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【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~  作者: 延野正行
虚神を斬る狼牙篇

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Prologue

新章『虚神を斬る狼牙篇』開幕です。

いつもより短いですが、まずは序章をお楽しみ下さい。

 それはヴォルフ・ミッドレスが騎士団の客将として迎えられる少し前の話になる。


 王を守り、国を救った【剣狼(ソード・ヴォルバリア)】は、ギルドで土木クエストを見つけ、日銭を稼いでいた。

 娘には一緒に暮らそうといわれ、王からも部屋を用意するといわれたが、謙虚なヴォルフはすべて断り、西区にある慣れ親しんだ集合住宅で寝泊まりしている。


 生ぬるい環境にいると、身体が錆びていくような感じがしたからだ。


 自分をいじめないと気が済まない体質になってきているらしい。

 その点、土木クエストは、身体を鍛えるのには最適だ。

 集合住宅で顔を合わせる――野心に満ちた若い冒険者を見るのも、刺激にもなる。


 ヴォルフに割り当てられたクエストは、石の採掘現場だった。


 レクセニル王国は建材に使う石の産地として有名だ。

 王都の近くにある山がそうで、頑丈で粘りがあり、磨けば鏡のように光ると評判だった。

 すでに各国に輸出され、ブランド化も検討されている。


 現在、採掘現場は河岸工事用の石材の採掘に追われていた。

 同時に現場では加工も行われ、ヴォルフの姿はその加工場にあった。


 設計師が用意した絵を見ながら、手頃な石を探す。

 そこから鑿などを使い、絵の通りに成形していくのが、【剣狼】の仕事だった。


 ところが、ヴォルフはせっかちだ。


 そもそも鍛冶場で日雇いの仕事をしてた時も、細かく、時間のかかる仕事を苦手としていた。

 若い頃は、よく親方にどやされたりもしていた。

 今はそうでもないのだが、もっと効率的な方法はないかと、【剣狼(ソード・ヴォルバリア)】は石を見ながら首を捻る。


 つと腰に差した【カムイ】をふれた。


 採掘現場では無用の長物ではあるのだが、暇さえあれば鍛錬に励んでいた。


 この時、何を思ったのか、ヴォルフは刀を抜く。

 急に武器をかざした男に、周りにいた同僚たちは「おお」と慌てて距離を置いた。

 乱心したのかと思いきや、頭に蝶が乗るほど男は落ち着きを払っている。

 やがて「やってみるか」と呟いた。


 持ってきた素石を作業台に置く。


 一旦【カムイ】を納刀し、息を大きく吸った。

 集中し、イメージを浮かべる。

 頭の中に浮かんだのは、設計師が持ってきた絵だ。

 ゆっくりと絵と目の前にある石を重ねていく。


 瞬間、ヴォルフは裂帛の気合いとともに刀を振り抜いた。


 剣線が閃く。

 3つ……いや4つの斬撃が、一拍の間に射出された。

 刹那の間に暴れ回った【カムイ】は静かに鞘に納まっていく。


 キィン……。


 音を立て、【カムイ】が納刀されたと同時に、石のあちこちにズレが起こる。

 脱皮でもするようにはらりと肌が剥け、絵の形通りに成形された。


「すげぇ!」

「うおおおおお!!」

「おっさん、やるじゃねぇか!」


 突然、拍手と賛辞が飛んでくる。

 石の加工現場はやんややんやと騒然となった。

 ヴォルフは照れくさそうに歓声に応える。


「すげぇなあ。絵の通りだ」

「なあ、俺のもお願いするぜ」

「なら、俺も」

「じゃあ、俺もだ。一杯奢るぜ」


 俺も、俺も……手を挙げる。

 どこから沸いてきたのか。別室の冒険者まで手を挙げ始めた。


「待て待て! そんな1度に出来るか!! そもそもお前らの仕事(クエスト)だろ!!」


