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第314話 破壊者の覚悟

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挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 ギィィィィィィィィィィイイイインンンンン!!!!


 一際強い剣戟の音が聖樹リファラスの上で鳴り響く。

 仕掛けたのはガダルフの方だ。歯を食いしばり、目に火花を散らしながらあらんかぎり力をヴォルフにぶつけた。そのヴォルフは押し込まれる。ガダルフと同じく渾身の力を込めたが、ついに吹き飛ばされた。すぐに立ち上がったものの、ガダルフに起きた変化に少し戸惑う。


(剣の質が変わった……)


 ガダルフの一撃は常に必殺の一振りだった。

 だが、今そこに更なる重さが加わった。

 ヴォルフは未だにガダルフに決定的な一打を与えていない。

 一方でヴォルフの言葉、あるいは問いはガダルフの心に届いているらしい。

 それはきっと本人すら気づいてないだろう。


「あるんだな、お前にも」


「何がだ?」


「ガダルフ、もう破壊者を気取るのはやめろ」


「さっきから何を言っている?」


「世界を壊そうとする理由がある。憎む理由がある。……俺からすれば、いや誰がなんと言おうがお前は人間だよ」


「何もわかっていない」


 ガダルフは冷静にヴォルフを突き離した。


「お前は……、私が何かきっかけがあって、世界を破壊しようと思っているのだと思っているのだろう。それは違う」


 ガダルフは自分の胸に手を置く。

 その疼きを抑えるように。


「確かにきっかけはあった。だが、気づいたのだ?」


「何に?」


「今、私が成し遂げることが、私の生まれた意味だと」


「この世界を〝無〟にすることがだ」


 ガダルフは薄く笑みを浮かべて、頷く。


「私はずっと考えていた。自分が何者であるのか、と。自分が何者であろうとする者なのかすらわからなかった。だからこそ、羽が生えたあの日も、大人に混じって仕事をした時も、│彼女《ヽヽ》に出会った時ですら私は何の感慨も浮かばなかった」


 ヴォルフによって呼び起こされたその過去。ガダルフはどんどん己を曝け出し、ヴォルフ風に言えば人間らしくなっていく。それとともに、魔力は暴力的に膨れ上がっていった。本人の人間っぽいところが晒け出されようとしているのに、魔力は悪魔じみて、さらに膨れ上がり続ける。


 まるでガダルフの中にあった人間性を否定するように……。


「だが、あの時――――ラーウだったものがテーブルに並んだのを見て、私は、私の奥底で隠れていた何かを知った」


「それが破壊か……」


「私の身体が……、お前たちのいう心が……、叫んでいるのだ。壊せと。滅ぼせと……。その度に疼くのだ。この胸が!!」


 ガダルフは剣を振る。

 それは通常の斬撃ではない。

 言うなれば、光の線であった。

 ヴォルフはかろうじて躱す。当たれば、いかに鍛えた身体とて真っ二つになっていただろう。


 その時に至っては、ガダルフの姿形は変わり始めていた。

 己の中の│愚者のアンチ・エクサリーを全て解放し、血中に魔力を送る。

 血の中に魔力を送るのは禁じ手中の禁じ手だ。

 カラミティのような魔力に対する耐性が強い種族ならともかく、人族であれば簡単に姿が変質し、やがてその魂を奪う。それはあのなりそこないが生まれるメカニズムの1つであった。


 ガダルフも元は天上族であっても、血の中に魔力を送れば、変質は免れない。

 それが愚者の石(アンチ・エクサリー)がもつ魔力であれば、いかに天上族とて理性を保つのは難しい。翻せば、そうでもしなければヴォルフには勝てないとガダルフは踏んだのかもしれない。


 高純度な魔力が結晶と化して、ガダルフを包んでいく。

 巨人のような姿になっていく敵を見て、ヴォルフは思う。


「似ているな、ラムニラ教の時と……」


「マノルフのことか」


「お前も絡んでいるんだったな」


 マノルフ・リュンクベリ。若くして元ラムニラ教司祭長となった彼は、裏で魔獣を信奉するラーナール教団と繋がっていた。教団の教えを曲解した結果、人の命を弄ぶ狂信者となり、最期は当時未完成だった愚者の石(アンチ・エクサリー)に呑まれた末、ヴォルフに討たれた。


「今でも思うよ。あの時、もっといい方法があったんじゃないかって。話し合うこともできたんじゃないかと。マノルフだけのことじゃない。ルーファスやディアゴ、ベードキア、ゲマ、ガズ……。俺が斬ってきた奴ら、みんながそうだ」


「後悔しているのか?」


「俺の人生はいつもそうだ。後悔してばかりだ。それでも……」


 ヴォルフは【カグヅチ】を納刀し、腰を落とす。

 そして大きく1歩、前に足を出した。


「前に進んできた」


「後ろに娘がいるからか」


「……そうだな」


「貴様は本当に愚かだな」


「お前ほどじゃない。……もう止まらないんだな?」


「無論だ。元より私の本質がそうさせない」


 ガダルフの言葉に、ヴォルフは強い覚悟を感じた。

 マノルフが見せた狂信的な信心でもなければ、ルーファスのように強い憎悪でもない。ガズのような強い諦観でもなかった。


 多分、誰も信じないだろう。

 世界を壊すことに覚悟と信念をかけた者の存在など。

 いや、誰も認めないはずだ。


 そう……。

 これは世界を救おうとするものと、世界を壊そうとするものの戦い。

 そこに正義や悪はなく、どちらにも正義と悪があった。

 そういう戦いだった。


 ヴォルフは一つ息を吸う。

 吐くのではない。全てを飲み込み、アラフォー冒険者は再び剣を振るおうとしていた。


「何も特別なことはない。……いつものことだ」



 斬る――――ただそれだけだった。



 そう言った後、ヴォルフはさらに続けた。


「ガダルフ……。お前が止められないなら、俺が止める。誰でもない。お前のために」


 そして伝説の戦いは始まった。


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