表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変革者  作者: 雨の日
第四章~雨降リシ夜二~
95/174

第二十一話

第二十一話


「さて、と・・・」


雨の日は晴れの日と雷火の日の元に雪の日と嵐の日を担いで駆け寄り、傷の具合を確かめる

小太刀による切り傷が多数みられる雷火の日だったが、幸いにも出血も少なく命に別状はないだろう。他の雪の日と嵐の日も傷は浅く、どうやら無事そうだ

だが、腹を貫かれた晴れの日だけは違った


「晴れ・・・お前の回復速度やべーな・・・もうほとんど治りかけてるぞ・・・」


そう。普通なら痛みと失血で即死すらあり得る大けがを負ったのにも関わらず腹の穴は既に閉じかけ、出血も雨の日のフォローなしでも平気だと思うほどだった

何故ここまで回復が早いのか疑問に思う雨の日。もちろん晴れの日本人も疑問だろう


「なんだカ・・・怪我が勝手に治ってくみたいデスネ・・・治癒力が高いようデ」


「そ・・んなことよ・・り、晴れの日!天パ・・・!敵が、来る・・・わ!」


「マジかよ・・・まだ残党が居たか。晴れ、動けるか?ちょっくら共闘しよーや」


天守閣の真下からは無数の足音が聞こえる。そして城壁をよじ登っているかは分からないものの、確実にアナザーの兵士が近づいているのは分かる

晴れの日は痛みで飛びかけていた意識を振るいたたせ、雨の日の肩をかりながら立ち上がり紅銃をぎゅっと握りしめた


「おう・・・反撃といくぜ・・・!!」


「その意気だ!!」


その言葉がきっかけとなったのか360度どの方位にも兵が居る。確実に殺しに来ているのが明らかで、その眼が結と解の死体を捉えるや否や問答無用で雨の日と晴れの日に襲い掛かってくる

あまりの数の多さと殺気に紅銃を握る力が強まる。だが、その肩を雨の日が軽く叩いた


「お、こえぇんか?なーに、俺が前衛張るからお前は援護射撃よろしく頼むぞ?」


「お、おう・・・てか俺の傷・・・」


「お前の傷、案外浅かったんだな。もう回復してら」


雨の日は晴れの日の腹にできた傷跡を拳で軽く小突くとその手に薙刀を再び生み出し、その刃を高速で回転させる。低く響く羽音のような音を静かに鳴らしながら雨の日は薙刀を頭上で一回転させて下に払う。そして一歩踏み出しながら城壁を力づくで上ってくる残党に向かって叫んだ


「いいかテメェ等!!この青龍斬馬刀が届く範囲に入ったその瞬間、死んだと思えぇぇぇ!!覚悟はいいなぁぁぁ!!」


「あ、雨さん!?挑発してどーすんの!?」


焦る晴れの日だが、他の三人は肩で息をしつつも肩を落としやれやれと首を振る

どうやらこの性格は矯正できないようだ

仕方なく晴れの日もまだ少し痛む腹の傷と先から違和感の多い胸を抑え、紅銃を構える


「いーんだよ、それじゃ行くぞっ!!っとそうだ、もうすぐ撫子上がってくるから間違って撃つなよ?」


「え!?戦場に来るの!?」


今まで救護班は戦場に来ない者だとすっかり思い込んでいた晴れの日は雨の日の言葉に一瞬驚き出だしが遅れた

その一瞬の間ですでにアナザーの残党はかなりの数接近しており、雨の日は既に交戦を開始していたのだ


「怯むな!!二人以外はけが人だ!!まずそいつらを潰せ!!」


どうやら相手も中々頭が切れるようだ

しゃちほこの土台にもたれる三人目がけて四人がかりの男が剣や斧、手に雷を纏ったものまでが一斉に襲い掛かる

その瞬間を見た晴れの日は、目の前から切りかかってくる残党の剣を紅銃で受け流し、その鳩尾に膝蹴りを食らわせて沈ませた後振り返り銃口を彼らに向けた

だが、すぐにそれが無意味だと気付く


「おっと気を付けろ?その水に触れると木端微塵だぞ」


三人をすっぽり覆うドーム状の水がこれもまた激しく動きチェーンソーの効力を持っている

その水を切れると思い込んだ残党は各々獲物を振り下ろすがその獲物が水に触れると同時に跡形もなく消し飛び、拳で殴った男は、なんのラグもなく腕が消し飛ぶ


「ははっ・・・流石雨さんっと!!」


「よそ見かよオイオイ!!」


晴れの日がその光景に目を奪われていたために敵に隙を与えてしまったが、振り下ろされた槍は虚しくも空を切る結果に終わり、振り切った後にうまれる隙に晴れの日は熱線を撃ち込み残党は絶命する


