表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

361/374

第336話 決着と滅びの時間

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


BookLiveにて最新話が更新されております。

毎度いいますが、激熱展開なので是非読んでくださいね。


また5月15日には最新9巻が発売されます。

後ほど詳報を発表させていただきますので、お買い上げよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)


 ストラバール全域に放たれた光は、大地を走り、一瞬にして一点に集約されていく。その点にいたのは、1人の冒険者で、1人の英雄で、娘にとっては勇者であった。


「おおおおおおおおおおおお!!」


 中心にいたヴォルフは吠える。

 狼のように雄々しく、猛々しく。

 ハッサルから離れた9つの魔法でできた収束砲を徐々に押し返していく。


 そこに7人の乙女たちの声が重なった。



 うおおおおおおおおおおおおおお!!!!



 大地の咆哮を思わせる叫びと力は確実に英雄の手を通して、発揮される。ストラバールを破壊しかねなかった九尾の狐の力は、ついに放たれ、そして元にあった場所へと返された。


 黄金に染まった九尾狐の毛が白銀に覆われる。大口を開いた表情は、そのまま白の波に呑まれていき、轟音とともに光に包まれていった。


「ぎゃああああああああああああああ!!」


 空中で大爆発が起こる。

 その爆風は暴れていた大気をさらにかき混ぜ、地面を大きく震動させた。


「やったか……」


 ヴォルフは膝に手をつきながら、息を整える。すべての力をヴォルフの手にのせた乙女たちも、腰砕けになり、その場で尻餅をついた。


 皆が見上げたのは、空にできた巨大な爆煙だ。すると、煙から何かが落ちてくる。黒い影はそれ自体大きいものだったが、意外と軽い音を立てて、地面に墜落した。


 見えたのは黒く煤けた肌と、若干残った黄金色の毛。鋭い牙が生える口と、この世のすべてを憎んだかのような瞳だった。


「ハッサル……さん……」


 ヴォルフたちの前に現れたのは、もはや顔と首の一部だけになった痛々しい九尾狐の姿であった。


 しばしヴォルフとハッサルの両者は睨み合っていたが、突然後者が苦しみ出す。何度か嘔吐いた後、ハッサルは吐き出した。現れたのは、黄金色に輝く水晶――完成系賢者の石(エクサリー)だ。


「これは返してもらうわよ」


 レミニアはたった今、ハッサルの口から吐き出された賢者の石(エクサリー)を、ハンカチで掴む。


 その行動をハッサルは忌々しげに見つめているだけだった。


「そんな顔をしてもダメよ、ハッサル。あなたの負け。あなたは待ちすぎたわ。わたしや、パパがいない世界だったら、あなたはちゃんと…………」



 魔王になれたはずなのに……。



「ふふ……。アハハハハハハハハハ!!」


 ハッサルは笑う。

 全身はボロボロというよりは、すでになく、もはやどうやって生きているかすらわからない。その生存能力に脱帽を禁じ得ないが、今笑っている九尾狐には確かな余裕があった。


 ハッサルはレミニアを、いやその場にいるすべての生きとし生けるもの、あるいは世界そのものを憎むかのように強く睨みつけた。


「確かに……。私は負けたわ。でも。自分のやりたかったことは達成できた」


 ハッサルの首はごろりとその場で転がり、空を見つめる。すべてが真っ暗になった空には、荒廃した大地が広がっていた。生命の息吹はなく、まるで世界そのものが白骨化したかのようにすら映る。


「確かに私は魔王にはなれなかった。自分の意のままにできる世界は作れなかった。それは認める。だが、お前たちも同様だ。ヴォルフ・ミッドレス……。お前も世界を救えなかった」


 ハッサルは空を見ながら満足そうに、しかし薄暗く笑みを浮かべる。


「英雄だと? 違うな。ヴォルフ・ミッドレス。お前は英雄などではないよ。結局、お前がやりたかったことは叶わなかった。やはりお前は偽りの英雄。……悲劇の中でしか躍ることしか許されぬ村人なのよ」


 そしてハッサルの哄笑が高く高く響く。


 ハッサルがいったことは単なる事実だった。ハッサルはこれまで悪あがきをしていたわけではない。確実にストラバールを滅ぼすために、己に注意を向けていた。すべてはこの世界を破壊するため、自分好みの、自分のわがままを押し通すために……。


「これでいいのよ。私が輝けない世界なんて滅んじゃえばいい」


「滅ばないわ」


 力強くハッサルの言葉を否定したのは、レミニアだった。


「世界は……、ストラバールはまだ救える」


 レミニアは先ほどハッサルから回収した賢者の石(エクサリー)を見つめる。【大勇者(レジェンド)】の言葉に、他の者たちは懐疑的だった。ヴォルフが育んだ賢者の石(エクサリー)は確かに戦力になるだろう。だが、今ストラバールに降りかかろうとしているのは、大地の形をした愚者の石(アンチ・エクサリー)……。その力がどちらが強いかは、子どもでもわかる。


「強がりね、【大勇者(レジェンド)】」


「そう。わたしは【大勇者】。皆からそう認められたからには、勇者として恥じない活躍をしないとね」


 レミニアは片手に賢者の石(エクサリー)を持ちながら、呪文を唱える。その瞬間、彼女の周りに魔法陣が広がった。単なる魔法陣ではない。それは地平線の彼方まで広がるような大規模な魔法陣だった。


「これは……!」


「いつの間にでござるか?」


 エミリの疑問に答えるならば、ヴォルフがハッサルと戦っている時だ。いや、そもそもレミニアたちは賢者の石(エクサリー)を大量に作って、エミルディアを弾き返そうとしていた。その時の魔法陣を書き換えたのだ。わずかな時間で……。


「何をする気だ、レミニア・ミッドレス」


「わからないわよね。それがあなたの【千里眼(サザンド・ジェル)】の限界。あなたは自分が理解できないものを、予測できない。その未来を視ることができない。パパや、わたしの力、ルネットの読みの力を超えることはできない」


「ぐっ……」


「特別に教えてあげる、ハッサル。まさに天才レミニア・ミッドレスちゃんならではの発想よ。ママの二重世界論ダブル・ワールド・シナリオにも書かれていないことよ」


「教えろ、【大勇者(レジェンド)】。貴様、何をするつもりだ」


「興奮しないでよ。単に賢者の石(エクサリー)を反転させるだけ。そう……」



 愚者の石(アンチ・エクサリー)を作るだけよ。


☆★☆★ 3月刊 ☆★☆★


3月12日発売!! 異世界で鍛冶のスローライフ!

「おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました」第3巻


3月18日発売!! 異世界魔獣料理!!

「公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~」第6巻


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス10巻 11月14日発売!
90万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



シリーズ大重版中! 第7巻が10月20日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本7巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


好評発売中!Webから大幅に改稿しました。
↓※タイトルをクリックすると、アース・スター ルナの公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




アラフォー冒険者、伝説になる 書籍版も好評発売中!
シリーズ最クライマックス【伝説】vs【勇者】の詳細はこちらをクリック


DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