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第270話 4本の矢

☆★☆★ 単行本4巻 発売 ☆★☆★

いよいよ今週金曜日に発売です。

TSUTAYA様、メロンBOOKS様では、購入特典もございますので、

是非お買い上げください。よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

 五英傑【鉄槌(パイル)】ブラン・ディットル。

 辺境の騎士団『葵の蜻蛉(ブルー・ブライ)』。


 こういう非常時でもなければ、出会うことすら叶わなかったであろうタッグが形成される。


 一時的とはいえ、ヴォルフという太い運命の糸で引き寄せられた絆は強固だ。

 だが、それらを引き裂くものがいた。

 ちょうどブランと『葵の蜻蛉(ブルー・ブライ)』の間を飛び、炎を吐き出したのは、黒炎の羽毛に包まれた怪鳥である。


 鋭い声で嘶き、容赦なく地上にいる4人の炎を浴びせてくる。

 ブランとアンリたちは、ただ凌ぐしかなかった。


「ダラス!」


「はい。アンリ様」


「お前の魔法であれを撃墜できるか?」


 ダラスは1度、黒の怪鳥を見上げる。

 その禿頭には薄らと汗が浮かんでいた。


「もちろん――と言いたいところですが、難しいかと……」


「ならば、どんな魔法であればあれを落とせる」


「属性は炎のようですので、水の属性ならあるいは。しかし、あれが単なる炎とは確証がありませんので」


「そうか」


 アンリは悔やむ。

 自分も魔法を使うことができるが、ダラスと考えは変わらない。

 あれを撃ち落とせるのは、ただの魔法では難しい。


 仮にあの黒い怪鳥の力が、SSの力があるというなら、6……いや、少なくとも第7階梯以上の魔法が必要になるだろう。


「アンリ姫」


「なんだ、ブラン殿?」


「あいつを倒すのはオレだ。姫は撃ち落としてくれればいい。オレは、ルネットや他の五英傑と比べると頭は悪い。でも、アンリ姫は頭がいいはず」


 その言葉を聞いて、アンリはハッとした。

 ブランの言う通りだ。アンリがトドメを差す必要はない。攻撃力という点なら、ブランに任せればいい。


 アンリは笑う。戦場の真ん中でだ。


「ブラン殿」


「ん?」


「あなたは頭が悪くない」


「そ、そうか?」


 ブランの顔がちょっと赤くなる。


「あなたは自分がやるべきことをわかっている。私はわかっていなかった」


 アンリはくるりとリーマットとダラスの方を見る。

 そのやる気に満ちた目を見て、リーマットは笑う。


「何か思い付いたんですね、姫。悪戯小僧みたいな顔をしていますよ」


「リーマット! 姫に悪戯小僧とは何事だ」


「やってくれるか、リーマット」


「ここで死ぬかもしれないので先に言っておきますが、あなたの作戦はいつもひどい」


「おい。リーマット……」


「よい、ダラス。言わせてやれ」


 ダラスはリーマットをたしなめようとするが、アンリが止めた。


「特にヴォルフ殿と結婚しようとした時の作戦は最悪だ。善良な引退冒険者に嘘を吐かなければなりませんでしたからね」


 以前、アンリはヴォルフとの結婚を許してもらうため、リファラス家が所有する鉱山に棲みついたワイバーンを倒すように仕向けた。

 その時、リーマットたちにアンリが誘拐されたと、ヴォルフに嘘を吐けと当の姫騎士が命じたのである。


「懐かしいなあ。遠い昔のことのような気もするが……。まだあれから1年と少ししか経っていないのだな」


 アンリは今でも覚えている。

 ヴォルフと初めて剣を交わした時の衝撃を。

 湧き上がるような強い衝動を……。


「そうだ。私はまだ死ぬわけにはいかない。でも、それ以上に……」



 ヴォルフ殿を殺させてはならない。



 アンリは覚悟を決めた。





「はあああああああ!!」


 ダラスは叫ぶ。

 手の平に魔力を込めて、解き放った。



 【氷瀑廻陣ブリザルド・フィールド】!!



 強大な氷柱が地面から生えてくる。

 鋭い針のようになったそれは、空を飛ぶ黒い怪鳥に届くとかと思われたが、その前に高度を取られた。


 その動きを予測していたのは、アンリだ。


 手に持った風の槍を怪鳥に向けて放つ。

 突如襲来した槍だったが、それも怪鳥は回避してしまった。

 だが、『葵の蜻蛉(ブルー・ブライ)』の攻撃は止まない。


「おおおおおおおおおお!」


 その氷柱を上っていくものの姿があった。

 リーマットである。

 ヴォルフと初めて出会った時には、すでにAランク並みの力を持っていた彼は今、この時とばかりに力を解放する。


 斜めに傾いた氷柱を凄まじい速度で駆け上がると、その勢いのまま大砲のように飛び出す。空を飛ぶと、黒い怪鳥が回避した所に迫った。


「1の矢がダメなら、2の矢! 2の矢がダメなら、3の矢だ!!」


 アンリは叫ぶ。

 『葵の蜻蛉(ブルー・ブライ)』は公爵令嬢のアンリが率いてはいるが、辺境の騎士団に過ぎない。

 クロエやエミリのような超一流でもなければ、ヒナミのような天才というわけでもない。


 どちらかといえば、泥臭く、そして努力を重ねる事によって強さを培ってきた。


 この作戦の根幹は「数を撃てば当たる」だ。

 まさに辺境の騎士団ならではの泥臭い作戦だった。


 リーマットの攻撃が怪鳥へと向かう。

 その細剣は真っ直ぐ怪鳥の心臓(かく)へと近づこうとしていた。


「とった!!」


 リーマットは叫ぶ。


 だが、その時一陣の突風が吹いた。

 怪鳥が大きく翼をはためかせると、急上昇する。それはもはや獣の速度ではない。

 火薬を込めた大砲のようだった。

 リーマットの攻撃があえなく空振りに終わる。


 そのまま地上へと落下していく2枚目は、大きく翼を広げた黒の怪鳥を見て、口角を上げた。


「ふん。3の矢がダメなら、4の矢ですよ」


 瞬間、飛んできたのは巨大な氷柱の欠片だ。


 怪鳥を横に殴るようにヒットする。

 ぐしゃっと気味の悪い音が天空に響いた。

 同時に怪鳥の身体が大きく歪んだ。


 意識が飛んだのだろう。

 あれほど、空で勝ち誇っていた怪鳥が、あっさりと地上に落ちてくる。


 その怪鳥の上に大きな影が広がった。

 怪鳥が見たのは、大きな……とても大きな……。



 氷塊を持った巨人族だった。



 黒の怪鳥――〝蘇雀(すざく)〟と名付けられたSSランクの生物は理解しただろう。

 先ほどの氷柱の攻撃はおそらく、この巨人族だと。


 事実、ブランを見る蘇雀(すざく)の瞳は震えているように見えた。


「鳥がよぉ! 調子に乗るな!!」


 ブランは咆哮を上げる。


 同時に持っていた氷塊を、蘇雀(すざく)の頭の上に叩き落とすのだった。


11月11日発売です!!


挿絵(By みてみん)

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