あれ、本当に歓迎してるの?part2
「では、二回戦は正VS要ね」
伊織が相変わらずやる気のない声で司会をする。正とは昨日闘ってるけど、多分油断しない方がいい。正は昨日油断してたけど、今日は本気で来るだろうし。
「今日は負けねえぞ」
ほらやる気だ。正は身長もあるし、そこからさらに棒を使っているから、リーチは相当長い。厄介な相手だ。
「か、要。殺さないでね?」
「へ?」
私乃が急に心配そうに僕に注意してきた。え、なんの話?
「な、なんか…目が、私たちみたいな目だったから」
「…えっと、人殺しの目ってこと?」
「うん…」
確かに、師匠に言われたことがある。
『要。お前はこっち側に近いのかもしれんなあ…』
なんて。今思えば師匠はこっちの人だったのかもしれない。…血かな?
「大丈夫さ。これでも、まだ人を殺したことはないんだよ」
「…むしろ、殺したことないのにその目ができる方が怖いよ」
多分、僕の目は、師匠の目を見続けてきたからだと思うんだけどね。
「あー…いい?じゃ、始め」
やっぱりやる気のない伊織が合図をした。同時に正が飛びかかってくる。
「そらあ!」
棒というのは、優秀な武器だ。どこを持ってもいいから、間合いも思いのまま。ただ、難点を上げるとするなら、打撃武器の割に軽いため、振りかぶりが必ず必要なことだ。相手がプロなら刃物の方がいい。
多分、本来は棒ともう一つ武器を持つのだろう。
棒を横に軽くいなして、両手が塞がってるから脇に挟んだ状態で回転し、棒を奪い取る。
「…って、あれ?」
下からよく分からない力が加わって、僕の手から棒が離れた。
「おっかしーな…」
何か細工でもしてあるのかな?なんて思っていると、次の攻撃が来た。
「ーーっとと」
必然的に大振りになる棒を避けながら考える。しかし、細工がしてある様子はない。ってことは、やっぱり何かやってるのかな?
…じゃあ、答えは一つしかないよね。
「えいっ」
前回と同じ要領で棒を取る。その時、脚を前に出しておいた。瞬間、脚に強い衝撃が走った。
…ちょっとナメてたかもしれない。普通なら折れてた。
なんてことはない。僕に棒を掴まれた瞬間、正は思いきり棒を蹴ったんだ。そんな攻撃に対応してない僕は棒から手がすり抜け、正は自分でやってるから持ったまま。実に合理的だ。
「チッ。取られちまったか」
でも、油断は全くできないだろう。さっきの蹴りの攻撃力でわかった。
正は、蹴りが本業だ。多分、間違いない。
身長の違いでナイフはイマイチ使いづらい。そもそも、木製ナイフって軽くハンデだよね。
棒に持ち換えるときにせっかくだから両手のナイフは投げてみた。片方は頭に、そしてもう片方は腹に。
「うおお!?危ねえ!」
正はとっさにジャンプして二つのナイフを蹴り落とした。おお、器用だなー…。脚が届くところまで飛び上がるって…。
…ん?あ。
弱点見っけ。
「そら、どうした!」
挑発を無視しつつ、奪った棒をひゅんひゅんと回す。んー…僕にはちょっと長いかな?少しだけ扱いづらいけど、まあ、武器もない相手にはちょうどいいかな。
「かかって来なよ」
「…ククッ」
僕が誘うと、多分罠だと思った上で飛び込んできた。正のその性格は美徳といえば美徳なんだけどね。
正が的確に顔面を狙って膝をいれてくる。飛び膝蹴りだ。僕はそれをかわし、背後から正を狙った。
「終わりだよ!」
「甘え!」
僕の渾身の突きは、やはり蹴りによって阻まれた。やれやれ…甘いのはどっちなんだか。
「えい」
正の着地は必然的に片足になる。それを見越して、足払いをかけた。正はあっけなく倒れ、立ち上がろうともがいていた。
「そりゃ!」
「ぐぼおおおおお!!?」
それがゆえに、僕の全身全霊の蹴りが目に入らなかったらしい。人間とは思えないほど飛んでいった正は、そのまま意識を失った。…死んでないよね?
「勝者、要」
「はい、ありがとう」
もちろん死んでなかったよ?骨がイきかけてたけど、多分三日もすれば治るさ。