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白川郷物語  作者: アトノマツリ
第一章
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第九話 妖艶な彼女

下ネタじゃないですよ!

目線を上へとずらすと、其処には白い(ころも)が覆い被さっていて、まるで雪を被ったまんまるな山のように美しい乳房(ちぶさ)があった。


相手が此方に気づいていないことを良いことに、俯いてるふりをして上目使いでその胸の膨らみをチラ見する。(大きな山を眺めるようにはできないのでね)


首から鎖骨にかけて緩やかな曲線を描き、胸へと辿り着く。


ワンピースからは胸元の一部が覗いており、生身の胸はやはり清らかなる白さで私を魅了した。


さらに、胸の稜線が生み出す陰影はまさに芸術作品そのものであり、何時間見ていても飽きないほどに魅力的であった。


それからほんの少しして、現実を見つめ直すと、今度は従業員の手足などが視界にはいる。


其れ等を見ていると、今朝の味噌汁の具材が地面を闊歩してるかのように思えて、がっかりする。


それから再び彼女を見ると、清楚さを全面に押し出すように白く透き通った肌の端正な足がより一層魅惑的に思えてくる。


次第にその清楚さがかえって艶かしく見えてきて、またも釘付けになる。


いかんいかんと眼をそらして、彼女に少しずつ近づいていくと、本来の意図を忘れかけた自分の愚かさに溜め息をついてしまう。


一歩進む毎に、3メートルほど離れた距離で彼女を見ていたために見えなかった、足の爪の仄かなグラデーションや、肌の細かな色合い等が少しずつ見えてくる。


自然な目線であるために怪しまれないだろう…そう思っていると…

「うッ」

突然の強烈な匂いに思わず小さな声を漏らす。


それは決してアンモニアなどの不快で悪意のある臭い等ではなく、甘ったるく、脳を直接刺激するような強烈な女の匂いであった。


嗅いでもいないのに鼻腔を支配するその匂いは、強烈な中毒性を孕んでおり、次の瞬間には虜になっていた。


もう、この世の空気は全てこの匂いになってしまえば良いとまで思えるようになったところで、彼女は突然、此方に目線を向けてくる。


そこで麻酔が切れたかのように目覚める。


やらなければならない、そう覚悟を決め、彼女の前で口を開く

「そこの席で一緒に朝食食べても良いですかっ!」

まったくこの聞き方はやましさが全開で、子供じみているが、慌てて口にした言葉だったので仕方がない。


一瞬の静寂が己を辱しめる。

そして、彼女は此方にその玉眼のように美しい眼を向け答える…


次回まで焦らさせていただきます!

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