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第238話 捨てられた国

☆☆ 7月12日発売 ☆☆

何度も告知してごめんなさい。

『アラフォー冒険者、伝説になる』のコミックス1巻が発売されます。

各書店・専門店には、レミニアのブロマイドがついた店舗特典がございますので、

是非ゲットしてくださいね。

ネットの予約に関して、すでに止まっているところもあるようなのでお早めに……。

 このレクセニル王国を我にくれ!



 ガーファリアの声は、そう確かにレクセニル王宮にある謁見の間に響き渡った。


 聞いていた大臣以下、絶句する。それはムラドも同じであった。


 言葉尻こそ冗談か夢のような話であろうが、目の前の【大英雄(パラディン)】の表情は変わらない。真剣というか、謁見の間に漂う重苦しい空気すらはね除けそうなぐらい、その声は清々しくもあった。


 すると、ムラドはふっと息を吐く。


「どうやら、本気のようですな」


「これが冗談を言っているような顔に見えるか?」


 やはりガーファリアは笑う。


「今さら侵略戦争ですか、陛下。魔獣が現れ、皮肉にも人と人が殺し、国と国がぶつかって版図を奪い合う時代は終わったのですよ」


「そう。そして、その魔獣の根源は先ほど死んだ」


「何を根拠に……」


 ムラドは肩を竦める。


「魔獣とはストラバールとは違う世界――この国では確かエミルリアと呼んでいるのだったな。だが、それはラーナール教団が管理していた、向こうとこちらの(パス)は断たれた。あの天使が暴れ回ったのも、そのためよ。ストラバールとエミルリアの道を再構築、あるいはこちら側を侵略し、我が物にしようとしたに違いない」


「随分とお詳しいのですな」


「お前にも報告ぐらいは上がっているのだろう。余が知っておるのだ。あの天才(レジェンド)が知らないわけないからな」


「…………」


「それともあまりに荒唐無稽すぎて、にわかに信じがたいか? ムラドよ。王にとって、想像力は何よりも必要だと余は心得ている。国のような重たい手足を持つものが、現在(いま)を見て反応するなど不可能。先見を捉え、あらかじめ手足を動かすことこそ、王の器量というものよ」


「生憎とわたくしは、国を自分の手足と思ったことはない故……。あなたが言っていることは測りかねます、陛下」


 天使を破壊し、今なおレクセニル王宮内で狼藉を行う帝国の君主に対して、ムラドは穏やかに接する。


 周りは戦々恐々として、槍を向けた近衛の手は震えたまま。


 いつムラドの首が落とされるかわからない緊張感は継続したままだったが、王たちの問答は続いて行く。


 先に口を開いたのはムラドであった。


「仮に侵略戦争を宣言するというなら、大義名分が必要でしょう。陛下も知っておられるかと思いますが、今レクセニル王国には各国の大使や一部将兵の方も駐在しておられる。あなたの蛮行はすぐさま、世界が知るところになるでしょう。それでも戦争を始めるおつもりか?」


「ほう……。なかなか知恵を回してきたな(ヽヽヽヽヽヽ)。なるほど。大義名分と来たか。くくく……」


 ガーファリアは笑い始める。


 ムラドは厳しい顔のまま、眉根を顰めた。


「何かおかしなことを言いましたかな?」


「いや、お前の言うことは至極真っ当な意見だ。ムラドよ。しかしな、お前から大義名分という言葉を持ち出すとは思わなんだ」


「どういうことでしょうか?」


 その時であった。


 そろそろと靴音が聞こえる。


 現れたのは、獣人の女性であった。


 小麦色の長い髪からピンと狐のような長耳が伸び、ワヒト王国の着物を着て、その下からは大きな狐の尻尾が出ていた。


 目の代わりに痛々しい傷の跡があり、それを長い前髪で隠している。


「どうした、ハッサル?」


「ハッサル? あの三賢者の1人の……」


 ムラドが声を上げる。


 同時に場は一瞬騒然となるが、ガーファリアもハッサル自身も特に気を止めなかった。


「【大勇者(レジェンド)】の件ですが……」


「捕まえたか?」


「いえ。【大勇者(レジェンド)】自身は例の装置の中のようですが、他の研究員たちが立てこもり、出てきません」


「さすが、【大勇者(レジェンド)】か。余の狙いを察知したな」


 ガーファリアは歯をむき出す。


 その表情は喜んでいるようでもあり、悔しがっているようにも見えた。


「如何しましょうか? 突破は容易ではないようですが」


「ひとまず捨て置け。後で、余が直々に出向こう」


「かしこまりました」


 ハッサルは恭しく玉座に座ったままのガーファリアに向かって、頭を下げた。


「ハッサル様。あなたはラーム様に匹敵する知恵者。どうか、ガーファリア陛下の蛮行をお鎮め下さい」


 ムラドが声をかける。


 ガーファリアは少し目を細めただけで何も言わない。


 その代わりハッサルは、前を向いたままムラドの懇願に答えた。


「誠に申し訳ありません、ムラド王。私の言葉を持ってしても、陛下を止めることはできないでしょう」


「何故だ!? 若くして剣帝とも呼ばれた方が、何故戦さを好む!」


「それは――――」


 ハッサルはついにムラドの方を向いた。


 眼球そのものがないにも関わらず、ハッサルに責められているような気分になる。


 しかし、先に口を開いたのはガーファリアだった。


「ラルシェン王国のこと……。よもや忘れたわけではあるまい」




 ◆◇◆◇◆



 そこに広がっていたのは、雪原と廃墟であった。


 人の気配はなく、痕跡もない。


 ワヒト王国の雪は、しんしんと降ると言われるが、ここでは常時横殴りの吹雪が唸り上げ、視界を白く染め上げていた。


 その中を歩く男がいる。


 1歩歩けば、膝下まで浸かる雪原の中を根気よく進み続けていた。


 男は崩れた廃墟の間にできた隙間を見つけると、その中に入る。


 寒いことに代わりはないが、吹雪の中で突っ立っているよりは遥かにマシだろう。


 しかし、隙間の中にすでに先客がいた。


「誰だ?」


 持っていた魔法灯の明かりを、奥に向けて放つ。


 浮かんだ特徴的なシルエットを見て、男はホッと胸を撫で下ろした。


 1人は獣人、1人は女である。


 先に口を開いたのは、女の方だった。


「ようこそ。ヴォルフ・ミッドレス」



 捨てられた国ラルシェンへ…………。


実はここからヴォルフがやってきて、ガーファリアと戦うという展開だったのですが、

コミカライズを見て、ふと展開を変えたくなりました。

予定していたよりも、ちょっと長引きますが、引き続きWEB版もお付き合いいただければ幸いです。

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