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変革者  作者: 雨の日
第四章~雨降リシ夜二~
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第六話

第六話


そんなこんなで訓練に明け暮れる事数週間たった頃のとある日の事

今日まで毎日訓練の連続で心身共に疲労がたまり始めたころ合いを見て雷の日が


「一日くらい休もう!てきとーに町でもぶらぶらしてきなよ!」


と急きょ休暇を提案したので折角のこの機会、晴れの日と雷火の日は息抜きにと天候荘から離れ町に繰り出すことにした

当日の朝になり、身支度を整え万が一があるといけないと銃を鞄の一番下にしまい込む。いくら変革者で護身用だからとはいえ街中で銃を見せびらかすわけにはいかないので鞄のそこは二重の層になっている

気温は18度前後と快適。灰色がかったジーパンに白いシャツ。上着に一枚赤いパーカーを羽織り雷火の日が過ごす部屋のドアをノックする


「おーい雷火。準備できたか?」


「今出るわ」


そう告げられて晴れの日は少しだけドアから離れて待つ

と、すぐに足音が聞こえドアが開かれる


「お待た・・・せって何じろじろ見てるのよ・・・」


「あ、いや・・・ごめん・・・なんか、すげー珍しいものを見た気分」


「失礼ね。今日は任務でもないんだしこういう格好してもいいじゃない。むしろわたしはこういう格好の方が好きよ!悪い!」


晴れの日が驚くのも無理は無い

今日の雷火の日の服装は、青いショートパンツで上は肩の部分だけ見せたクリーム色の七分丈の服、それが若干透ける仕様で中に来ている黒いシャツが大人っぽい艶を見出している

髪はいつものキリッとしたハーフアップから一点。肩下まで降ろしている。初めて降ろしているところを見たが思っていたより髪にウェーブがかかっておりフワッとした優しい印象がある

まさに別人のような印象だ


「全然!!むしろいいと思うよ!その、似合ってるって!マジでかわいいって!」


雷火の日に逆切れされてしまい一瞬テンパりつい本音を漏らしてしまった

お褒めの言葉ではあるが、存外照れ屋な雷火の日にはタブーだ。そこまで直球を勝負を仕掛けると・・・


「~っ!!いいっ!着替えてくる!!晴れの日のバーカ!!」


「ごめんごめんごめん!?いや、ほら冗談・・・ではないけどそのついウッカリと言いますかね?とにかく着替えなくていいから!ほらさっさと行こうぜ!!」


心なしか、否。確実に頬を赤らめた雷火の日だが晴れの日の言葉に数秒悩んだ後、渋々部屋から出てきた

しかし顔の赤面はいまだ健在。若干俯いたままのその姿はいつもの雷火の日からは想像もできない一面だった

なるほど、ツンデレちゃんというのも頷ける


「・・・そういえばなんだけれど」


「ん?どした?」


歩き始めたその瞬間、雷火の日が何かを思い出したかのような顔で晴れの日を見据えた

急に雷火の日が止まったので晴れの日が数歩前にいる構図で、そのまま晴れの日は顔だけ振り返り気持ち前に進みながら答えた


「・・・どうしてわたし、あんたと二人で町になんて行こうとしているのかしら?」


言われてみれば確かにその通り

雷の日に町への休暇を持ち掛けられたときに二人一緒だったからだろうか?それとも何週間も毎日顔を合わせて共に訓練に明け暮れたからだろうか?

