くんずほぐれつ
「おい、上がって良いのか?てかここスレイブさんの家なの?家出してるんじゃないの???」
いぇーい!帰宅!私は帰ってきたぞ!兄貴!よし、無事に家出から帰ったことだし。
「とう!」
最速の動きで寝室へと移動する!うへ~やっぱ自分のベッドが最高だよ~ スヤスヤ
「あれ?スレイブさん?ちょっと…… あぁもう!仕方ない」
スヤスヤ
「お邪魔しま~す」
スヤスヤ
「スレイブさーん、せめて明かりくらい付けようよ」
パチッ むっ スヤスヤ
「あ、いた!って寝てる… ほんとに寝てるの?」
スヤスヤ
「おーい、スレイブさん?」
スヤスヤ
「完全に寝てやがる」
スヤスヤ
「色々聞きたいことあったのに」ガックシ
スヤスヤ
「本当、スレイブさんって可愛いなぁ」
スヤスヤ
「寝てるなら少しくらい見てても――」ガシッ!
むにゃむにゃ
「!!!」
なんか柔らかい…
「ちょっ、スレイブさん!離して!」
「枕ぁ…」
「違うから!枕じゃないから!てかめっちゃ力強!全然剥がせない…」
スヤスヤ
「しっかりしろ海堂司、お前はちゃんと理性のある人間だろう」
むにゅむにゅ
「…… 大丈夫、ダイジョウブ、オレハ、理性の、アル、人間」
なんか抱き心地いい~ すりすり
「………」
スヤスヤ
「スレイブさん、お、起きて」
むにゃむにゃ
「じゃないと、もう俺――」
「じょないともう?なんだ?」
あぁ、兄貴だ~
「おいガキ、俺の大事な弟に何覆い被さってんだよ?」
ん~?司がいつの間にか私の上に居る?あ、兄貴に引き剥がされた。そんでもって縄でグルグル巻きにされて。
「よし」
床に俯せで転がされる司。
「!!」
「テメェこんなことしてただで済むと思ってねぇだろうな?」
「ちょっ誤か――」
「黙れ…」
あっ、司の口に縄が。なんかウケる。
「いいか?テメェの話なんて聞いちゃいねぇんだよ、俺の大事な弟に覆い被さって可笑しな事を言ってた、それだけでテメェを殺す理由に足りる、違うか?」
兄貴こわぁ、殺すとか言ってるんだけど。目もギロッとしてるし。
「んんー!んんん!んー!!!」
司が私の方を見てなんか言ってる、んだけじゃわからんて。なので私は首を傾げた。
「安心しろ死ぬのは一瞬だ」
と、中華包丁をを持った兄貴は言った。
対する司。
「んんー!!!!んっんん!!んーんー!!!」
私の方を見てめっちゃんーんって言ってるw
「兄貴~人の肉って案外硬いらしいから包丁傷むよ~」
「あぁわかってる、こいつをバラしたら新しいのを買うとするよ」
あっ、兄貴の目からハイライトが消えた。これは本当に殺る気ですわ。しょうがないなぁ。よいしょ!
「あはは、兄貴~その子実は私の友達なんだよね~」
そうベッドから起き上がった私が言うと、簀巻きの司が目を潤ませこっちを見てくる。
「友達?本当か?」
疑心の兄貴。
「うん♪」
疑惑の私。
「んん!!」
肯定の司。尚司は頑張って海老反りして首をブンブンしてる。ウケる。
「そうか…… わかった、なら本人に弁明を聞こうじゃないか」
縄をほどいてあげる兄貴。やさC。
「んはっ…」
「名前は?」
兄貴はいつもより目を細める。
「か、海堂司といいます。」
「何故ここに?」
なんか兄貴面接官みたいだな。
「その、スレイブさんに連れられて」
「スレイブさん?誰だそいつは?」
おいおい嘘だろ兄貴!マイソウルを忘れたのか!私は驚愕の視線を兄貴に送る。
「えっと、彼女の本名がわからなくて。それでラインの名前が暗黒s」ガシッ!目にも止まらぬ速さで迫った兄貴の手!司は反応する事すら許されなかった。
「オーケーわかった。で?何故我が弟に覆い被さっていた?」
暗黒神さん邪気漏れてますよ~。
「それが、寝顔を見ていたら――」
「つい襲いたくなった?よしギルティ!極刑だな」
包丁を持つ手に力が入る兄貴。
「まま待ってください!!違います!違いますから!」
「ほう?」
兄貴は力を溜めている。
「寝顔を見てたらスレイブさんが急に掴んで引っ張って来て!」
「ふむ」
兄貴は力を溜めている。
「それで色々もがいたけどスレイブさんから離れられなくて、さっき漸くお兄さん?が助けてくれたんです!」
懇願するようにそう訴える司。対する兄貴。
「ふむふむ、ならお前がさっき言ってた『じゃないともう俺』なんだ?続きを言ってみろ」
兄貴は力を溜めている。
「?!!」
兄貴は力を溜め終わった様だ。
司の頬を一滴の汗が伝う。
「と、」
「と?」ギュッ 包丁を握り締める音。
「―トイレに行きたかったんです俺…… お借りしても良いでしょうか」
「……… あぁ、いいよ」
スタスタとトイレへ向かう司。因みに私はさっきから抱き心地の良い枕を探してる。何処行った~?
