表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

363/374

第338話 Last Battle

☆★☆★ 明日姉妹作品 発売日 ☆★☆★


明日『アラフォー冒険者、伝説となる』の姉妹作品、

『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』の発売日になります。

すでに書店に並んでる可能性もありますので、お見かけの際にはよろしくお願いします。


YouTubeではボイスコミックも配信中です。

詳しくは活動報告の方に掲載されておりますので、よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 ハッとヴォルフは目を覚ました。

 自分が何故寝ていたのか。そんな疑問の余地すらなく、己の視界に映り込んだ世界に驚く。


 それは荒涼とした世界でも、破壊された世界でも、あるいは新世界を予感させる光景が広がっていた――わけではなかった。


 ヴォルフの前にあったのは、ひたすら真っ白な世界だった。後ろを見ても、右を見ても、左を見て、天を仰いでも白。硬い石のような感触は感じるのに、立っている場所もまた真っ白だった。


「こ、ここは?」


「起きたか、伝説(ヽヽ)


 聞き覚えのある声に、ヴォルフは息を呑んだ。振り返ると、1人の男が胡座を掻いて座っていた。特徴的な黄金色の髪を見た時、ヴォルフは声を震わせる。


「ガー……ファリ……ア……殿下?」


「久しいな、伝説」


 バロシュトラス魔法帝国皇帝にして、【大英雄(パラディン)】の異名を持つ名君。その力はSSクラスであり、唯一【大勇者(レジェンド)】レミニアと対等に戦えるといわれた男だった。


「しかし、あなたは……」


「死んだか。……ああ。してやられた。まさか自分の秘書に首をかかれるとはな。何か裏がある女であることは知っていた。故に手元に置いていたのだが、少々見くびっておったわ」


「……」


「いや、お前の質問に答えていないな。その通り、余は死んだ。だが、またお前の前にこうして立っている」


「ここはどこですか、陛下?」


「まだ余を陛下と呼ぶか。律儀だな、お前は。あの時、余が勝っておれば、あの世界で余こそがハッサルである、神になっていたかもしれないというのに」


「あの……」


「ああ。すまぬ。またお前の質問に答えていなかったな。答えは知らぬだ。余も気が付けばここに立っていて、そして目の前に伝説――――お前がいた」


 どうやらガーファリアもここがどこかわからぬらしい。しかも、己が何故生きているのかすら理解できていないようだ。


 ヴォルフはもう1度周りを見渡すも、何も変化はない。ただただ真っ白な空間が永遠と続くだけだ。見ているだけで気が狂いそうになる。


 1つ理解できることがあるとすれば、地獄でも天国でもないことだった。


「ただ余が何をすればいいのかは理解している」


 そう言って、ガーファリアは突然腰に佩いていた刀を抜く。ヴォルフは驚く。皇帝陛下が刀を抜いたことよりも、いつの間にか腰に刀を下げていたのかわからなかったからだ。


(最初見た時、武器を持っていなかったはずだが……)


 頭の中で己に確認するように呟くも、どうしてそうなったのかわからない。一方、戸惑うヴォルフを見て、ガーファリアは愉快げに笑い、言葉を続けた。


「立ち合え、伝説」


「え? どういうことですか?」


「そなたの娘――【大勇者(レジェンド)】がしでかしたことは知っている」


「しでかしたこと? ストラバールとエミルディアの融合のことですか?」


「それよ。……世界を作り替える。随分と大それたことをしたものだ。顛末を見届けることができなくて、実に残念だ」


 反応を見て、ヴォルフはガーファリア本人であることを確信した。深く知っているわけではないが、今の言い方は尊大でありながら童子のような心を身に帯びている皇帝陛下っぽい反応だったからである。


「だが、世界を作り替える。それはもはや神の所行だ。故に神は怒っている。所詮神に命を作られたもの程度が、神と同じ所行をなすとは何事か、と」


「お待ち下さい、ガーファリア殿下。レミニアの柔軟な発想がなければ、ストラバールもエミルディアも」


「知っていると言った。だが、神は怒っている。故に余を差し向けた」


「何故、ガーファリア」


「簡単だ。これは試練(テスト)だ、伝説。そなたら、この神の所行を行って良いものか。余はその試験役と呼ばれたに過ぎぬ」


 はっきり言って、ヴォルフは展開についていけていなかった。何故、人が生きるために試練を受けなければならないのか。何故、ガーファリアと立ち合わなければならぬのか。まるで理解できていなかった。


 ただガーファリアが嘘をついていないことはわかっていた。


「傲慢ですね」


「余か。それとも神か?」


「どっちも……。いえ。神様の方でしょうか?」


「気を遣うな、伝説。余は怜悧にして、明晰である。故に余のことは誰よりも知っている」


「傲慢であることがですか?」


「その通りだ。だからこそ、余がこの試練を請け負う代わりに、余の願いを聞き届けてほしい、と。即ち――――」



 余を神にしろ、と……。



 ヴォルフは息を呑む。


 それはガダルフが、そしてハッサルが望んできたことだったからだ。

 ガダルフは世界を壊すために唯一神になろうとした。ハッサルは己の力を証明するために神になろうとした。


 そして、またここに――いや、ヴォルフの前に神になろうとしている者がいる。


「神はあなたになんと答えたのですか?」


「ふん。勝ったら考えてやると抜かしおった。傲慢の極みのような存在だな。ヤツらの駒となって生きているのが馬鹿らしく思えるわ」


 ヴォルフはまったく同感だった。


「ちなみに俺が勝てば、エミルディア……いや、みんなはどうなりますか?」


「知らぬ。だが、勝者にふさわしい対価が払えなければ、余に言うがいい。その時は一緒になって、神とやらに叛逆しようではないか」


「はは……」


 ヴォルフは思わず笑った。

 訳のわからない状況でも、今目の前にいるのは、ガーファリア陛下で間違いないことを確認できたからだ。


(それ故、やりにくい……。でも――――)


 ヴォルフは腰に手を伸ばす。

 スルスルと抜き身の獰猛な刃が白い世界で光る。

 それを見て、ガーファリアは笑った。


「そうだ。ヴォルフよ。そうこなくては面白くない」


「あなたとの決着がまだでしたから」


「ああ。そうだ」


「俺が言うのもなんですが、強くなりましたよ」


「知っている。故に楽しみだ」



 こい、【剣狼(ソード・ヴォルバリア)】……。その牙に己のすべてをかけるがよい!!




☆★☆★ 3月刊 ☆★☆★


3月18日発売!! 異世界魔獣料理!!

「公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~」第6巻


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


好評発売中!Webから大幅に改稿しました。
↓※タイトルをクリックすると、アース・スター ルナの公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




アラフォー冒険者、伝説になる 書籍版も好評発売中!
シリーズ最クライマックス【伝説】vs【勇者】の詳細はこちらをクリック


DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
パパ、まだ戦うん?すげぇな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