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第339話 試合の続き

☆★☆★ 5月15日 第9巻発売‼ ☆★☆★


『アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~』単行本第9巻の発売日が決定。そして書影も本日公開されました!

ヴォルフと、新章ヒロインのアローラになります。

激熱だった第8巻ですが、新章となった第9巻も熱々な展開となっております。

ヴォルフ節も炸裂しておりますので、是非ご予約お願いします。


挿絵(By みてみん)


 ガーファリア・デル・バロシュトラス……。


 20代にしてバロシュトラス魔法帝国の君主となり、ストラバール最強の国家へと押し上げた稀代の名君にして、まさに天才。それは政治的な才能だけにあらず、魔法と魔力においては【大勇者(レジェンド)】レミニアに匹敵し、剣術においては他を寄せ付けない天賦の才を持ち合わせていた。


 ちなみに妻は40人。子どもにおいては孫を含めて100人近くいる。

 夜においても、その力を遺憾なく発揮されていた。


 こうなれば、どんなものでも手に入れてきたかといえばそうではない。


 彼は北の魔獣戦線において、同盟国に嫁いだ妹を亡くしている。

 苛烈な性格にあって、唯一ガーファリアに意見できたという妹君の死は、少なからず【大英雄(パラディン)】と呼ばれた天才の精神を狂わせた。

 ついには、それが仇となり、かの邪教ラーナール教団に隙を突かれ、国を危機に陥れることとなる。


 しかし、ラーナール教団の監視がなくなった後、その妹のことを惜しんで、唯一王になろうとしたことは、ヴォルフも近く耳にしたことだった。

 その野望もガダルフと、子飼いとしていたハッサルによって潰えた。


 そして何かが違えば、ストラバールにて伝説になっていたであろう名君の人生は、そこで終わった。


 呆気ないと言われれば、それまでだろう。

 でも、ヴォルフはわかっている。


 たとえ、死に様こそ無様であろうとも、ガーファリアが天才であり、【大英雄(パラディン)】と呼ばれる英雄であることを……。


 結果的にヴォルフにもまた、天賦の才があったことがわかったとはいえ、その人生において天才たるガーファリアの存在は高い壁であり、互いの性質は対極にあり、しかし憧れの存在であった。


(陛下と戦ったのは、確か1度だけか?)


 ヴォルフが初めてバロシュトラス魔法帝国に訪れた際、ガーフと名乗ったガーファリアと1度戦っている。あの時はこちらに武器の分があり、辛くも勝利したが、今はどうかわからない。


(試してみるか……)


 ヴォルフは静かに納刀する。

 それを見て、ガーファリアはニヤリと笑った。


「ほう。あの時の続きを所望するか?」


「ずっと心に引っかかっていたんです」


「なるほど。最後の勝負。我をここに呼んだのは、お前の無念かもしれんな。良かろう……」


 ガーファリアも曲刀を鞘に納める。


 そして戦場は静かになった。

 元々音もなく、何もない空間だ。

 なのに、静寂がより深化していく。

 2人の周りだけ、空気が歪み、そこだけ強く重力の力が働いているような雰囲気があった。


 それは殺気、剣気、あるいは覇気であろうか。


 足の親指一本分……。

 ほんの指先だけの間合いの攻防戦が、この時すでに始まっていた。

 徐々に2人が近づいていく。

 刀身の長さに接近しても、2人は一向に抜剣しようとしなかった。


 ヴォルフは腰を下ろし、常に前を向いて向かって行く。

 一方でガーファリアはやや前傾姿勢のまま、まるで相手との間合いを計るように静かに瞼を閉じている。

 未だに2人の間合いに入らない。

 1ついえることは、どちらかの斬撃が先に相手の身体を傷付けることができれば、必倒は間違いないということである。


 観客がいれば、固唾を呑んで、両者の見えない攻防を見守っただろう。

 レミニアがいれば、間違いなくヴォルフに声援を送ったはずだ。


 しかし、今――この世紀の対決を見届けるものはいない。

 見守るのは、この勝負をどこかで見下ろしている神だけ。

 その勝敗もまさしく〝神のみぞ知る〟といったところだろう。


 お互い久方ぶりの立ち合い。

 その初撃には時間がかかるかと思ったが、そうでもなかった。


 最初に得物を引いたのは、ガーファリアだった。

 相手の呼吸を見切り、虚を突いたうまい先制攻撃。

 まさしく天才が成せる業だ。


 しかし、ヴォルフも負けてはいない。

 冒険者になったの15年。それから剣を振ることを欠かしたことはない。

 レミニアを預かったあとも、こっそり練習を続けていた。

 振った数だけなら、誰にも負けない自負がある。


 ましてエミリやクロエから伝授された抜刀術において、後れを取るわけにはいかなかった。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「はあああああああああああああああああああ!!」