「なぁ弟よ」
「何~?」
「本当に何もされてないんだな?」
何も?何もとは?どこからが何もに入るの?どこまでが何もに入らないの?
「手を繋ぐのは何もに入らない?」
ギュッ 兄貴は力を溜めた。
「他は?」
「一緒に買い物した!」
「まぁ、それくらいな――」
「それで色んな服を試着して司に選んで貰ったの!」ニコッ
バキッ あっ、包丁の柄から変な音が。
「なるほど…… で、帰って来たと」
兄貴に言われた通り服を買って来たよ!服!3万使ったけどね!兄貴が言ったんだよ?私悪くないよね?兄貴のせいだよね?
「そうそう」
「なぁ弟よ、百歩譲って一緒に買い物までならいい、だが何故彼が家に居る?」
「あぁ確かに?何でだっけ」
「何でだっけじゃないよ!買った物全部俺が持ってたのに無言で家に入るはからしょうがなく買った物だけでもと思って置く為に入って来たんだよ!」
怒濤の早口を終えた司はどこか疲れてる様に見えた。そうだったんだね、司…… 愛しのベッドの事で頭一杯だったから忘れてたよ。
「なぁ少年」
柄が変な風に曲がった包丁を持つ兄貴が司に語り掛ける。
「はい」
司ビビってる~
「手を繋いだのか?」
「!」
「繋いだのか?」
「……はい」
司汗かいてるけど暑いの?私は快適だよ?
「一緒に買い物したらしいな」
「はい。」
「弟に色んな服を着させたみたいだな…」
あ、司の口がまたモゴモゴしてる、何か言いたいのか?言えば?言えよ、言え。こいつマジなんなん?
「で、どうだった?」
「どう、とわ…」
「感想とか、あるだろ?」
ハイライトが消えた兄貴からは凄味を感じた。兄貴こぉわぁい、もしかして3万使ったの怒ってる?でも兄貴のせいでしょ?私、悪くない。
「その… 可愛かった、です……」
司は仕切りに兄貴の持つ包丁を気にしてる。わかる!だって包丁に亀裂入ってるもん!兄貴本当に人間?怖すぎなんだが。
「そうか…」
お、兄貴の目に光が… これは、許されたのか?やった!やったじゃない?!最初から私悪くないから!
「所でどんな服を買っt――」
買い物袋から一つ服を取り出した兄貴の動きが固まる。その手には薄いピンクの布が……
「?」
あれは確か下着買ってる時に可愛い!って思って衝動買いしてしまったやつだ。
硬直が解けた兄貴が此方を振り向き――
「「ヒィッ!」」
修羅が如き鬼の形相をした兄貴が…そこに居た… 包丁は…… 粉々に砕け散ってたよ。
◆モール下着売り場から一部抜粋。
司、普通の服は選んでくれたのになんで下着は駄目なんだろ?下着だって可愛いのとそうでないのがあるじゃんか!
もぉいいや可愛いと思ったの買お。
「かわいい」
下着のコーナーなのに寝巻きも置いてあるのか… このピンクの可愛い!すっごい透け透けだけど!本当に寝巻きなの?前とか開いてるよ?お腹丸出しじゃない?
「でも可愛い、どうしてだろ?」
ふ~ん、ネグリジェって言うのか~、ちょっと高いけどデザイン可愛いし!買っちゃお!
「ふん♪ふふ~ん♪わったしはお金持ち~♪」