約者になってほしいという意味だよ」
「私を、こここ婚約者に…なな何故…」
私に向かって、「私は立場上なのか性格のせいなのか、本音を出せないことも多いけれど…」と殿下は話し始める。
「イベリス嬢は私にとって、とても話しやすい人だ。楽しいこと、心配なこと、何かあったときに話を聞いてほしいと思える相手なんだよ。ウィットに富んだ会話よりも、詰まりながらでも心を込めて返事をしてくれる方が、私にとっては大切だ」
考えながら、ゆっくりと殿下は話し続ける。
「他の女性とは何か違う。何だろう…本当に私自身に関心を持ってくれているのが伝わるんだ。私の話を興味深そうに聞いてくれるからかな。王太子妃になりたくてアピールしたりお世辞を言ったり媚びたりするのではなく」
突然のことに驚きすぎて何も返せない私に、「それに」と殿下は続ける。
「以前も言ったかな。イベリス嬢は身分が低い者や立場の弱い者への気配りも忘れない、心の美しい人だ。あ、もちろん外見も美しいが。今日は特に」
「美しい」と言われて真っ赤になると同時に、目の下のクマが途端に気になってきた。「でも、殿下と話せるようになったのすら、つい最近なのに」とも思いながら、殿下のお話が終わるまで口を挟むのは待つべきだと我慢していると、考えを察してくれたのか、殿下がこうおっしゃる。
「性急だと思われても仕方ない。私も本当は、もっとイベリス嬢のことをよく知って、イベリス嬢の気持ちに確信が持ててから伝えようと思っていたんだ。婚約者の件がエピファラ殿下の嘘だとわかってからも」
そこで殿下は少し言い淀んだ。
「でもさっき、スピードルと楽しそうに踊っているのを見て…嫉妬というのか、焦りというのか…自分でもこの感情には驚いたよ。でもこういう思い切りも必要なのではないかな、恋には。もう私には、イベリス嬢以外の相手は考えられないから」
「恋」「イベリス嬢以外の相手は考えられない」という言葉に心臓が跳ねる。私の血圧は今どこまであがっているのだろう。心臓がドキドキに耐えきれずに止まって、倒れてしまうのではないだろうか。
「イベリス嬢さえ承諾してくれたら、お父上のトーウォール侯爵も異論はないと思う」
もちろん、お父様は泣いて喜ぶだろう。お母様も、モーディはじめ屋敷の皆も。ああ、殿下が私の前に跪く。
「トーウォール侯爵令嬢イベリス、私の妻になっていただけませんか」
「ええ…ええ…クレイト王太子殿下。よろこんで」
「良かった…ありがとう」
なんてことだろう。私が王太子殿下の婚約者だなんて。殿下が立ち上がり、私の手を引いて抱き寄せようとする…




