強力な援護
「ねえ、そうなんでしょう」とアイリシア様は楽しげだ。アイリシア様はクレイト殿下のことを何とも思っていないのか、私のことなどライバルにならないと思っておられるのか…
「クレイ様と二人でお話したいなら、私、クレイ様にそう声をかけてあげますわよ」
「アイリシア様、どうして…」
「だって、お似合いの二人は応援したいのですもの。クレイ様はあまり本心を出さないところがある方ですけれど、聞き上手のイベリス様ならきっとぴったりよ」
「あの、アイリシア様は殿下のこと…」
するとアイリシア様は笑い出した。
「私は画家になって世界中の美しい風景を描きたいんですの。クレイ様は素敵な方ですけれど、王太子妃や王妃なんてごめんよ。王宮に引きこもるなんて私には向かないわ。クレイ様も、私のことはただの妹か姉か従姉妹か…とにかく家族のように思っているのではないかしら」
「じゃあ、一緒に参りましょう」とアイリシア様は私の手をとり、殿下の席まで連れて行った。
「クレイ様、ちょっとお話いたしましょう」
「アイリシア、急にどうした…それにイベリス嬢」
私は、殿下が私の名前を呼んでくださったことに感動する。やはり名前は大事だ…嬉しい…
素直に「名前を呼んでいただけて、光栄です」と伝えると「あれ、今まで呼んだことはなかったかな。一緒に話したことはあったよね」と答えが返ってくる。
輪の中にいること、認識していただいていたんだ…それもとても嬉しい…
と、殿下が私の髪に目を留めて、「それは…猫?」と聞く。何かのきっかけになればと、今日は猫のヘアピンをつけてきたのだ。「はい。私は猫が好きで…家でもマルタと名付けた猫を飼っております」と答えると、「実は私も猫が好きなんだ」と殿下。はい、存じ上げておりますとも。ヘアピンをつけてきて良かった。
「でも妹が猫アレルギーでね。王宮では猫が飼えないんだよ。とても残念なことに」
「まあ、エヴァローズ殿下が。それは残念でございますね」
するとアイリシア様が口を挟んだ。
「ね、王都に新しく”猫を愛でることができるカフェ”が出来たのをご存じ?せっかくだから、猫好きのお二人で行っていらしたら?クレイ様も、休日なら少しはお時間あるでしょ」
「え」と私も殿下もアイリシア様を見て、それからお互いを見る。いきなり二人で出かけるなんて…
「アイリシア、あまり変なことを言うな。イベリス嬢が困っているだろう」
「いえ、私は、ここここ困っておりません。その…あの…殿下こそ…」
「いや、私も困ってはいないが」
「えーい、うっとうしい会話ですわね。二人とも嫌でないなら行ってらっしゃいな」とアイリシア様が私にウインクしながら話をまとめてしまい、なんと私は王太子殿下と猫カフェへ行くことになってしまった。




