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第320話 大勇者の決断(前編)

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日、BookLiveにて最新話が更新されました。

ついにラムニラ教編が決着です。素晴らしい引きなので、是非読んでほしい!


挿絵(By みてみん)

 考えがある。


 そう言ったヴォルフはおもむろに上着を脱いだ。

 鍛え、いじめ抜いた見事な身体が露わになる。その真ん中で力強く光っていたのは、黄金色の宝石だった。かつてレミニアが父を助けるために埋め込み、ヴォルフとともに成長した賢者の石(エクサリー)である。


 見事に輝く石を見て、ハシリーは息を呑む。

 その美しさもそうだが、放たれる魔力はガダルフが作った愚者の石(アンチ・エクサリー)とは比べものにならない。1番驚くべきは、そんな膨大な魔力を制御できているヴォルフだろう。常人であれば、今ごろ消し飛んでいるはずだ。


「なるほど。一体、どうやってあのガダルフを倒したのかと思っていましたが、その賢者の石(エクサリー)があったからですか?」


「違うわ。パパだからよ。この石はパパと一緒に成長したの」


「成長? もしかしてというか、やはりというか、これもあなたの仕込みですか、レミニア?」


「仕込みというよりは、偶然の産物かしら。わたしが気づいた時には、すでにパパの身体に定着してしまっていたから」


「まさか、そのために強化魔法を?」


「それもあるけど……。パパが心配だったからよ」


 ハシリーは頭を抱える。背後で研究員の1人がポンと肩を叩いた。


「それでヴォルフさん、考えというのはやはり……」


「ああ。俺に定着した賢者の石(エクサリー)を使うことはできないかな?」


 賢者の石(エクサリー)の完成体。

 その出力は愚者の石(アンチ・エクサリー)を超えることは、ガダルフとの一戦で証明されたばかりだ。何よりレミニアの産みの親が、ストラバールに危機が起こった時に考案したアイテムでもある。今使わずして、いつ使おうかというタイミングだった。


 まず興味を示したのは、他の研究員たちだ。ヴォルフの周りに集まると、興味津々とばかりに胸についた賢者の石(エクサリー)を観察する。


「これはすごい」

「この出力……。まさに悪魔の所業(ヽヽヽヽヽ)だね」

「確かにこの力があれば、星を……」

「エミルディアを跳ね返す力があるかもしれない」


 概ね好意的な意見が多い。

 1人が鑑定魔法を使うと、その出力を分析した。


「ふむ。問題なさそうだね。完成体の賢者の石(エクサリー)のフルパワーで解放すれば、エミルディアの引き寄せる力を相殺し、さらに遠くへ追いやることができるかもしれない」


「じゃあ、早速……」


「最後まで聞いてほしい、上司のお父様。エミルディアを跳ね返すほどの力を賢者の石(エクサリー)から引き出したとすれば、間違いなくあなたの身体は消滅するでしょう」


 ヴォルフはハッとしたが、他の研究員たちも同様の反応だった。


「確かに賢者の石(エクサリー)はあなたの身体に定着している」

「だが、本来の力を引き出せていない」

賢者の石(エクサリー)はあくまで無機物。その限界値は我々と比べものにならない」

「如何に父上殿の身体が頑丈でも難しいと思われまする」


 横でヴォルフと同じく話を聞いていたハシリーは息を呑む。顔は真っ青になり、唇は震えていたが、質問せずにはいられなかった。


「それってつまり、賢者の石(エクサリー)の力を解放すれば、ヴォルフさんは死ぬということですか?」


 研究員たちは何も言わない。ただ黙って、頷いた。

 ハシリーは頽れる。


「ヴォルフさんから賢者の石を取り出せないのでしょうか?」


「無理かと……。賢者の石(エクサリー)はもはや上司の父上の一部となっています。取り除けば、何が起きるか」

「そもそも賢者の石そのものが、技術的に新しい」

「まして人の肉体の中で育ったもの……。安易に取り出すのは危険かと」


 ショックを受けるハシリーだったが、それでも研究員たちの分析は冷静だった。


「そんな……。ヴォルフさんはガダルフを倒し、世界を救ってくれた恩人です。それだけじゃない。レクセニル王国、ワヒト、バロシュトラスを救った英雄なんです……。今度は世界を救うために死ねなんて……、残酷すぎますよ」


「しかし、現状において1番ベターな方法です」

「というか、この方法以外に考えられない」

「苦しいのは我々も同じ……」

「ストラバールの生きとし生けるものを救うためには、この方法以外にない」


 研究員たちはキッパリと言い切る。

 ここまではっきりしているのは、根っこの部分では彼らが悪魔だからだろう。

 ハシリーは口揃えて、ヴォルフを人身御供とせよという研究員たちを睨んだが、決して手は出さなかった。ハシリー自身も頭の片隅ではわかっているのだ。その方法が最適であることを。


 そんなハシリーの肩を、ヴォルフは軽く叩く。

 その瞳は湖面のように澄んでいた


「ハシリー、ありがとう」


「ヴォルフさん」


「俺がいうのもなんだが、嬉しいんだ。このどうしようもない状況で、世界を救う方法がある。娘がいる世界を救える方法があるというだけで、俺は満足だよ」


「でも、あまりに無体ですよ。こんなの……。せっかく、やっと、やっとあなたたち親子が静かに暮らせるかもしれないのに」


 ハシリーはとうとう泣き出してしまった。


「何を泣いているのよ、ハシリー」


「だ、だって……。レミニアはそれでいいんですか?」



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挿絵(By みてみん)

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