「お!今のはいい回避だ・・・っとちょいしゃがめ!!」


背後から雨の日の講評と行動の合図が耳に飛び込み考えるより早く晴れの日は上体を前に倒し顎を引いて背中を丸める

その上に、何か重たいものが乗る衝撃を感じ一瞬体が不安定になる

重みの正体は雨の日が薙刀をもたない片手を突き体を大きく開きながら晴れの日を飛び越えたからである

そして背中から重みが消えた瞬間、雨の日が飛び越えた方向から薙刀で一掃された数人の断末魔が聞こえ鮮血が舞う


「晴れ!!俺の前方横の二人頼む」


「OK!!」


自分の方へ駆けてくる残党二人の心臓を的確に射抜き、若干の心苦しさを抱えながらも晴れの日は紅銃を雨の日の声がする方に向ける

その先では雨の日に向けてマシンガンを撃つ残党と、雨の日の言う通り両横から長い槍を突き出す残党が目に入る


「そ、らよぉぉっ!!」


雨の日は放たれたマシンガンの球をすべて薙刀を手のひらで前方に回転させ扇風機のように弾く

当然その光景を見た残党は目を見開き一瞬マシンガンの手が緩まった。だが、そう思ったのも束の間

横から槍が雨の日の頭と足目がけて突き出される

だがしかし雨の日はその日本の槍を軽々と超える高さに跳び上がり薙刀を振り下ろしながらマシンガンを持つ男を左右に両断して見せた

まさか槍を飛び越えられるとは思っても居なかった残党二人は雨の日の姿にあっけにとられて晴れの日が放った二本の熱線に気付くことなく事切れる


「流石ですネ・・・っと兄ちゃん気が付きましたカ?」


水の防御内で嵐の日が雪の日の肩をつかみながら体を起こす

その様子を少し心配そうに見ながらも雨の日の動きで目で追っている


「あぁ、少しは動けそーだ・・・あの天パ、いつもはあんなに無気力なのに近接においては最高最強だからな・・・」


晴れの日が紅銃で着実と一人ずつ減らす中、雨の日はその薙刀を横に薙ぎ払い襲いくるもの、一歩後ろに下ったものもまとめて切り裂いていく。さらにその薙刀の動きが止まることはなく背後ならばとレーザーを撃ってきた残党をバック宙をひねりながらの攻撃でレーザーごと両断してみせる


「晴れ!!後ろあぶねぇぞ!!」


まるで千里眼でも持っているかのような的確な言葉だった

雨の日は今晴れの日に背を向けて一歩前で戦っている。それなのに晴れの日の後ろの状況まで把握しているのだ

叫ばれた晴れの日は紅銃を左わきから突き出し引き金を引き振り向くことなく気配だけで打ち抜いた


「た、助かった雨さん!!」


「く、そ・・・こいつら・・・ばけも・・・ん、か!?」


たった今晴れの日に撃ち抜かれた残党が苦しみもがきながらも言葉をひねり出す


「おいおい晴れ!集中力たんねーぞ!」


「くっ・・・しゃーねぇ!無我!!」


晴れの日の周りの空間がゆっくりに変わる

そして気配が完全に察知できるようになり、たとえ背後に敵がいようとも完璧な反応が出来よう

だが、持続時間はもって15秒


「せいっやぁぁっ!!」


左から手裏剣が飛んでくるのを感じた晴れの日はその場でしゃがみ、今放たれた軌道に合わせて熱線を打ち出し、その熱線が確実に当たると信じ次の行動に移る

残り14秒


「雨さん!!後ろお願い!!俺遠くの遠距離堕とす!!」


「オーケッ!!」


まるで月にいるかのような跳躍で軽々と晴れの日の上を飛び越え、晴れの日を追ってきていた残党の列に真一文字に切り込み、武器もろとも切断する

その隙に晴れの日は歩きにくい瓦の上を足からスライディングして目の前にそびえたつ難いのいい男の股下を潜り抜けた

残り12秒


「ふぁっ!?」


「遅いっ!」


まさか股抜きされるとは思いもよらなかったのかテンパって自分の股の間から顔をのぞかせる。足を大きく旋回しその反動で跳ね上がった晴れの日はその鼻っ柱に思いっきりけりをお見舞いしてやり体制が不安定になった男の上に飛び乗り紅銃を、後方に構えている残党目がけて人数分引き金を引き、無我によって底上げされている集中力で寸分も狂わず打ち抜く

残り7秒


「晴れ!!飛べ!!」


「えっ!?」


いきなり飛べと叫ばれた晴れの日は訳も分からないまま言う通りにその場で目いっぱい跳び上がる。だが無我で強化されているとはいえ、高さは精々自分の身長の半分ほど

だが、雨の日にとってはそれで十分なのだ


「・・・なるほど!!」


「結様と解様の敵ィィィ!!」


跳び上がった晴れの日はその光景を見てつぶやき口角を上げた

雨の日は姿勢を低く構え、足に水を纏ってまるでウォータースライダーのように滑り込、目先に弧を描いで並ぶ残党をなぞるようにして薙ぎ払い反撃の余地も防ぐ手立てもなく木端微塵に切り裂く

そして晴れの日はと言うと、雨の日を追って叫びながら突撃して来る不規則な並びの残党目がけて渾身の熱線を放つ

その熱線に対して晴れの日は新たな試みをしてみたのだ

打ち出したその後、熱を屈折させてすべての残党を打ち抜けないか、と

残り4秒にまで減った無我の持続限界をすべてその一撃に乗せ、屈折をイメージし拳を強く握る


「ま・・・がれぇぇぇぇぇえ!!!」


その瞬間、晴れの日の目に映る残党は全て、焼ける匂いを発しながら

膝から崩れ落ちたのだ・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