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第278話 それは太古の話

☆★☆★ コミカライズ更新 ☆★☆★


本日BookLive様にてコミカライズが更新されました。

騎士団競技会、開戦!! 当初余裕だと思われていた大会に、意外な強者が現れ……。

バトルシーンは激アツなので、是非読んでほしいです!!


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

 カラミティとハッサルには1つ接点がある。

 500年前、まだ不死と呼ばれる吸血鬼の真祖カラミティが人々に恐れられていた時代だ。


 1人の聖女が現れ、カラミティの横暴を止めた。


 それがハッサル――カラミティが〝神狐(しんこ)〟と呼ぶ彼女である。


 この後も、カラミティが眠るまで2人の争いはしばらく続く。

 言ってみれば、2人はライバルだったのだ。


「ところで、その目はどうした?」


「ガダルフに抉られました。ご心配なく、ちゃんと第三の目であなたを見ております」


「心配などしておらん」


「随分とご立派になったご様子……。王様然としていて、感心しました。昔、もっと荒れていらっしゃったのに」


 ハッサルは口角を緩める。

 対するカラミティは眉間に皺を寄せた。


「ふん。いきなり出てきて何用だ。女狐」


「まあ、懐かしい。私を指差して、女狐なんて……。もはやこの世であなたしかいませんよ、カラミティ。これでも三賢者の優しい方と通っているのですが」


「三賢者か。ラームは立派だったが……。ならば、貴様は何をしていた、神狐(しんこ)。草葉の陰で震えていたなどと申さぬよな」


「バロシュトラス魔法帝国……。その王の秘書をしておりました」


「あの【大英雄(パラディン)】――ガーファリアの秘書だと。……だったら尚更ではないか。ガーファリアはレクセニル王国へと入った。何故、こんな辺境にいる」


「あなたを説得しにです。もちろん、昔の誼で」


「相変わらずふざけた、女狐だ。殺してやろうか?」


「最初からその気でしょうに、あなたは。私の能力【千里眼(サザンド・ジェル)】を使わなくてもわかります」


 真剣なカラミティに対して、ハッサルは戯けるような態度を続ける。

不死の中の不死(ブラッディ・ブラッド)】を出玉にとるようなハッサルの態度を、ヴォルフが見ればさぞ驚いただろう。


「説得というのは本気ですよ、カラミティ。我々はね。一緒だったのです。最初から」


「一緒……? まさかお前も……」


「そう。かつて天上を追われた者です。といっても、あなたより数倍年上ですが……」


 ハッサルは豊かなといってもいい大きな尻尾をくるりと翻し、耳をピクピクと動かした。


 天上族とは似ても似つかない。

 今でいう獣人の姿である。

 どう見ても、天上族と神狐(しんこ)が結び付かないのは、無理もなかった。


「私がこのストラバールにやってきたのは、5000年以上前です。まだ人族という単一の種族と、魔力を持たない獣しかいない世界だったいにしえの時代……。天上族の姿とは似ても似つかぬ姿でしたからねぇ。すぐにここに放逐されました。ただ私を見つけて、保護してくれた人族は非常に親身な方で、ひとまず死なずに済みましたが」


 カラミティが吸血鬼の真祖であるならば、神狐(しんこ)は獣人の始祖であった。

 彼女が人族と子どもをもうけることによって、様々な獣人が生まれていったのだ。

 獣人が人よりも力が強いのは、天上族の力の名残だったと説明する。


 そこまで話して、神狐(しんこ)は微笑む。


「ここまで聞いて、何か疑問に思わないのはカラミティ陛下があまり天上族のことをご存じないからなのでしょうね?」


「どういうことだ?」


 これはヴォルフは知るところではあるが、元々ストラバールは天上族の流刑地だった。

 ストラバールはエミルリアよりも遥かに魔力量が少ない。

 魔法技術こそ存在したが、天上族が生きるにはあまりに過酷な環境だったのである。


 基本的に不死の天上族も、100年生きれば朽ちて死んでしまうはずだった。


「しかし、私は5000年生きた。どうしてかわかりますか?」


「簡単なことであろう。我が人間の血から魔力を摂取したように、お前もまた血を摂取していたのではないか?」


「血なんて野蛮なことはしませんよ。私の場合は、精気……。男性の荒ぶる血潮と呼べばいいでしょうか?」


「なるほどな。獣人を生んだのもそのためか?」


「ええ……。当時において、私の容姿は唯一無二。気味悪がる者もいましたが、同時の権力者から熱烈に愛されることもあった。英雄は色を好むというのは、本当なんですよ。彼は毎日、私に精を注いでくださいました」


「まるでサキュバスだな」


「彼女たちも私の子孫ですからね」


 神狐(しんこ)はあっけらかんという。


 だが、カラミティの表情は依然として硬い。


「で? 我を仲間にするとはどういうことだ?」


「単純な話です。私たちは多くの仲間を欲している。何せ私も含め、ストラバールの環境に適応できた天上族は少ない。天上族として比較的ノーマルだったガダルフや、【大勇者(レジェンド)】の母親――アクシャルですら環境適応に苦慮していた。天上族の長い歴史において、何千という天上族がストラバールに打ち捨てられてきましたが、残ったのは私とあなた、この村の者と、今王都で戦うハシリーのみ」


「ふん。そんな少数で何をする?」


「世界を救う……」


 神狐(しんこ)は真面目に答える。

 カラミティは笑いも嘲りもしなかった。

 ただ一言こう質問する。


「本気か?」


「あなたも知っているでしょ? 私の能力を……。【千里眼(サザンド・ジェル)】は未来を見通す。そして私の目は、こう告げているのです」



 ストラバールはゆくゆく滅ぶと……。


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