 互いに裂帛の気合いが、神の座の前で散る。

 次の瞬間、爆発にも似た剣戟の音が何度も反響しながら、空間の奥の奥まで広がっていった。


「ぐっ!」


「ぬっ!」


 2人は同時に弾かれていた。

 ハッと次に見たのは、対戦相手ではない。

 己の得物たちだ。

 互いに刃こぼれすることなく、獣牙のような光を讃えている。


 ニッと笑ったのは、ヴォルフもガーファリアも同じだった。


(これで……)


(存分に戦えるな)


 弾かれたヴォルフは、ブレーキをかける。

 衝撃に抗うように前を踏み出すと、同じくガーファリアもまた地面を蹴った。

 まるでこの時を待っていたかのようだった。

 2人は再び空間の中央で、打ち合う。

 再び微震によって空間が揺らぐ。


 攻撃はそれだけで終わらない。

 上半身こそ仰け反ることとなったものの、互いに反動を利用して3撃目を落とす。

 これもまた引き分け。

 しかし、ここでガーファリアが動く。

 もう1度、上段に振り下ろすかと見せかけて、ヴォルフのサイドに回った。


 放ったのは突きだ。


 上半身の弓なりに沿いながら、まるで弩弓から飛び出した矢のように突きを繰り出す。


 その攻撃に対し、ヴォルフの対応は少し遅かった。

 致命傷こそなかったが、顎の下を切る。

 身体を捻っていなければ、喉元を切られていたかもしれない。


 ヴォルフのこの遅い対応にも、意味はあった。

 突きで少し前のめりになったガーファリアの顔を目がけて切り上げる。

 その攻撃を読んでいたのだろう。

 首を少し強引に動かしながら、ガーファリアは躱す。

 それだけに留まらない。そのままヴォルフに身体を預けるようにタックルする。

 易々とヴォルフに馬乗りになると、切っ先を顔に向けて下ろした。


 当然、ヴォルフは黙って見ていたわけではない。


 1度刀から手を離すと、刀身を両の手で挟む。

 所謂、白羽取りだ。


「どうした、伝説……。随分とあっさり転ぶではないか?」


「陛下、残念ながら勝負はまだついていませんよ」


 この時、ガーファリアは刃を下ろすことに集中していた。

 その機をヴォルフは見逃さない。

 ガーファリアの腰に足を入れると、そのまま腹を蹴った。

 巴投げされるが、その膂力は半端がない。

 ふわりと宙を浮く。しばしの滞空時間があって、ガーファリアは何事もなかったように着地した。


 何事もあったのは、その後だ。


【カグヅチ】を握ったヴォルフが、ガーファリアとの距離を詰める。

 それは長いようで、ほんの刹那の時間であった。

 ガーファリアが着地した瞬間を狙って、ヴォルフは躊躇わず剣を振る。

 ほんの一瞬のタイミングを狙って、ガーファリアは腰を引いたが、遅い。


 次の瞬間、ガーファリアの鼻梁から血が溢れた。


「ふふ……。刀で斬られたのはいつだったかな?」


 満足げにガーファリアが笑う一方、ヴォルフはあることに気づく。

 顎への突きで切った傷口が塞がっていなかったのだ。

 つまり娘レミニアがかけた【時限回復(リルミット・ヒール)】が効いてなかったのである。


「ここは神の領分だからな。お前の娘の力は届くまい」


「なるほど」


「心細いか。娘の力がなくて」


「ええ……。少し」


「正直だな」


「俺にとって強化魔法は、単純な強化ではなく、遠い場所で生活する娘を感じるためのものですから。…………でも、ちゃんと聞こえてますから」


 ヴォルフは耳をそばだてる。

 そう。聞こえる。レミニアの声が……。


『パパ、頑張って』


 その熱い応援が……。

 それだけでない。

 出会った仲間や、友人たちの声が聞こえる。



 がんばれ、ヴォルフ!



 冒険者時代、ずっと何か1人でもがきながら戦っていたような感覚があった。

 それは友人に囲まれていた時でもあってもだ。


 でも、今なら聞こえる。


 昔からずっと聞こえていた激励の言葉が……。

 はっきりと……!


「陛下、この勝負勝たせてもらいます」


「ふん……」


 ガーファリアは鼻を鳴らす。

 伏せた顔に、笑みが浮かんでいた。


「やっと英雄らしい顔になってきたではないか」


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