第十五話
第十五話
「アイツは俺がやる。雪は・・・その・・・」
「おヨ?なんですカ?」
言いずらそうに頭を掻いた嵐の日は目を合わせず今来た方角を指さして、冷や汗垂らしながらもいそくさと飛び上がり宋の後を追いだした
指を指したほうを雪の日は目を凝らしてよく見る・・・
すると見えてきたのは・・・
「あー!!兄ちゃん倒すのめんどくさくなったナー!!」
そう、嵐の日が担当していたはずの大量の変革者達だった・・・
「ふぅ・・・ここまで逃げれば流石に追いかけては来ないだろう・・・ん?」
木の上を飛び移り続け忍者さながらの逃走を繰り広げた宋はさすがに息が切れてきたので一度停止して後方を確認する。まず目に映るのは当然木。だが、その木々の草が何やら風に煽られてざわめいている
「おおぉう・・・?何かくる・・・か?」
まっすぐに見据えて迫りくる何かを目視しようとする
そして数十秒後に見えたのは、一人の銀髪の男が猛スピードで、木の枝を折りながら突き進んでくる様だった
そう、その男は嵐の日だ
「うげ!?しつこいなぁ!!」
再び木を蹴って宋は木から木へと飛び移る。だが、宙を飛んでいる嵐の日の方が断然早いだろう
二人の差は徐々に徐々に縮まっていく。だが、宋もどうやらそう簡単には捕まる気がないようで地面に降りたり草むらに飛び込んだりと嵐の日を錯乱して来る
「ちっ・・・腹立つ動き方だぜ全く・・・血が足りなくなるから手短にけりつけないと・・・」
一瞬だけ目を見開き突風を巻き起こし地面の砂を巻き上げて宋の足止めにかかる
いきなり砂が舞い上がったことに宋は困惑し一瞬足が止まる。その瞬間を見逃さずに嵐の日は上空から垂直にそう目がけて飛び込んだ
「おわっ!?」
「ようやく、捕まえたぞ!」
墜落に巻き込まれた宋はうつぶせでその場に倒れ込み、その上に嵐の日が立てないよう背中の中心である重心に足を置く
「くそ!!どけ・・・このっ!!」
「どけと言われてどくかド阿呆・・・まぁいいや。俺らの安眠妨害は万死だからな。ここで死ね」
「じ、自己洗脳!!」
「っ!?」
腕を振りかざしどこからか運んできた大岩を投げつけようとした嵐の日だったが宋の力が急にまし足を振り払って立ち上がったのを見ておもわず岩を投げ捨てて後方に跳ぶ
「この洗脳は・・・もう誰にもとけない・・・俺はただの殺戮マシーンだ!!」
自分に洗脳をかけた宋の見た目は先までと打って変わって、目は血走り筋肉は張り、欠陥が膨張している
禁じ手であることがヒシヒシと伝わってきた
だが、そんなものに感動を覚えている暇はない。嵐の日はこれ以上失血すれば不味いと本能的に悟り早期決着に乗り出した
「わりーがその洗脳、すぐに消えることになるな・・・俺が消すからな」
「ははははっ!!何をバカなことを!!やれるものならやってみろやぁぁぁ!!」
そう高笑いしながら宋は拳を振り上げて嵐の日目がけて飛び掛かる
だが、当の嵐の日はため息一つで動こうとしない
「短絡的だなお前・・・まぁいいや。死ね?」
「あぁ・・・んっ・・・!?」
足が動かない。不自然に思った宋は思わず自分の足を見る
だが、何も見えない。否、動かない
「無理だぞ。お前はもう動けないし何もできない。ただ黙って死ね」
先から死ね死ねと不謹慎な言葉を連呼する嵐の日だが、その言葉は確かに実行されつつある
宋が動けなくなった理由は単純だ
嵐の日が投げたワイヤが足を捉え、身動きを封じたのだ。もちろん超高速のその動きに気付けるはずもなく宋はただ恐怖の色を顔に浮かべた
「お、お前の能力は風じゃないのか!?なんだこの力・・・!!」
「うるせぇ脳筋。知る必要はない」
そしてもう一本のワイヤを嵐の日は投げつけてそれをぐるぐるに宋の体に巻き付けた
これでもう、宋は何もできないだろう
「や・・・やめ・・・!!」
「・・・悪いな。俺のこのワイヤがお前に触れた瞬間から俺の勝ちはきまってんだ」
それだけ告げた嵐の日は手に握ったワイヤの本体を強く下に引き下げた
その瞬間すべてのワイヤが宋の体を締め上げ、細く斬れやすいワイヤが宋の肉を裂き・・・宋の人生は幕を下ろした
それと時を同じくして雪の日の戦場では、洗脳をかけていた変革者が死んだことでこれまで強制的に戦わされていた変革者達は糸の切れた操り人形のようにその場に倒れ込んだ
「おヨ?兄ちゃんかナ」
大方嵐の日が解決してくれたんだろうなと解釈した雪の日は作りかけていた氷塊を消し去り、先の戦いで全身氷漬けにした変革者の氷も遠隔操作で溶かしておいた
「さて・・・と、この子たちは他の人に任せてボクは兄ちゃんと合流して晴れ達と合流しますかネ」
すこし寿命を削りすぎたと雪の日は危惧しつつも、戦闘を久しぶりに楽しめたことに満足しつつ、夜の森の入り口で嵐の日を待つ
するとがさごそと草が揺れ、銀色の髪を返り血で赤く染めた嵐の日が現れた
「お、雪。終わったぞ」
「みたいですネ~血は大丈夫ですカ?」
左からドクドクと流れる血を気にしつつ雪の日が心配そうに尋ねた
「まぁ、この戦闘が全部終わるまでなら持つさ。それより早く行くぞ」
そういうとまた風を二人にまとわせてフワリト浮かびそのまま晴れの日達いる南口にまで飛び立っていった