ダフネフの天空城
見渡す限り草原が広がり、その小高い丘に石垣が積み上げられ青空と混ざる雲の様な白城に、マグマの様な赤が血管の如く脈打つ、緑と青の空間に異彩を放つ。
天守閣で、ただ一人の少年が只、空を眺めている。
これを作ったのは彼、悪趣味と言う相手も居ないので好き放題、思うがまま造った“天空城”。嘗ては栄えたMMORゲーム。
“マインクリエイト”
一人でのんびりコツコツと作業をする事が好きな彼が唯一、ハマったゲームであり彼が唯一この世に残した宝物もとは安土城をモデルとしており想像して作っている。
自分一人でやるもよし、みんなでワイワイやるもよし、シェアして評価を互いに付けるもよし、自由度がかなり高い。
実際の建造物を作る人や、憧れた空間を再現する人も居てネットでは一時期、ワイワイと盛り上がったりしたが20年前も経てば新しいゲームやハードが出て次第に過疎っていった。幸いサーバー閉鎖など無く今日まで無事プレイ出来た。
楽しい時間は、必ず終わりがくる。親会社が倒産した事によるサーバーダウンの日。
彼は今、空を眺め残りの時間を楽しんでいた。彼は足が生まれつき不自由であり、彼が自由に動ける唯一、不自由なく過ごせる世界。それが終わりを告げる、、、、。
表情は意外にも明るい。
「やりたい事は全部やった。作りたい物は全部作った。楽しかったなぁ。」
彼は、笑顔で終了時間を待つ。
カウントダウンが始まる。もし、終わりが来るならこう過ごそうと会社が倒産してから決めていた。サービス終了の時間を待つ、、、、。
風が心地よく吹き、日の光が心地いい。
違和感を感じ辺りを見渡す。この世界には、風は無いというか、日の暖かさを感じる筈がない。
そして何よりもステータスバーが無い。まるで現実そのもの。
「ステータスオープン。」
声と共に、一枚の情報が表示されたガラスの様なものが現れた。
うぉ、本当にでた!やっぱりゲームか!
しかし、見慣れない形式だな。四苦八苦しながらも弄ってみる。メニューバーの中にびっくりマークが付いている項目があり、開いてみる。
メールが届いていた。宛先は、、、神様。
「自分の事を神様って、、、。」
苦笑いしつつも内容に目を通す。
件名「とりあえず現状説明の件」
田神 晃くん。
先ず初めに、謝罪を。
君は死んでしまった。別に儂が間違ってとかでは無く寿命じゃ。ちと早すぎる気もするがゲームの最中に亡くなってしもうた。そこで、肉体と精神が離れてしまってのそのタイムラグが原因なのか解らないが輪廻から弾かれてしまってな。
元の世界に魂が戻せないのじゃよ。
そこで一つの提案なんじゃが、この世界に住んで見ないかい?もちろん多少の融通はする。君の城はそのままで君の子供達もそのままじゃ。
yes / no
タッチしてくれたらそれでよい。
よく考えてから押すのじゃぞ?それではな!
フム、内容はわかった。もしnoを押したら消滅?そんな事を考えてると急に怖くなる。とりあえず、、、、、yes一択じゃね?
だが断る!noを押そうとする。
「ダフネフ様また此処にいらっしゃったのですか?お茶の準備が出来ましたのでいらして下さい。」
急に声が掛けられ、慌てて振り向くと其処には見慣れたメイドがにこやか表情で立っていた。
「承認しました!ダフネフ様、世界を楽しんでください。特典としまして、クリエイトが与えられます。詳しくはメニューをご覧ください。」
無機質でも女性と思われる声が、響く。
指は、yesを指していた。
「だぁぁーなんてこったぁ!」
そこには、天を仰ぎ叫ぶ少年がいてそれを暖かい
視線で見つめるメイドが佇んでいた。
「お茶が冷えますから、さっさと来いや。」
笑顔で毒づくメイドに意気消沈と後を付いていく。
「はい、、、。」
少年の叫びと呟きは誰にも届かなかった。
これは、彼が求めた平穏な物語。地球から離れ異世界に彼と仲間達が訪れ、現地の種族達に迷惑と混乱と混沌を呼び後に、不可侵領域と呼ばれ畏怖と敬意を込まれこう呼ばれる。
“ダフネフの天空城”
複数の種族達の王と神話の世界の訪問者、転生者の日々がこうして幕を開けた。
◆
ヒールってなんだろうね?
正義があるから悪がいる。なら正義ってなんだろうね?
勝ったら正義?負けたら悪?
僕はずっと疑問に持っている。正義が居なければ悪も居ない。ヒールなんて最初っから居ない。
だから僕は僕の楽園を作った。人々に忌み嫌われた者達の楽園。彼らには理性はあるから行動原理もある。簡単に言えば攻撃されるから攻撃する。
または人によってそう造られた。
僕の観点から自己分析により、そう造られた部分のみを削除する。
例えば、某ゾンビゲームの村人の彼もその一人。
攻撃的じゃないゾンビゲームなんてゲームとして成立しない。だけど彼らは本当に攻撃的なのか?
そこに銃を構えたエージェントが仲間を撃たなければ攻撃的行動をしないんじゃないか?人間でも友達を守る為に鎌を手に持たないのか?
ずっと疑問だった。彼が来なければ、、良かったのでは無いのか?
霧の中の住人達も、博士に勝手に造られた彼も、正義の名の元に銃を振り回す彼らが来なければ、見た目だけで判断し攻撃してくる彼らさえ来なければ幸せなんじゃないのか?
僕が思うにエージェント達の方がよっぽど危険なんじゃないのか?
そんな事を考えて、僕は住人が幸せに暮らせる世界を作った。
それが僕の城、ダフネフの天空城である。
ありがとうございました!




