第317話 新たなる危機
☆★☆★ 本日発売 ☆★☆★
おかげさまで本日、無事発売日を迎えることができました。
同レーベル、同日発売という栄誉を賜り、本当に有り難く思っております。
「アラフォー冒険者、伝説になる」単行本7巻、
「おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました」1巻を、
それぞれよろしくお願いします。
※ リンクを後書きの下部に作りました!
「ヴォルフ殿!」
最初に気づいたのはルネットだった。
リヴァラスの頂上から降りてきたヴォルフを見て、駆け寄る。
続いて、クロエ、ヒナミ、アンリ、イーニャ、ブラン、最後にルーファスがレクセニルから避難してきた住民とともに集まってきた。
真っ先に飛びついてきたのは、イーニャだ。
「師匠!! 師匠!!」
最近ではすっかりチームのリーダーが板についてきたイーニャだったが、無事降りてきたヴォルフを見て、泣きじゃくる。ヴォルフの目から見ても、イーニャは逞しく育ったが、やはり本質のところでは変わらないらしい。昔、孤児院で再会した時のことを思い出しながら、ヴォルフはイーニャの頭を撫でた。
「泣くなよ、イーニャ」
「だってよ。あたいは、あたいは……」
「全くお前は大きくなっても、変わらないなあ」
「大きさは変わらないけどね」
ルネットが茶化すと、ドッと笑い声が響く。
そのヴォルフの背には相棒と、リヴァアスの巫女コノリの姿があった。
魔法に詳しいアンリが回復魔法をかける。
「どちらも大丈夫です。力を使い切って、眠っているのかと」
「そうか。ありがとうな、アンリ」
「いえ。ヴォルフ殿もよく戻られた。さすが私が見込んだ婚約者だ」
「ちょ! 聞き捨てならぬぞ、アンリ殿。ヴォ、ヴォ、ヴォルフ殿は拙者と」
顔を真っ赤にしながら、怒りを露わにしたのはエミリだ。
こちらも無事なことに、クロエをはじめ女性陣はホッと胸を撫で下ろしたところだった。
「最初にヴォルフ殿に目をかけたのは私だぞ、エミリ。そう言わなかったか?」
「で、でも、今は――――」
「今はな」
「英雄、色を好むというからな。ヴォルフ殿、エミリが飽きたら私に」
「何を言っているでござるか! そ、そんなはしたない!!」
ぬぬぬ、とエミリとアンリの睨み合いが始まる。
その諍いを見て、クスリと笑ったのは、クロエだ。
「うぶいなあ、ホンマ。羨ましい限りやわ。エミリはん、そんなに心配ならもう1発抜いたったらええんちゃう?」
「もう1発って……! ちょちょちょちょ! クロエ殿、そなた何を?!」
「ナニをって……。なんや説明せなあかんのか? つまりヴォルフはんのナニを……」
クロエが昔住んでいたところは、犯罪者の掃き溜めみたいな場所だった。
側には大きな妓楼があって、この手の話題には事欠かない。
他のものよりも、性に奔放な彼女らしい言葉だった。
「わあー! わあー! やめるでござるよ、子どももいるのに」
「なんだ。ヒナミのことを言っておるのか? バカにするな! で? クロエ、ナニとはなんだ?」
「女王はん、実は男にはもう1本刀があってやな」
「ヒナミ様に何を吹き込んでいるでござるか!!」
「だから、ナニの話やないか」
話は堂々巡りし、次第に笑いに包まれる。
それをヴォルフは少し離れた位置で聞いていると、ルーファスが近づいてきた。
「やったのか?」
「まあな……」
「相変わらずだな」
「何がだ?」
「オレに勝った時も、そんな顔をしていた。たまには勝利者らしい顔をしろ。敗北者に気を遣わせる方が不愉快だ」
「確かに……。でも、結局ガダルフを救えなかったと思うとな」
「それは傲慢というものだろう。救われたのか、そうでないか、結局本人の気の持ちようだ次第だ」
ヴォルフは笑った。
「何がおかしい」
「まさかお前に慰められるとはな」
「それだけ、今のお前が弱いということだ。胸を張れとは言わん。せめて背筋を伸ばせ。オレにも、お前にもまだやることがある」
ヴォルフとルーファスは同時に空を見上げた。
すでにエミルディアはすぐそこまで迫っている。
「はいはい。喜劇パートはそこまでよ」
仕切り役のルネットが喧しい女性陣たちに割って入る。
現状について、話を始めた。
「レクセニルに攻めてきた敵軍は大方去ったわ。というか、半数以上がなりそこないになっちゃって、もはや戦争どころじゃなかったけどね」
「なりそこないは?」
ヴォルフが質問する。
「大方消滅したわ。ガダルフが死んだことも一因としてあるでしょうね。多分、これ以上事態が悪くなることはないと思う」
「と言っても、十分今起こってる事態はヤバいけどな」
イーニャは涙を拭いながら、迫ってきているエミルディアを仰いだ。
「ルネットさん、レミニアはどこへ行ったかわからないですか?」
「姿は見てないわ。でも、私の推察が正しければ、おそらく自分の研究室に戻ったんじゃないかしら。今、頼れるのは彼女が作ったという疑似・│賢者の石だから」
ルネットは「あくまで私の考察だけど」と前置きした上で、話を続けた。
「レミニアちゃんたちがここにきたのは、多分リファラス自体をもう1度│賢者の石に復活させようとしていたんじゃないかしら」
「だが、それもガダルフに阻まれた」
「ええ……。だから、もう……あとは擬似・│賢者の石にかけるしかない、と思う」
「わかりました。俺もそこに行きます」
「大丈夫なんですか? 激戦で疲れているのに」
「何の才能もなかった俺ですけど、身体だけは丈夫なんです。それにレミニアに伝えたいことがあるので。アンリ、ミケを頼めるか」
「引き受けました」
アンリは頷く。
「ヴォルフ、余も散り散りになった軍をまとめ次第、レクセニルの王宮へ戻る。逃げ遅れたものがまだいるかも知れぬからな」
「うちらはここで勇者はんらと住民の護衛や。1人で大丈夫やろか、ヴォルフはん?」
「ああ。みんなを頼む」
それだけ言い添えて、ヴォルフはレクセニル王国へと戻っていった。








