おはよう、新世界
目を覚ますとそこは見慣れた教室、ではなくゲーム画面の中で見慣れた教師だった。
今頭の中に流れていたのはなんだったのだろう。杏が俺のことをルシアとよんで、俺は何も考えることができなかったけど、色々な考えが、まるで映画でも見るように目の前に浮かんでは消えていった。
「お、おきたか。真中」
「池田!?お前、今の」
「今のが何かは知らないけど、俺が思うに杏ちゃんとルシアは無事に和解できたってわけだ。よかった、よかった。そして、なぜかその関係はリセットされることなく次の話につながったと…」
「え?どういうことだ?」
池田はめんどくさそうに俺を見つめる。その瞳の下には見慣れない点が一つ。
「お前、そんなとこにそんなセクシーなホクロあったか!?」
「これなーうーん…あったんだよなあ…それとお前も」
池田は慣れた手つきでスマホを操作して、俺の目の前に差し出す。それは内カメラになっていて、そこには俺の顔が映し出される。見慣れた俺の…ん?
「俺の目こんな黄色くなかったよ!?」
「本当になあ…俺もセクシー泣きぼくろついたし、なんかアップデートされてるよな」
俺の瞳は黄色く色づいていた。青い髪に黄色く光る瞳。それはますます、ゲームの世界の人間のような風貌で少し背筋が冷たくなる。
「まあ、いいや。とりあえずお前のいうトゥルーエンドには近づいてんじゃない?その証拠にルシアの好感度はマックスの赤のまま、杏ちゃんはちがうルートに入ってるし」
池田は急にピースして、それをホクロのある左目のあたりにあてがう。そして、ウィンクする。こいつは一体、何をしてるんだろう。
「ああ、いってなかったっけ?俺こうすると、好感度が見えんの。ほら、好感度のパラメーターみるの俺の役目だし」
池田はさも当たり前のようにそのポージングのまま、語る。そういえば、好感度の確認とかゲームの設定とかこいつに話しかけてもかえれた!いつも、メニュー画面でしてるから、忘れてたけど。
「まあ、そんなことよりお前が来てから微妙ルートのループにも変化がでてきて、嬉しい限りです」
池田がわざとらしく、お辞儀をする。全く敬意の感じない一連の動作に殴りたくなるが、こいつと今仲違いするわけにはいかないので堪える。
「次はおそらく、海堂のルートだな。」
池田がさらりと告げるその名前に、俺は寒気がした。海堂ルートは俺の地雷のルートであった。それを、今から見せられる?目の前で?しかもなんかますます杏を好きになった後に?
嘘だろ。やっぱり、もう普通にリセットしたい。