第六話 朝
眠れない夜も明け、来る朝。
私は目覚ましが鳴る前に覚醒する。
部屋はまだ薄暗く、窓の外の太陽は案外寝坊しているようだ。
いつもは予定より遅く起きてしまう私だが、いざという時には予定より早く起きる。
こうやって早起きしたときはやらねばと思い心臓が勢いよく動きだす。
そして、次にやることなどを寝ぼけもせず冷静に判断しながら行うのだ。
だからこそ、こんな風に早起きしたということは、自分にとってあの女がこれほどまでに重要なのだと無意識にいっているようなものだったから、正直自分の物好きさに呆れつつも、驚いている。
大切なことと考えると、自然と口元が上がって、ニヤリとしてしまう。
昨日やってきた久々のこの白川郷で感じた自然の偉大さと、感じたことのないくらい温かい人の優しさとを忘れるくらいに、一旦保留するくらいに彼の女は魅力的で、私の心を悩ませている。
どうしても彼女を目の前で見ていたい、そんな気持ちが己を駆り立てる、ただ危険なことや犯罪じみたことはするつもりはない、そこら辺はわきまえている。
だからこそ、こうして早くに起きて、今日明日に去ってしまうかもしれない彼女を一目拝もうと朝食の席へと急ぐのだ。
今日明日に去るか去らないかではなく、単にそれは自分を理性的な人間だと判断したいがための自分に対する建前なのかもしれない、本当は今すぐにでもこの目に焼き付けたいからって理由かもしれない。
まあ、彼女しか見えなくなる自分は既に理性的でないのかもしれないが…。
そんなわけで支度をして朝食の席へと向かうのであった。