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第246話 意外な再会

☆大大大好調です☆

挿絵(By みてみん)

 レミニアが目覚める一方……。


 北の地にいて、レクセニル王国奪還を目指すヴォルフはルネットに案内されて、地下の中にある部屋へと案内された。


「ルネット……。俺たちは一刻も早くレクセニル王国に行かなければならない。あまりここに長居をしている時間はないのだが……」


「まだ進発には準備があるわ。それにヴォルフさん、あなたをここに招いた理由は他にもあるのよ」


「反抗軍と引き合わせる以外にもあるのか?」


 ルネットが反抗軍をこの場所に集めたのには、意味があった。


 1つはすべての事件がここラルシェンから始まっていたことを、ヴォルフに説くため。そして2つ目は他の国を刺激しないためだ。


 レクセニル王国での魔獣戦線終結の知らせは、やがてストラバール各国すべてが知るところになるだろう。


 そこで彼らが考えるのは、次なる世界の覇権だ。


 何度も説明したが、ストラバールは魔獣の襲撃が始まるまでは、人間同士が争っていた。


 それを予見した国は、おそらくレクセニル王国やバロシュトラス魔法帝国以外にもいる。


 おそらく他の国の様子を見る国がほとんどであろうから、すぐには戦争は始まらないとルネットは考えていた。


 けれど、ひと度火が点くようなことになれば、連鎖的に炎が上がる。


 今は各国を刺激するような軍事行動は控えたい。


 そこでルネットは、今や亡国となったラルシェン王国に兵を集めたのだ。


 意外にもラルシェンからレクセニルには、第二次魔獣戦線の主戦場となった緩衝地帯を挟むだけで、他の国を刺激することはまずない。


 レクセニル王国の北方を守る国境警備隊のことが気になるが、そこを守るのはムラド王の息子だ。


 ムラドと同じく聡明で機転が利く王子だから、通過自体に障害はないと考えていた。


「色々考えているんだな、さすがは【軍師(ストラーテ)】」


「あははは。そんなに褒めないでよ。惚れちゃうでしょ」


 くるりと回ってルネットは愛想の良い笑みを浮かべる。


「おいおい……。ルーハスが聞いたら、俺が八つ裂きにされるぞ」


「謙遜しちゃって。今のあなたならルーハスぐらい軽く捻ることができるでしょ」


「そ、それはどうかな……」


 謙遜ではなく、これは本音だ。


 ヴォルフは強くなった。それは本人にも自覚はある。


 けれど、ルーハスもまた強くなっていた。


 剣を合わせたわけではないが、それは間違いない。


 いつか戦った時の脆さというか危うさが消えていた。


 だが、今はそれがない。


 きっと守るべき者(ルネット)ができたからだろう。


「ふーん。ヴォルフさんってモテるでしょ」


「モテ……」


 かあ、と年甲斐もなくヴォルフの顔は赤くなる。


 慌てて手を振った。


「おじさんをからかうなよ」


「むふふふ……。年下キラーと見た」


 ルネットは半目で睨む。


「そんなわけ――――」


「私も年下よ。立候補しようかな?」


 ルネットは透き通った瞳と白い肌を近づけてくる。


 薄い唇はフェアリーのように妖艶であった。


「やめろ、ルネット。お、俺にだって恋人がいるんだからな」


 慌てて、ヴォルフは離れ弁解する。


 すると、ルネットは姿勢を元に戻した。


「知ってる。エミリでしょ? ワヒトの――」


「知ってたのか?」


「うふふふ……。少しからかっただけよ。本気にしちゃって」


「だから――――」


「でも、ルーハスがいなかったら、狙ってたかもね」


 べー、とルネットは舌を出す。


 どうやら【軍師】に舌戦では勝てそうにない。ヴォルフは早くも白旗を揚げた。


 もしかして、ルーハスに勝った仕返しだろうか。


 ヴォルフはそんなことまで考えた。


「ところで、俺をラルシェンまで招いた理由をまだ聞いていないのだが」


「ええ。ここよ……」


 長い地下の廊下を抜け、ヴォルフとルネットはある一室にやってくる。


 警備は最低限度だが、部屋の中はとても明るく、外まで漏れていた。


 中へと入ると、薬の匂いが鼻を衝く。


 そこでヴォルフは初めてここが病室だということに気付いた。


 それもかなり衛生管理を徹底された場所だ。


 ルネットは2つある御簾を引く。


 真っ白で清潔そうなベッドの上に、少女が眠っていた。


 肌は透き通るように白く、肌は灰色。


 全体的に華奢で背もさほど高くない。


 一目見て思った事は、まるで燃え滓のようだということだ。


「彼女は?」


「あら? ヴォルフさんも会ってるんでしょ? 向こうで」


「まさか――――」


 フッと吸い込んだ空気が、嫌にひんやりとしていた。


 心の中が急速に何か黒いものに蝕まれていくような感覚に襲われる。


 やがてヴォルフの目に浮かんだのは、涙だった。


「エラルダ……」


 はっきり言えば、面影すらない。


 唯一その正体を知る手がかりは、その小柄な身体だろう。


 それすらやせ細りすぎて、判然としなかった。


 だから、ヴォルフが最初気付かなかったのは仕方ないことだった。


「エラルダ! 俺だ! ヴォルフだ!!」


 声をかける。


 一瞬、エラルダの眉が動いた。


 しかし、その反応が精一杯らしい。


 極度に衰弱していることは、診断を聞かなくてもわかる。


「私たちに帯同してくれている医師によれば、ここ2、3日が山場だと言ってる。といっても、この状態で生きてることが奇跡なんだそうよ」


「エラルダに何があったんだ?」


「それはヴォルフさんの方がよく知ってるんじゃない?」


 ヴォルフが知るエラルダの最後の姿は、あの大きな天使だ。


 その後、ストラバールに降りていくのを目撃しているが、そこで彼女が何をしたのかは詳しくは知らない。


「ガーファリア陛下に斬られたのよ」


「陛下に?」


「ええ……。そしてどういうわけか、天使は死んでそのエラルダが出てきたってわけ」


「そ、そうか。彼女は助かるのか?」


 ヴォルフはずばりと尋ねた。


 しかし、それすらもわからないらしい。


 ルネットは伏せ目がちに言った。


「試しに、あなたの娘に渡された秘薬を飲ませてみたけど、それでも今の状態を保っているのが精一杯なの。そもそも私たちと元々の身体の構造が違うみたいね。だから、普通の方法では元に戻すことはできない」


「じゃあ、エラルダは――――――」



 私なら彼女を助けることができるかもしれません……。



 その声はもう1つの御簾の向こうから聞こえてきた。


 ヴォルフは聞き覚えのある声に、首を傾げる。


「あの向こうには誰が?」


「あの中には、あなたをここに連れてきてほしいと言った人がいるの」


「俺を?」


 ルネットが答えるよりも先に、御簾を開いた。


 そこにいたのは、黒髪の少女だった。


「久しぶりですね、ヴォルフ・ミッドレス」


 強い光を帯びた黒色の瞳と視線が合う。


 一瞬言葉を失いながらも、ヴォルフはその少女の名前を呼んだ。


「アクシャル・カーン……」


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