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第248話 母レミニア

☆☆ コミカライズ11話 更新されました ☆☆


挿絵(By みてみん)

 レミニアの母親レミニア(ヽヽヽヽ)は、訥々とその数奇な人生を語り始めた。


 ヴォルフは横に座り、まるでその死を看取るように真剣に耳を傾ける。


 天上族であるレミニアがストラバールにやって来た理由は、他の者と然して変わらない。


 天上族として生まれて間もなく、彼女はさる天煌女――ストラバールで言う公爵令嬢の世話人として勤めることになった。


 世話人と言っても、彼女が住まう天宮の掃除だ。


 天上族の中にも身分制度のようなものがあって、レミニアはその最下級だった。


 そんなレミニアがストラバールに堕ちる(ヽヽヽ)ことになったきっかけとなった事件がある。


 その天煌女が大切にしている、神桃(しんとう)の枝を折ってしまったからだ。


 レミニアはすぐにストラバール送りに処された。


 しかし、翼をもがれることだけは免れた。


 本来は翼を除去し、ストラバールに送るのだが、彼女は生まれたばかりの天上族。翼が生える兆しもない子どもだったからだ。


 翼をもがずにストラバールに送るのには、賛否両論があった。


 後々の危険因子になりかねないからだ。


 しかし、結局子どもが過酷なストラバールで生きて行くことはできないと考えた天上族は、レミニアをそのまま追放することにした。


 天上族の誤算は2つあった。


 この頃、ストラバールにはすでに高度な文明が生まれていたこと。


 そして偶然にも、レミニアは追放先の村の人間たちに保護され、寵愛されたことだった。


 レミニアはスクスクと村で育ち、翼が生えそうになる頃に村を出た。


 翼になれるまでは、人気のない山の中で自給自足をして暮らした。畑の耕し方や、食べられる木の実の見分け方、兎や鹿などの罠の仕掛け方などは、村で教わっていたので、苦にはならなかったそうだ。


 さらに、その間レミニアは天上族の天宮で見聞きしたことを本にまとめた。


 それが後に、娘レミニアの後生大事にすることになる【ママの遺稿】だ。


 天上族の子どもといえど、その知能はストラバールの大人以上の能力を持つ。


 それは娘レミニアの発達した知能から考えれば、容易に理解できる。


 翼をうまく畳めるようになり、母レミニアは旅に出ることにした。


 純粋にストラバールという世界が、どういう場所なのか知りたかったからだ。


 それは長い旅だった。


 なるべく一箇所に留まらず、長くても3年ほどと心に決めた。


 レミニアは天上族だ。寿命も身体の構造もまるで違う。


 1つのところに留まれば、必ずボロが出ると考えた。天上族は自分たちは完璧な種族であると言うが、完璧などないことは、自分がよく知っている。


 神桃を折ってしまった経験は、レミニアから奢りをなくし、慎重さを加えていた。


 穏やかな旅と決めてはいたが、意外と波瀾万丈であったらしい。


 街一番のお針子をやれば、村に薬を売る行商人、王子に魔法を教える教師などもやった。


 そうして、気が付けば100年が経っていた。


 レミニアは100年ストラバールに生きて、感じ始めていたことがあった。


 エミルリアに棲息する魔獣が、ストラバールでも目に見えて多くなってきたことだ。


 ストラバールで、いやエミルリアで何かが起きようとしていることを、敏感に察したレミニアは決断する。


 それは聞いたヴォルフを、ドキリとさせた。



「子を成す……」



 ヴォルフは反復すると、母レミニアは目で頷いた。


 今後生まれる危機に対応するためではない。


 自分に何かあった時に、託すことができる子孫が欲しかったのだ。


 そして、そのためにレミニアは最初の村に戻った。


 100年ぶりの帰郷だ。


 当然彼女を知るものは1人もいなかったが、彼女を助けてくれた子孫は残っていた。


 子孫は一目見てわかった。


 もう20歳になるというのに、まだあどけなさが残る青年。時折、まるで本当の子どものように目を輝かせることもあった。


 それがまるで生き写しのようだった。


 レミニアはすぐに決意する。


 彼とつがいになり、自分の子孫を残すことにする。


 羽なしとうまく子を成せるかどうかわからなかったが、旅をしながらレミニアは自分の身体も研究していた。


 そして最良の方法が、相手の血を取り込むこと。


 言わば吸血だ。


 そういう種族がストラバールに昔からいることを知り、レミニアは決断に至った。


 そしてレミニアは相手の血をもらい、再び村から出て行った。


 実験は成功した。レミニアは子を身ごもったのである。


 子は1人で生むことにした。


 危険ではあったが、一体どういう風に生まれてくるか、自分でも皆目見当も付かなかったからだ。


 再び山に籠もり、時を待つ。


 膨らんでいくお腹が不思議でしょうがなかった。


「そして、娘が無事生まれた直後、その者は現れました」



 最後の天上族ガダルフが……。


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挿絵(By みてみん)

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