 どうやら石の加工に飽きてきていたのは、ヴォルフだけではないらしい。


 皆が落ち着くのを待って、加工場を出て行った。

 早速、設計師に見せる。

 加工場の同僚のように賛辞が送られるのかと思ったが、設計師は首を振った。


「だめだめ。こんなんじゃ。石垣に使えないよ。切石じゃないんだから。こんなツルツルの表面なんて使えるわけないだろ?」


 設計師が指摘したのは、ヴォルフが【カムイ】で斬った断面だった。

 あまりにも切り口が見事すぎるらしい。

 事実、鏡のようにつるつるだった。


 切石を重ねるならこれでもいい。

 だが、河岸の石垣は石同士を噛み合わせながら積み上げていく。

 この断面では滑ってしまい、使い物にならないだろう。


「じゃあ、表面がゴツゴツしていればいいんだな」


「は?」


 ヴォルフはひょいと石を空中に投げた。

 刀に手を掛ける。

 再び剣線が閃いた。

 【カムイ】を納刀し、石を両手で受け止める。

 手に戻ってきた石の表面は、キザキザになっていた。


「これならどうだ?」


 子供のように目を輝かせる。

 設計師は困ったような表情を浮かべた。


「あんた……。こんなところで石なんて削ってないで。魔獣を倒してきた方が、世のため人のためじゃないのか?」


 もっともな意見に、さしもの【剣狼】も頭を掻くしかなかった。



 ◇◇◇◇◇



 石加工の仕事が終わり、ヴォルフは馴染みの酒場に向かっていた。


 肉体労働の後の酒ほど格別なものはない。

 レミニアにはほどほどにと忠告されているが、英雄になってなお、喉にキュッと来る感覚だけは忘れられなかった。

 さしもの【剣狼】も、酒には勝てなかったというわけだ。


 すると、突然鐘が鳴り始める。

 王都の地区ごとに配置された鐘楼が一斉に鳴り響き、共鳴した。


 背後で衣擦れの音が聞こえる。

 振り返ると、老婆が膝をつき、何やらぶつぶつと唱えていた。

 さらに男が、母親が、子供までもが鐘の方を向き、祈るような仕草をとっている。


 暮れなずむ空。

 鐘が空気を振るわせる中、立っていたのはヴォルフだけだった。


「ラムニラ教の鐘か……」


 聖天ラムニラを主神とする宗教の1つ。

 ストラバールでは人気の宗派で、各地に教院が建てられていた。


 1の善行を行えば、10の善行が返ってくるという教義は非常に有名で、道徳的にも優れていることから、影響を受けている宗派も多い。


 特にレクセニル王国は、ラムニラ教を国教として定めている。

 国の人口の半数は信者といわれ、王都北東にあるラムニラ教院は、総本山を除けば、最大規模を誇る。


 だが、竈と井戸、そして森の神しか信じないヴォルフにとって、ラムニラ教は縁遠いものだ。15年近く王都に住んでいたが、改宗しようと思ったことは1度もない。


「(気のせいか。昔よりも信者が多くなったような気がするな)」


 王都を歩けば、司祭服や教服を纏った人間が否が応でも目に付く。

 その数は以前よりも増えているようにも思えた。


 道ばたで人が聖天に向かって祈りを捧げる中、【剣狼】は自身の切っ先を冷ますため、酒場へと向かう。


 しかし、ラムニラ教とヴォルフが、1人の少女を巡り、対立するとは、この時夢にも思わなかった。


すいません。

明日もお休みさせてもらいます。


突然、身内が入院したりして、家内がゴタゴタしておりまして……。

新章をまだ書き切るところまで出来ていないのです(確定申告も終わってないし)。


13日以降からは、新章が終わるまでノンストップで更新していく予定です。


楽しみされている方には本当に申し訳ないのですが、

今しばらくお待ちいただきますようお願いしますm(_ _)m

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