とにかく思い直してみれば何も一緒に出掛ける必要はないではないか


「確かにそうだな・・・でもまぁ折角だしいーじゃん?ダメか?」


晴れの日としては最近棘の少なくなっていた雷火の日ともっと距離を縮めたいと思っていたのでこういう数少ないチャンスを逃したくはないのだ

もちろん、距離を縮めるというのは友情の面で、だ


「はぁ・・・ここまで来ておいてやっぱりやめる。のはさすがにどうかと思うわね。仕方ないわ、行きましょうか」


「よし決まり!まずどこ行くよ?」


町に行くとは言ったものの、それ以外の予定を特に決めていなかった二人

そもそも町に行くのも雷火の日は初めてで、晴れの日も前は近所に住んでいたのだがその町に覚えはないのだ

だから何があるのかさえ分からない


「こういう時は男がエスコートするものよ・・・?」


「えぇ!?まじで!?」


「・・・そのマジ、は何に対するものなのかしら」


男が女性をエスコート。その行動は俗に言うデートの時だけだと晴れの日は思っていたのでまさか自分がエスコートすることになるとは思いもよらなかった

だがよくよく考えてみれば女性と男性が一対一で出かける時点でこれはデートなのかもしれない

そんな思考が一瞬で晴れの日の脳内を駆け巡り思考がショートしかけた

と、そんな時すくいの手が現れる


「Hy!お二人サーン!」


大柄で筋肉質。英語訛りのある黒人の長身から声をかけられた。フレディだ

そしてその陰にもう一人


「うわっ!どうしたの雷火!?そんな可愛い恰好・・・」


見慣れた白衣を着て両手で大きな段ボールを持ち雷火の日の姿を見て驚いている、撫子だ。確かに驚くのは無理ないだろう


「フレディ!撫子さん!珍しい組み合わせですね?」


「ナデシコちゃんに荷物持ちたのまれてね!help herってことだよ!」


「そう。大変ね。それと撫子、わたしがどんな格好をしようが自由でしょう?」


撫子の一言に敵意むき出しの雷火の日だが、服装が穏やかだろうか、いつものような覇気は感じられなかった

それは撫子も同じのようだ


「そ、そうなんだけどね・・・あ、もしかして晴れの日君とデートかなっ?」


含みのある笑みを浮かべて雷火の日をおちょくる

だがダメージが大きかったのは雷火の日でなく晴れの日だった

つい先に考えていたことを言われただけあってドキッとした


「まぁ世にいうデートね。もちろんわたしはそんな気ないけれど。むしろこいつをデッドしてやりたいわ」


ばっさりと言い放たれた一言に心のどこかで残念がる晴れの日

いつもの雷火の日が可愛くない、というわけではないが正直言って今日の雷火の日は可愛いと思う晴れの日。その相手にそんなことを言われてはショックだ


「ハレ!dateはどこへgo to?」


フレディのお陰で大事なことを思いだした

そう、まだ行き先が決まっていないのだ


「それが・・・まだ決まっていないんだ・・・フレディおすすめは?」


フレディならば何か知っているだろうと尋ねる

その隣では雷火の日と撫子がいつの間に始まったのか雷の日自慢雨の日自慢を勃発させていた。ケンカするほど仲がいいとは言うものの、この2人は果たしてそうなのだろうか・・・


