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第294話 勇者との共同戦線

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日コミカライズ最新話更新されました!

今回から再び王都舞台にして、ヴォルフが活躍します。

BookLive!で配信されておりますので、是非よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


『にゃっ!』


 ミケはハッと瞼を開けた。

 一時、何故自分が目を瞑っていたわからず――と言うよりは、自分が何をしていたのか忘却していたミケは、ぼんやりと黒い空を眺める。

 3秒ほど呆然とした後、ご主人が戦っていることに気づいた。


(あっちは……)


 みるみると記憶が蘇ってくる。

 レミニアがハシリーに斬られそうになり、咄嗟に主人と一緒に庇ったまでは覚えている。そこからの記憶が曖昧だが、斬られた感触は今も身体に残っていた。完全に回復している今もだ。


 ミケは立ち上がり、振り返る。


 主人が東の方を向いて、あぐらをかいている。

 側には最愛の娘の姿はない。背中で泣いているような主人――ヴォルフの姿を見て、ミケは何が起こったのか大体理解した。


 『ご主人』と声をかけると、ヴォルフはこちらを向く。

 その表情はいつもの主人に見えたが、纏う空気にいつもの輝きがあまり見られなかった。


「気づいたのか、ミケ?」


『ご主人、すまねぇ。あっちがサポートできなかったばかりに、嬢ちゃんは』


「お前のせいじゃない。俺の慢心だ。あの時ハシリーを斬っていれば」


『あっちはご主人にハシリーを斬ってほしくなかった』


「ミケ……」


『あっちはご主人ほどレミニアの嬢ちゃんと長くいるわけじゃねぇ。でも、ご主人の娘だからなんとなくわかるにゃ。多分、レミニア嬢ちゃんもそれを望んでたんじゃにゃいか?』


「そうかもしれない……。だが、俺はレミニアとの約束を違えてしまった。レミニアを守れなかった」


 それまで普段通りだったヴォルフの表情が歪む。

 下を向き、握った拳に力を入れた。

 ミケは悲しそうに見つめる。ご主人の気持ちは痛いほどわかる。

 それはヴォルフが主人で、相棒だからじゃない。ミケもまた似たような経験してきたからだ。


 ミケもまた大事な人を失っていた。


ロカロ(じいさん)が死んだ時、あっちは悔しく悔しくて仕方なかった。自棄になって挙げ句、ミランダにまで突っ張って……。それでもロカロ(じいさん)は戻ってこにゃかった』


「…………」


『悔しい気持ちも、負けたという敗北感も、約束を破っちまった罪悪感もあっちはよく知ってる。でも、ご主人……。これだけはあっちは言える』



 レミニア嬢ちゃんは生きてる……!



 冷静に考えて、ハシリーの目的がレミニアの殺害だとすれば、とっくにヴォルフの娘は死んでいただろう。

 しかし、ハシリーはレミニアを殺さなかった。もっと言えば手負いのヴォルフやミケにトドメすら刺さなかった。それどころか、彼女は自分の行き先を告げて、ヴォルフの前から消えた。


『レミニア嬢ちゃんも、そしてハシリーも待ってるにゃ。ご主人を、【剣狼(ソード・ヴォルバリア)】と言われた男、ヴォルフ・ミッドレスを』


 ヴォルフはおもむろに腰に差していた【カグヅチ】を抜く。

 上段に構えた後、勢いよく振り下ろした。

 それとともに、裂帛の気合いを吐き出す。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


 斬撃の衝撃は風を切り裂き、声は地鳴りのように空気を震わせる。

 心に残っていたわだかまり。ミケが言った負の感情を裂くと、ヴォルフは再びミケの方に振り返った。


『やっといつものご主人にゃ』


「すま――――」


『謝らなくていいにゃ。嬢ちゃんを守れなかったのは、あっちも一緒だからにゃ』


「……ありがとう、相棒」


『感謝するのは、あっちの方にゃ』


 ミケは前肢を上げる。

 ヴォルフはそれを見て、自分の拳と重ねた。


「話は済んだか?」


 声をかけたのは、【勇者】ルーハスだ。

 こっちも手負いではあったが、ヴォルフが持っていた薬で回復している。


「ルーハス、大丈夫か?」


「問題ない。行くぞ、リヴァラスに」


「一緒に戦ってくれるのか?」


「リヴァラスにはルネットもいる」


「お前はルネットを……。俺はレミニアを、か」


「リヴァラスの周りには、人間の兵もいる。まずはその囲いを崩す。お前と、……俺でな」


「【勇者】との共闘か。そいつは心強い」


「勘違いするなよ、ロートル。いつぞやの借りはいつか返すつもりだ」


 ルーハスはギラリと鋭い眼差しを向ける。

 覇気ではない。それは本物の殺意であった。


『さっきまでグースカ眠っていたくせに、生意気な【勇者(ブレイブ)】にゃ』


「お前だけには言われたくないぞ、デブ猫」


『デ――――! あっち雷獣にゃ! ちなみにデブでもないにゃ!』


 獣人のルーハスと、ミケの掛け合いが続く。

 それを見て、ヴォルフはクスリと笑った。

 少し余裕が出てきたらしい。


「いいさ、ルーハス。この戦いが終わったら、もう1度やろう。今度は命のやりとりではなく、純粋な勝負として」


「よかろう」


 ヴォルフから差し出された手を、ルーハスは固く握る。

 共に東を向き、ワヒト王国で鍛え上げられた刀を鞘に収めた。

 気持ち良い鍔鳴りが、荒涼とした台地に響き渡るのだった。



◆◇◆◇◆



 ヴォルフたちが東へ向かった同時期。

 レミニアは目を覚ました。

 ミケと同じく一瞬呆然としたが、それまで起こった事態が脳に激流のように流れ込んでくると、「パパ!!」と悲鳴じみた声を上げた。


 だが、周りに最愛の父の姿はない。

 見えるのは鬱蒼としげった森。

 綺麗に透き通った底の浅い池。

 そして、巨大な1本の樹木だった。


「リヴァラス……」


 レミニアは息を飲む。

 調査で1度だけ訪れたことはあるが、何度も見てもその大きさに驚かされる。

 それはもはや樹木ではなく、山に近い大きさだった。

 露出した根が台形上に広がっているからか、よりその姿が山らしく見えた。


 聖樹リヴァラスの周りは神域。

 普段は野鳥や獣の声しか聞こえてこない静かな場所だ。

 今は違う。空は黒く汚され、遠くには火の手が見える。時々、火の粉が舞い降り、レミニアの赤い髪を照らしていた。

 何より聖域を侵していたのは、鬨の声だ。

 おそらく森の外だろうが、兵士たちの勇ましい声と剣戟の音が混じって聞こえてくる。


「目を覚ましましたか、レミニア」


「ハシリー……」


 聖樹リヴァラスが作った大きな影から、元秘書であるハシリー・ウォートが現れる。

 最愛の父を斬った女性。それだけじゃない。

 今、混沌とした状況を演出したのは、すべてハシリーの仕業だ。


「ハシリー、いい加減にしなさい」


「何をですか?」


「すべてよ。……この天才レミニアちゃんが、あなたの考えていることをわからないわけないでしょ?」


「何をわかっているのですか?」


「簡単よ……。あなたは――――」



 わたしの代わりになろうとしているんでしょ?

 

来月また新たなご連絡する事になるかもしれません。

お楽しみに!

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