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第281話 創世の宿業

☆★☆★ 最新巻書影 ☆★☆★


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミック5巻の書影が出ました。

原点回帰! ミッドレス親子の表紙となっております。

タッ公先生にまた素晴らしい表紙を描いていただきました!


さらにシリーズ累計が20万部突破しました。

ひとえにご購入いただき、シリーズを支えていただいている読者の皆様のおかげです。

引き続きご愛顧いただければ幸いです。


5巻の発売日は6月12日です! よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 ストラバールに残る天上族の生き残りたちは、カラミティの姿と、その戦力を見て、騒然とする。


 銀の髪に、黄金の色の輝きを持つ瞳。

 真っ白な肌はサテン生地のように薄く光っているようにすら見える。


 ストラバール由来の種族ではない。

 ましてエミルリアにいる羽なしや天上族とも違う。


 ただ1つ、それを見た天上族たちが同時に感じた見解は、どこか完成された美のようなものが、カラミティにあるということだった。


 その天上族たちをカラミティが一睨みする。


 反射的に天上族は仰け反ったが、すでにカラミティに斬られた後だった。

 ある種、人類の天敵とも言うべき天上族を、まるで雑兵でも撫でるかのように斬っていく。


 女子供合わせても、30はいただろう天上族は、気が付けば半数にまで減っていた。


 さらにカラミティの攻撃は続く。


 天上族はついに背を向けて逃げ出したが、カラミティは見逃さない。

 一瞬にして前へと回り込むと、骸骨の柄が付いた剣を薙いだ。


 ギィン!


 金属音のような甲高い音が、のどかな村の中で響き渡る。


 前に出でた人物の姿を見て、カラミティはようやくそれまでの蹂躙を止めた。


「ハッサル様……」


 尻餅を搗いた天上族が悲鳴とうめきとも取れるような声を上げて、自分の前に立ったハッサルを見上げている。


 そのハッサルの足元からは、大きな尻尾が出ていた。柔らかそうな毛が尻尾を振る度に動く。思わず触りたくなるような尻尾だが、先ほどのカラミティの攻撃を弾いたのは、その尻尾であった。


「その姿を見たのは、いつぶりかしら。1000年、あるいは2000年ぶり?」


「黙れ、ハッサル……。殺すぞ(ヽヽヽ)


「物騒ね、カラミティ。昔からだけど……。まさか元に戻れるとは知らなかったわ」


「黙れと言っている」


「あなたが孤独に耐えかねて、自分と血と骨を使って、遊び相手を作ったのはいつの時代だったかしら……」


「黙れ!!」


 カラミティは猛る。

 全力で振ると、次の瞬間防御したハッサルの尻尾を一刀両断していた。


 鋭く血が噴き出し、辺りが血の海になる。

 その血を浴びたカラミティは、己の手についたハッサルの血を舐め取った。

 凄惨な姿に、元天上族の顔は青くなる。


 一方、尻尾を斬られたハッサルの表情は笑顔であった。


「さすがに今の(ヽヽ)あなたでは、尻尾1本では対抗するのは難しいようね」


 真祖カラミティ……。


 本来何もなかったストラバールにおいて、彼女こそすべての始まりであった。


 遠い昔……。


 初めて天上族から放逐された天上族。

 それこそカラミティの正体である。


 彼女の姿はストラバール、エミルリア両世界で見ても、希有な姿と能力を持っている。

 その力はかの天上族ですら恐れさせた。


 故に天上族たちは、カラミティをストラバールに放逐した。


 いや、カラミティを放逐するためにストラバールを作ったと言ってもいい。


 それほど、彼女の存在は天上族にとって恐ろしかったのである。

 そして今それは証明された形となった。


「だが、そんな強いあなたでもどうしても勝てない敵がいた。それこそが孤独。何もない真っ新な大地はあなたにはあまりに退屈すぎた。それは魂すら萎えて、生きることをやめることを決断させるほどに……。だから、あなたは1つの決断を下したわ」


 生命を作ること……。

 巨大な力を持つカラミティならできることだ。


 カラミティは自分の血と骨を捧げ、孤独を忘れ、自分が何者であったかすら忘れた。


 間違いなく、カラミティこそがストラバールという世界を創り上げたと言っていい。


「ヴォルフさんが聞けば、ビックリしたでしょう。【不死の中の不死(ブラッディ・ブラッド)】と呼ばれる破壊者が、まさか世界の創世者だったのですから」


 カラミティの力に対して、エミルリアにいる天上族も指を咥えて見ていたわけではない。

 むしろカラミティのような存在が再び現れても対抗できるように、力を備えることにした。


「それが賢者の石(エクサリー)……。世界の均衡を守る力。……そして、天上族がやったことはそれだけに留まらない」


 カラミティの力を使い、平和で調和が取れた世界の中で、異物が現れた。天上族がどんどんストラバールに、異端者を送り込んだ。


「その1人が神狐(しんこ)の私というわけですね」


「どうした、ハッサル。昔話をするほど、お互いまだ老け込んではおるまい」


「失礼ね、カラミティ。それとも昔の力と記憶を取り戻し、気持ちが大きくなっているのかしら……。忘れないで欲しいわね」



 神狐(しんこ)ハッサルの恐ろしさ……。



 ふわりとハッサルの背後に現れたのは、巨大な8尾の尻尾であった。


「あら……。そういえば、1つなくしたのだったわ」


 そういうと、ハッサルは近くにいた天上族へと振り返る。

 口元に薄く笑みを浮かべながら、天上族に近づく。ただならぬ予感を感じて、その天上族は後ろに下がった。


「は、ハッサル……。お前、何を……」


「大丈夫。落ち着いて。怖くないわ。ただ――――」



 私の血肉になるだけよ。幸せでしょ?



 そしてハッサルは命を貪る。

 エミルリアでは羽なしと呼ばれた種族たちが、天上族が放った魔獣の餌になっていた。それを天上族も羽なしもなんとも思わないことにヴォルフは、憤りすら覚えていた。


 今、その天上族が捕食されている。


 およそ食物を食べるような音ではない。

 あまりに凄惨な光景であったが、カラミティは目を逸らさず見ていた。


 ハッサルの食事はたった1体の元天上族では済まない。再び逃げようとする天上族の前に出ると、ハッサルはその首筋に噛み付く。暴力的に貪る様は、カラミティを彷彿とさせる。一気に血を啜り、骨をしゃぶると、命を吸い尽くした。


 真っ赤になった口元を拭いながら、ハッサルは振り返る。


 その表情はもう穏やかな秘書官ではない。

 すでに半妖と化し、目の吊り上がった狐の姿をしていた。


 やがて着ていたローブが弾け飛ぶ。


「おおおおおおおおおお!!」


 身体が膨らんでいくと同時に、黄金色に光る毛を揺らしながら、1匹の九尾狐がカラミティの前に現れた。


 立っているだけで、圧力を感じる。


 木葉が震え、空気すら微震していた。


 それでも、カラミティは剣を向けたまま背筋を伸ばし、宿敵を睨め付けている。


「来い……。ハッサルよ」



 創世よりの宿業……、ここで決着を着けよう。


本日、拙作原作『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる』がニコニコ漫画で最新話が更新されました。

もうサムネから笑ってしまう仕様になってますので、とりあえず読むか読まないかはサムネを見てから決めてください。


『アラフォー冒険者、伝説になる』5巻もよろしくお願いします。

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