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神話生物系主人公  作者: 名無し
5/12

ふぁっしょんせんす()


 「そいえばさ、何でモールに行くの?」


 そんなの服買いに行くからに決まってるじゃん。バカなの?

 このバカのために口を開くのすら億劫だよ。


 「服」

 なので会話は最小限にしよ。


 「服?あぁ、買いに行くって事?」


 そだよ。


 「………えっと……」


 首を掻く司。何か話そうとしてるのか口を開いたり閉じたりしてる。魚かよ。


 「歳幾つ?」


 「17」


 「あ、タメじゃん」


 同い年だからってそんな目を輝かせんな。親近感沸いたの?ついでに頭も沸いてるぞ?


 「てか髪の色も一緒だな…」


 私の髪と自分の髪を交互に見ながらそう言って司は少し照れる。謎。



 それから少し間を置いて。



 「スレイブさん、ここら辺の高校じゃないっしょ」


 「………」


 いやここら辺だよ。


 「てか俺と同じ桜花学園じゃね?バッチと制服のデザイン一緒だし」


 どこだよそこ。

 む、私が着てる制服に桜のバッチが付いてる。司のと同じだ。


 「その、答え難かったら答えなくていいんだけどさ、もしかして家出、してるの?」


 はぁ?家出?私が?馬鹿なの?大体家出って言うのは家から出……家出か!


 「うん」

 どうやら私は知らない間に家出していたようだ……兄貴、許せ!


 「あぁ、やっぱ?実は俺もなんだよね、もう何日も帰ってなくてさ……」


 これが『隙あらば自分語り』ってやつか?


 「ふ~ん」

 まぁどうでもいいか。


 「俺は親父と喧嘩して、だけど…スレイブさんは?」


 ?これ私も言わないとだめ?てかさっき言わなかった?


 「服」


 「服?、服??えっ、服買いに行くだけで?」


 だからそうだって言ってるだろ。


 「はぁ、そう言うのもあるんだな」


 うん、私も驚きだよ。


 「ぷ、くくっ」


 今の何処に笑う要素あったんだ?こいつの笑点が謎過ぎる。本当に人間か?こいつ。


 「ははっ、ナンパから助けたらまさかの同じ高校で、更に家出してて、同い年で、髪の色まで一緒って、どんな偶然だよ」


 司はツボに入ったのかめっちゃ笑ってる。少しは人の目とか気にしないのかな?司?見られてるぞ。


 「あぁごめん!でもありがと!スレイブさんのお陰で元気出たわ、なんか何日もぐちぐちやってた俺馬鹿みたいだな」


 おお!遂に馬鹿を自覚したか!うんうん、自らの愚かさを理解した人間は好きだぞ!私。


 「お、あれモールじゃね?」


 「うん」


 やっと着いたよ~疲れた~主に精神的に。さっさと買い物して帰ろ~。


 「あのオッサンは居なさそうだな…… モールの中も慎重に行かないとな」


 は?かくれんぼしてるんじゃねぇんだぞ?何が慎重にだ、私はさっさと買って早く家に帰りたいんだよ!

 司の手を握り強引に歩き出す。オラ!さっさと歩け!今朝のお返しだ!グイグイと司を引っ張る。


 「……//」


 なんか司がやけに静かだな?振り返ると顔を赤くした司がいた。何か言いたげだ、言えよ!…… 言わないの?…… なら黙ってろ。



 事前になんとなく調べといた服屋に行く。名前は~『ゼニクロ』?だっけ、まぁなんでもいいや。服系は色々売ってて全部揃えられるらしい。便利。


 「ここ」

 着いた。パッパラパー


 「あ、ゼニクロじゃんいいよね安くて」


 ふんふ~ん♪何買おっかな~


 「あっ」


 司から手を放し私はルンルンで店に入る、なんか後ろから悲しさを多分に含む声が聞こえたけど、どうでもいいや。


 「!これかわいい!こっちも!」


 悩むなぁ、どんなのがいいかな?私割と胸あるし強調出来るのがいいかな?ふむふむ、敢えて見せない、ならこのブラウスとワンピースを合わせて……

 むむ、こいう時は誰かに聞くのが一番!悩んでも仕方ねぇ!


 ということで試着!どうよ!


 「えっと、凄く似合ってるぞ」


 「えへ」


 ふむ、やはり褒められるのは存外に心地良いものだ!よしこれ買お。


 次は~デニムショートパンツとダボっとしたネコパーカー!


 「ぐふっ、凄く、似合ってる」


 これも買い~、今度はオーバーサイズ気味のグレーのカーディガンと白のキャミソールで~下は適当にミニスカでいいかな?


 「どう?」


 「かわいい」

 それだけ?他は?


 司は視線を私に向けたまま硬直。見すぎじゃね?てか似合ってるの?可愛いだけじゃわからんのだが?


 「お~い生きてる?」


 目の前で手を振るも反応がない、まさか!し、死んでる!

 司の肩を前後に揺らす。


 「し~ぬ~な~!」


 「いや生きてるから!」


 蘇生出来た!


 「ふふ、また一人人間を救ってしまったようだな」


 私は腰に手を当て不敵に微笑む。それを見て司の頬が緩む。


 「あはは、本当スレイブさんって面白い人だな」


 貴様には言われたくはないよ、この馬鹿(うましか)頭!


