第十二話
第十二話
「だ、大丈夫ですカ・・・?」
「だいじょばないぃぃ・・・」
今は任務当日。名古屋城までの移動は新幹線だ
そう、つまり晴れの日は現在ダウン中なのだ。やはりどうにも乗り物に弱い晴れの日は、新幹線が動き始めるとほとんど同時に酔い、グロッキー状態で約一時間耐えねばならない自体に陥ってしまった
ちなみに、この新幹線は二車両が変革者達で貸し切られ、晴れの日達四人だけでなく、他の組である花の園や聖騎士、エデンの園など中二的ネーミングの様々なグループが乗っている。もちろん誰もが精鋭で、これから始まる戦いの壮大差を空気で醸し出していた
「おいおい・・・吐くならトイレいってくれよ?」
「はぁ・・・ほんと情けない・・・」
雪の日は少しとはいえ心配してくれるが後の二人は全く気に留めていないようだ。まぁある意味では気にかけてはいるのだが・・・吐かれた時避けるために。
それにしても酔い止めは飲まないのだろうか?
「うぅぅぅうう・・・気持ちワリィ・・・」
口元を両手で押さえながら顔を真っ青にしている晴れの日。今にも吐き出しそうだがなんとか堪えている。その必死さは三人にも十分伝わっているようで若干ではあるが心配そうなまなざしを送りつつある
だがこればかりはどうにもしてやれないのが本心だ
「あと三十分もすればつくわよ。耐えなさい」
「ふ、ふぁい・・・うぷっ・・・」
そして彼ら変革者を乗せた変革者は名古屋目がけて進んでいく――――
「どうやら天候荘の連中が動き始めたみたいですよ」
「そう・・・ありがと殺音ちゃん。さて、結に解、準備しておきなさい?数時間以内に出陣よ?」
白雨の部屋。両腕を義手で装備した梶原が天候荘の変革者達が名古屋城へ向けて防衛線を張りに行ったことを告げた
それを聞いた白雨は特に顔色を変えることなく答え、二人を呼んだ
「は~いよ!」
「たのし~み!!」
まるで戦闘狂のような不気味な笑みと、不気味なほどの白い歯を光らせた二人組が出陣がまちきれないかのように飛び跳ね、乾いた笑い声を出した
「戦闘参加できずすみません・・・まだ義手の最終調整がありまして・・・」
今回の戦闘をパスすると事前に伝えている梶原だが、白雨に忠誠を誓っている身としてはいかんせん、心苦しい
だが、白雨はそんなことを気にして咎めるような人ではない。優しく微笑み、梶原の方を見て、義手に手を添えた
「大丈夫よ・・・?ここは解と結に任せましょう!よろしくね、二人とも?」
「も~っちろんだよ!!」
「おいしい龍脈ぷれぜ~んとだよ!!」
そしてアナザーの進撃準備はちゃくちゃくと整っていく―――
新幹線に揺られる事一時間弱。ようやく晴れの日達は名古屋にまでたどり着いた
だが、約一名すでに戦闘不能者が見える。もちろん晴れの日だ
情けないことに雪の日と嵐の日に肩をかりながらヨタヨタとホームに現れた
「もう・・・二度と乗らん・・・!」
「それは無理デスヨ・・・」
なんとか嘔吐だけは耐えたものの、今もし戦闘が開始されれば晴れの日は即死確定だろう。それほどにまで、彼の顔色は悪い
なんとか自分で建てるようにまでは回復したいところだが、ここから名古屋城まで今度はバスを使うそうで、晴れの日の残機は限りなくゼロになるだろう
「諦めて死んで来い・・・」
ポン、と晴れの日の肩に手を置く嵐の日
「うへぇ・・・もう、帰っていい・・・?」
「ダメよ。観念しなさい?」
ちなみに、晴れの日の意識はバスに乗車してすぐに途切れたそうだ
誰かが殴ったのか、限界値を超えて晴れの日の体がダウンしたのかは謎だが、なんにせよこれ以上苦しまなくて済んだ、と目が覚めてから彼は語ったのだった
「さて、俺らの担当範囲はどこなんだ雪」
名古屋城前。白い壁に緑色に近い深緑の瓦。そして屋上、いや天守閣にはかの有名なしゃちほこが二頭そびえている
近くで見る機会など無かった晴れの日は物珍しそうにその様子を眺めていた
「えっとデスネ~・・・あぁ、北の地域デスネ。他にも数班いますがメインはボクらですヨ~」
その言葉を右から左に聞き流しているかのようなぼーっとした表情で名古屋城を見つめている晴れの日に雷火の日のチョップが繰り出される。すぱんっと言い音が夕焼けの空に鳴り響く
「って!?なにすんだよ!!」
「なに、じゃないわよ・・・ほら、持ち場に着くわよ」
呆れた顔で指をくいっと手前に引く雷火の日。晴れの日はちぇーっと口を尖らせながらもその後を追い、任務の担当地に赴くことにした
だが、どこか名古屋城が気になって仕方がないのだ。自分の意識とは別の、無意識な感覚、とでもいうべきだろうか?とにかくなにか引っかかる
「・・・あとでまた見に来ていいかな?」
「はいはい・・・氷でよければ名古屋城、作るのでソレで我慢してくださいナ・・・」
「えー・・・」
どうやらこれ以上名古屋城に構ってはいられないようだった。すでに戦闘要員の変革者達は準備万端
それぞれ制約の道具や準備運動を始めている
流石に、今から準備してもすぐに攻めては来ないだろうが、やはり気持ちの問題なのだろう
これほどまでの大がかりな作戦に参加すること自体初めての晴れの日と雷火の日は緊張して口の中が乾くのを感じていた―――




