表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

269/371

第244話 変わりゆく世界

本日は日曜日! もし書店の方にお立ち寄りの際には、

『アラフォー冒険者、伝説となる』のコミックスをお買い上げ下さいませ!

よろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

「一体、何が起こっているのだ?」


 レッセルは目を剥いた。


 今、王宮の中にある謁見の間で繰り広げられている戦いを見守る。


 ガーファリアvsムラド――いや、ガダルフ。


 互いに愚者の石(アンチ・エクサリー)の力を使い、目で追えぬ速度で戦っている。


 始まって半刻すら経っていないというのに、もうすでに謁見の間はボロボロになっていた。


 だが、押されているのは、レッセルの目から見てもガーファリアの方だ。


「どうしました、陛下? 最初の威勢はどこへいかれましたかな?」


「はん! 思いの外、お喋りなのだな。案ずるな。手を抜いておるのだ」


「ほう……」


「ここはいずれ余の王宮となるのだ。それをバラバラにするわけにはいかぬであろう」


「イメージよりも随分と器が小さいのですな。あなた様なら、塵も残さずバラバラにしてから、自分好みに仕立て上げる――とでも言うぐらいに思っておりましたが」


 ガダルフは挑発する。


 レッセルは一体どっちを応援したらいいのかと、頭を抱えていると、その襟首をひょいと持ち上げられた。


 ギョロリとした目玉を動かすと、立っていたのはツェヘスだ。


 さらにはワヒトの服を着た盲目の女も側にいる。


 レッセルはツェヘスに摘まみ上げられながら、バタバタと身体を動かした。


「ツェヘス将軍! 頼む! 加勢してくれ!」


「どっちに加勢するのだ?」


「それは――――」


「あの2人はもはやレクセニル王国の敵だ。加勢など不要」


「しかし――――」


「早いところ逃げた方がよろしおす」


 盲目の刀士は言った。確かクロエと名乗っていたはずである。


「わからんか? 今のままではお前や他の家臣を戦いに巻き込むことになる」


「あの皇帝はんは、みんなを避難させるための時間稼ぎをしてくれておるんどす」


 レッセルは肩を竦める。


 ようやく気付いたらしい。


「で、では、ガーファリア陛下は我々の味方?」


「どういう経緯で今に至っているのか、オレも知らん」


 ツェヘスはぶっきらぼうに言い切る。


「ただガーファリア陛下の方だけが、少し人間寄りだということだ」


「ほな。行きましょか」


 クロエは翻る。


「いや、待て。他の者は?」


「すでに避難させている。お前たちで最後だ」


「ま、待て! ハッサル殿! あなたはどうするのだ?」


「ご心配なく」


 ハッサルは振り返ることなく、2人の戦いを見守っている。


 その胸中は複雑だろう。


 いずれも自分に関係する人物だからだ。


 その気丈な姿に、最後レッセルは涙すら浮かびそうになったが、最後には背を向けた。


「行こう……」


 今思えば、とレッセルは考える。


 ガーファリアとムラドの長い問答もまた、避難の時間を稼ぐためのものではなかったのか、と。


「いや、そんなことは……」


 そうあり得ない。


 単なる偶然という方がよっぽど理解できる。


 ガーファリアの心の内を見通せる者は、誰もいない。


 ただ1人を除いては……。



 ◆◇◆◇◆



 ガーファリアは目の端で、レッセルが避難していくのを確認する。


 だが、それを待っていたのはガダルフも一緒だったようだ。


「これで後腐れなく戦えますよ、陛下」


「ふん。余裕ぶるのもここまでだ、ガダルフ。先ほどの戦いで、余の心臓を貫かなかったこと、後悔するぞ」


 ガーファリアが床を蹴る。


 すでにその床には無数の亀裂ができていたが、ガーファリアが蹴った瞬間、謁見の間の半分が吹き飛んだ。


 硝子や石、あるいはレクセニル王国の国章が描かれた旗が、空に舞う。


 当のガーファリアは砲弾のように飛び出した後、待ち構えるガダルフにツッコんでいった。


 その刹那の時間のなかで、ガーファリアは剣を振り上げる。


 皇帝が繰り出す豪剣に、さしものガダルフもフードの奥で目を見張った。


 ゴンッ!!