 よし!司の蘇生が出来た事だしバンバン買うぞ~!





 「はは、それにしても服買うために家出しただけはあるね」


 ふと、私に荷物押し付けられた司がそんな事を言う。私がレジで会計済ませる所を横で見ていたからだろう。なんと!合計金額3万4200円だ!高い!なんと高いことか!

 まぁ下着とかも買ったし、しょうがないよね?うん大丈夫、4万渡したのは兄貴なんだし私が全て使ったとしても兄貴の落ち度だ!私悪くない!いっぱい渡す兄貴がイケないんだ!


 「この後どうすんの?こんなに服買ったけど、置く場所とかあるの?」


 両手いっぱいに買い物袋を持った司は心配そうに尋ねる。無論家に帰るんだよ、当たり前だろ?


 「こっち」


 因みに私は今朝と同じく手ぶらである、少しは持たないのかって?女の子に荷物持たせるのどうかと思うよ?それに司は自主的に持つと言ったんだ、だから私ははいどうぞって渡したんだよ。私悪くない。


 「て、おいおい、ここ路地だぞ大丈夫なのか?もう大分日も落ちて来てるけど……」


 ここを抜けた方が早いんだよ、つべこべ言わず私の後ろを着いてくればいいのだ、わかったかね?司君。スタスタ


 「おーい!待てって、たくしゃぁねぇ」




 とぼとぼ


 「あのさ」


 きょろきょろ


 「本当にこの道であってるの?」


 よゆ~よゆ~あってるあってる。


 「日も落ちたし、やっぱ表の通りの方がよくね?変なの居るかもだし……」


 大丈夫大丈夫変なのなんてこの辺いないし、多分もうそろ!後ちょっとで着くと思うんだよね。


 「なぁ、やっぱ道迷ってるよな?黙ってないで何か言ってくれよ」


 この私が?道に迷う?地元民なのに?ないない。そんな事よりこの辺なんか見覚えあるし、そろそ――


 「あっれぇぇ!カナちゃんじゃぁん今朝振り!!いやぁ探したよ!!マジ!今日は見付かんないかと思ったけど、やっぱ俺運良いわ!て、あのガキもいんのかよ、チッ」


 誰だこいつ?いきなり早口で話し掛けて来たんだけど、キモッ


 「言わんこっちゃない!スレイブ走るぞ!」


 えぇ、走りたくない。私がめんどくさそうに振り返ると、丁度司が買い物袋を手から離そうとする所だった――


 「動くな!!」


 その言葉に司が硬直する。

 おいおい司?お前自分が何を持ってるか自覚が無いようだな?3万4000円だぞ?お前の命より重いぞ?殺すぞ?


 「なぁに?ケンカ?知り合いじゃないの?はっ、残念だなガキ!カナちゃんは俺等と遊ぶ方が楽しいってよ」


 何言ってんだこいつ?


 「オッサン、その子が探してるって言ってたJK?うっわ!めっちゃ可愛いじゃん!」


 なんかオッサンの後ろから二人来た、20代くらい?美味しそう。


 「そそ、ごめんね来てもらったのに、向こうから会いに来てくれたみたいでさぁ」


 「いやいっすよ!てかおじさんの後でもいいからさ、俺等にもヤらせてよその子」


 ふむふむ、左のオッサンは贅肉多すぎてマズそうだけど、二人組の方は筋肉質で歯応えあって良いかも!


 「俺の後でいいならいいぞ?その変わり絞まり悪いとか言うなよ?あはっはっ」


 ニコニコ


 「言わない言わない!こんな可愛い子抱けるならそんなん気にしないわ、それよかジン!良かったな!脱童貞じゃん」


 ニコニコ


 「じゃカナちゃん、俺等と一緒にホテル行こ?大丈夫金はちゃんとあるから――」


 グニャリ、私の手を掴もうとしたオッサンの腕が曲がる。


 「薄汚い手で触るなよ」


 お前に用はない。声を上げる暇もなく私のハイキックが顔面に突き刺さりオッサン!KO!

 痛みに悶絶する表情のまま気絶するオッサン。うける。

 

 「?!てめぇ!よくもオッサンを!」


 無防備に殴り掛かってくる青年、アホだ、けど美味しそうだから許す。


 「?!!」


 青年の拳は届かない、何故なら私の足が彼の腹に突き刺さってるから。あはっ!たのし。


 「司~行こ」


 どうやら青年の連れは逃げたようだ。

 なので私は硬直が解けた筈の司に声をかける。


 「………」


 が、司は魂が抜けた様に呆けている。なので脛を蹴る!死ね!


 「イタッッ!!!」


 さっさと来い。目印が見えたんだよ、もうちょっとで家なの!ほら!何片足引き摺ってんだよ!ちゃんと歩けや!





◆少年は走る、走る、化け物から逃げるため、自分しか気付かなかった、あの少女が一瞬見せたおぞましい笑みに、直感で悟った、あれは人間じゃないと

 路地の先、表の通りは街灯が付き、明かりが差す、あそこまで行けば安全だ、少年はそう確信し駆ける、が、転んでしまった、見ると、そこには何も無かった、足すらも無かった、少年は既に壊れていた、だからこそ前を向く事が出来た、明かりを目指し少年は足掻いた、が、目の前に黒い黒い闇が現れて…… 笑っていた、あの少女と同じ笑みだ。

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