初めてのダンス
今日は学校主催のダンスパーティーがある。生徒たちの交流と婚約者探しの場として、各学期に1度開催されているものだ。今学期のパーティーは最後まで居ようと心に決めていた私だが、エピファラ殿下の一件があって、気力を失いかけている。今回もすぐに帰ろう…
猫カフェ以降に家族が大騒ぎして新しく仕立てたドレスを、モーディに着せてもらう。髪の色に会う、薄い水色。オフショルダーにエンパイアラインのシルエットで、上半身には小さな宝石が散りばめられているデザインだ。メイクにも気合いが入っている。髪型は、モーディ曰く「よく手入れされたコバルトブルーの髪をアピールするため」、ハーフアップだ。
ごめんねモーディ。今日もまた、すぐ帰ってきてしまうのよ。
会場になっている学校の大ホールに到着すると、私を見つけたアイリシア様が近づいてきた。
「イベリス様、ご機嫌よう」
「アイリシア様、ごきげんよう。素敵なドレスですわね」
「ありがとうございます。そんなことよりイベリス様」
「なんでございましょう」
「こんなところにいてはいけませんわ。もっと目立つところにいませんと。クレイ様に見つけてもらえるようにね」
「でも私は…」と口ごもる私を、アイリシア様は会場の真ん中あたりまで引きずってきた。女性から男性に声をかけることはできないので、ここで待つのだ。すると、カナカレデトロス様がやってきて、私の手の甲にキスをした。
「イベリス嬢、踊っていただけますか」
「私!?ええ、よろこんで」
お父様や執事のディーベン以外の男性とは初めて踊る。すぐ帰ろうと思っていたのに…でも、クレイト殿下相手ではないからエピファラ殿下も機嫌を損ねないだろう。これも学生生活の思い出。少し踊ったら帰ろう。
「パーティーでイベリス嬢をお見かけしたのは初めてです」
「ええ、いつもすぐ帰ってしまっていましたので…」
「こんなにダンスがお上手なのにもったいない。お話上手な上にダンス巧者でもあるとは」
「お褒めいただき光栄ですわ。カナカレデトロス様もとてもお上手です」
「いえいえ。あなたと踊れてよかった。一曲だけにしておきましょう。他にもあなたと踊りたい男性がたくさんいそうだから」
「え?」と聞き返す間もなく、曲が終わって私たちが離れると、すぐジェスロ様からダンスのお誘いをいただいた。彼が最近興味を持っているという時事問題についての講釈で頭をいっぱいにしながら、何とか間違えずに踊り切る。
次から次へと相手を変えて踊り、喉が乾いても飲み物をとりにいく間がないほどだ。スピードル様と踊り終わったところでさすがに疲れて、頼んで一緒に飲み物をとりにいってもらう。すると「スピードル、代わってもらえるかな」と低くて良く通る声がした。
「これはこれは、クレイ殿下。もちろんです」
「イベリス嬢、次は私と踊っていただけるかな」
「あの…あの…大変光栄なのですが、私…」
「エピファラ殿下のことを気にする必要はないよ。大丈夫」と言われて、驚いてクレイト殿下を見つめる。
「とにかく一曲だけ、ね」