 王宮が揺れる。


 直撃すればタダでは済まなかっただろう。


 だが、ガダルフは受け止めていた。


 腕1本でだ。


 タダですまなかったのは、その後ろだった。


 ガーファリアの一撃の衝撃だけで、ガダルフの後ろの壁が吹き飛んでいる。


 受け止めた衝撃は残っていた床にも伝播し、完全に底が抜けていた。


 天井を支えていた太い柱が落下し、階下部分に激突する。


 仮に人が残っていれば、大惨事になっていただろう。


 床が抜けても、2人は同じ所に留まっていた。


 片や剣を、片や腕を持ってせめぎ合っている。


 瞬間、魔力が解放されると、残っていた階下の壁が吹き飛ぶ。それどころではなく、本丸部分から少し離れた尖塔が吹き飛ぶと、王宮を取り囲む堀の部分に落下した。


 ガーファリアとガダルフが動く。


 ついに愚者の石(アンチ・エクサリー)の力を全力発揮すると、彼らはぶつかり合った。


 1合、2合と打ち合う度に、まるで巨竜の鼓動のような音が鳴る。


 その度に衝撃破が波のように押し寄せ、市街の建物の屋根をめくった。


 先ほどまで第3次魔獣戦線の勝利の報を聞き、沸き上がった市民たちは一転して悲鳴を上げ、パニックを起こす。


 どっちに行けばいいかわからず逃げ惑う者がいれば、まるで神々の戦いを見上げるかのように魅了される者もいる。


 1度音が鳴る度に悲鳴が起こり、象の足裏に踏みつぶされた蟻のように人間が死んでいく。


 その中で、ツェヘス率いる騎士団やワヒト王国の刀士たち、そしてヴォルフと縁のある者が結集して、民衆を守ったが、もはやレベルが違った。


 為す術なく、もはや暴風が収まるのを待つしかない。


 ストラバールの二大巨頭と呼ぶべき2人の戦いに、レクセニル王国王都の民たちは、否応なく巻き込まれていった。


 美しかったレクセニル王宮、そしてその王都は次第に平らになっていく。


 やがて、その戦いは9日間続き、そして10日目の朝を迎えた……。


世界と世界がぶつかりそうになっても、壊れなかった世界が、

壊れようとしている。果たしてヴォルフとレミニアが愛したストラバールという世界がどうなるのか。

次回をお楽しみに!


コミックスの方もよろしくお願いします。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9月12発売発売! オリジナル漫画原作『おっさん勇者は鍛冶屋でスローライフはじめました』単行本4巻発売!
引退したおっさん勇者の幸せスローライフ続編!! 詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



8月25日!ブレイブ文庫様より第2巻発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『魔王様は回復魔術を極めたい~その聖女、世界最強につき~』第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『アラフォー冒険者、伝説になる』コミックス9巻 5月15日発売!
70万部突破! 最強娘に強化された最強パパの成り上がりの詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



コミカライズ10巻5月9日発売です!
↓※タイトルをクリックすると、販売ページに飛ぶことが出来ます↓
『「ククク……。奴は四天王の中でも最弱」と解雇された俺、なぜか勇者と聖女の師匠になる10』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


最新小説! グラストNOVELS様より第1巻が4月25日発売!
↓※表紙をクリックすると、公式に飛びます↓
『獣王陛下のちいさな料理番~役立たずと言われた第七王子、ギフト【料理】でもふもふたちと最強国家をつくりあげる~』書籍1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


シリーズ大重版中! 第6巻が3月18日発売!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』単行本6巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『魔物を狩るなと言われた最強ハンター、料理ギルドに転職する』
コミックス最終巻10月25日発売
↓↓表紙をクリックすると、Amazonに行けます↓↓
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



6月14日!サーガフォレスト様より発売です!!
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『ハズレスキル『おもいだす』で記憶を取り戻した大賢者~現代知識と最強魔法の融合で、異世界を無双する~』第1巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


『劣等職の最強賢者』コミックス5巻 5月17日発売!
飽くなき強さを追い求める男の、異世界バトルファンタジーついにフィナーレ!詳細はこちらをクリック

DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large





今回も全編書き下ろしです。WEB版にはないユランとの出会いを追加
↓※タイトルをクリックすると、公式に飛びます↓
『公爵家の料理番様~300年生きる小さな料理人~』待望の第2巻
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large


好評発売中!Webから大幅に改稿しました。
↓※タイトルをクリックすると、アース・スター ルナの公式ページに飛ぶことが出来ます↓
『王宮錬金術師の私は、隣国の王子に拾われる ~調理魔導具でもふもふおいしい時短レシピ~』
DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large




アラフォー冒険者、伝説になる 書籍版も好評発売中!
シリーズ最クライマックス【伝説】vs【勇者】の詳細はこちらをクリック


DhP_nWwU8AA7_OY.jpg:large



ツギクルバナー

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] 陛下達強いなw [一言] 主人公いつになったら出てくん?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