「ソダネー・・・よくハニーと行くのは、planetarium!」


素晴らしいネイティブな発音に一瞬理解が遅れたがゆっくり聞けばなんとなく意味が伝わってきた

プラネタリウム。確かに彼はそういった

だがもう一つ気になるワードも・・・


「プラネタリウムか・・・いいね!ってフレディ奥さんとよく行くの?」


「YES!my ハニーはステキだよ!今度あわせてあげるよ!!」


「お、おう・・・!是非是非・・・」


なんのためらいも恥もなく自分の奥さんの自慢をできるフレディに晴れの日は尊敬とあこがれを抱いた

そして、その奥さんがどんな人なのかものすごく気になる


「あー!ちょ、フレディ!この薬品早く運ばないと!ごめんね、楽しんできてー!ほらフレディ、はやく!」


突然横から撫子が慌ててフレディの太い腕をつかみ走り去っていった

どうやら荷物を速く運ばなければいけなかったのだろう

フレディが何か言いたげだったが撫子に引きずられてしまい手を振るだけで精いっぱいだった

だがプラネタリウムがあるのはいい情報だ。雷火の日がじっとしているだけの物に興味があるかは分からないがとりあえずの目的地が決まった


「・・・あわただしいわね。それで?行き先は決まったの?」


撫子と言い合ったからか若干息が切れているような気がした。晴れの日はとりあえず行き先を秘密にしようと考え行けばわかる、とだけ答えた

渋々雷火の日はその晴れの日の行動に、騙されたと思って付き従うことにしたのだった










「雷火、クレープ屋台この道沿いにあるみたいだがどーするよ?」


天候荘から歩くこと15分、ようやく町の入り口付近にまでたどり着いた

商店街がそばにあるのか祭りを昼間っからやっているかは分からないが、かなり多くの人の楽しそうな声が聞こえてくる

そしてクレープの甘い香りも


「食べたいっ・・・コホン、今はいいわ。後で食後に食べるから」


一瞬目が輝いて飛び跳ねたようにも見えたがどうやら幻覚として処理しておいた方がよさそうだ


「わかったわかった・・・じゃぁ先にアレいくぞ!」


「・・・?」







「へぇ・・・あんたがプラネタリウムなんて興味あるとはね」


街中にあった町の案内図を見て何とか道に迷うこともなくプラネタリウムにつくことができた

ここのプラネタリウムは天井が丸いドームで覆われた構造で独立したものとして観光の名所としてそびえていた

入り口には既に何人ものお客が並んでいる

中にはカップルからお年寄り、小さな子供たちまで見える。どうやらかなり人気のスポットらしい

開演は間もなく。晴れの日と雷火の日はチケット売り場の列の最後尾に並ぶ


「プラネタリウムってよりかは星に興味があるな!俺ほとんど星座とか知らないから・・・」


「へぇ?ならしっかり勉強することね。どうせ頭の中空っぽなんでしょ?たくさん入ると思うわよ」


服装がいくら可愛くなろうとも中身はいつもの雷火の日のようだ

相変わらずの毒舌に晴れの日はガクッとうなだれる

列がスムーズに進み始めて、もうすぐ二人の番だ


「空っぽじゃねーよ・・・ってか雷火は星とか興味あるのか?」


そうね、と少し考えてから雷火の日は答える


「昔は、星を見るくらいしか楽しみが無かったから・・・まぁそれを差し引いても好きだけれどね」


「ん、そーなのか~。そいや、よくプラネタリウムの雰囲気で寝ちゃうって聞くよな」


二人の番がようやく回ってきた

ガラス窓越しに晴れの日は二人分のチケットを注文する。一人大人料金で900円。手ごろと言えば手ごろな価格だ

合計で1800円。ここはやはり自分がおごるところ、と財布から紙幣を二枚取り出し窓の下のスペースに置く


「あら、ありがとう。そうね・・・わたしはプラネタリウム初体験だから何とも言えないけれど、寝たら勿体ないわね」


「最後まで起きてられるか、勝負すっか?」


「くだらないわね・・・まぁいいわよ?そうでもしなきゃあんた寝ちゃうものね」


お互い初体験のプラネタリウムで内心興奮気味であり、実際寝ることはまずないだろう

だがなんとなく世間の情報に翻弄され、寝てしまう心配がお互いの心中に深く残っている

特に雷火の日は晴れの日には死んでも寝顔を見られたくはないだろうからなおさら寝るわけにはいかない


「んな!ねねーよ!賭けてもいいぞ!この後のクレープ!」


「・・・言ったわね?男の二言はあり得ないから覚悟しなさい?」


「望むところだ!最強の変革者たる者、眠気なんかに負けてなるものか!!」


一応周りの一般人には変革者、のワードが聞こえないよう小声で話しながら晴れの日はバシッとガッツポーズを決める

対する雷火の日もクレープが懸かっているからかかなり乗り気な様子

腕を組み、睨みをきかせる


「ふっ・・・眠気の偉大さを、あんたは知らないのよ!さぁ行くわよ!」


戦場に向かう戦士のごとく殺気を纏った雷火の日はチケットを握りしめてずんずんと中の受付の元まで歩き出した

あえて言おう

ここはプラネタリウムであり、また寝ようが寝まいが本人が楽しめたと思えればそれでいい空間だ








と言うわけで、結論から述べておこう

プラネタリウムにおける睡魔はこの世界において最強と言えるのではないだろうか?

何故なら二人は開始10分もしないうちに眠りの世界に旅立って行ってしまったからだ・・・

あぁ、確かに睡魔は恐ろしい

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