第十八話
第十八話
「晴れの日、起きなさい。着いたわよ?」
ヘリポートのゆっくりと着陸し、曇りの日が深髪を連れて先に降りる。続いて運転手も降り、なにやら車体のチェックをしている。だがどうやらなんの問題も無いようでほっと胸を撫で下ろしていた
だが全員降りたところで晴れの日が起きるわけもなく、いまだに苦しそうに眠っている
その肩をつかみ半ば強引に揺らす雷火の日
「起きろ!このバカ!!」
警棒で鳩尾を思いっきり叩く
衝撃で体が座席から数センチ浮かび上がり、晴れの日はうなされながら目を開けた
「雷火・・・?あれ、ここは?」
「帰ってきたわよ」
目が覚めたことを確認した途端雷火の日は踵を返しヘリから軽く飛び降りる
まだ視界が完全に復活していない晴れの日ではあるがここが天候荘であること、ヘリから降りなければならない事の意識だけで足を動かした
するとどうなるか。当然転ぶだろう
「のぅわっ!?」
「きゃっ!?」
盛大に躓き、盛大に転んだ。そして運悪くあるおかたを下敷きにしてしまった
「わり、大丈夫・・・です・・・か・・・雷火様・・・」
あるおかたとはもちろん雷火の日だ。晴れの日が転び、その下敷きとなった雷火の日は全身をピクッと痙攣させる
その動作だけで、晴れの日の意識は完全に覚醒し、自分のしでかしたことの重大さを知る
「晴れの日。いいからそこを降りて頂戴」
だが、珍しく雷火の日が怒鳴ったり殴りかかってきたりしない
物腰柔らかく晴れの日に退くように促したのだ
「え、あ、はい・・・」
「ふぅ・・・」
呆気にとられつつも上から降りる
そして雷火の日もゆっくりと立ち上がり、警棒を構えた
「死ネ」
「ほんっとにすみませんでし・・・ぶべるぁぁ!?」
推定。82ヤード
ナイスショット!!
雷火の日が晴れの日を吹き飛ばしたその数十分後
なんとか生存を果たした晴れの日は雷火の日の元に急いで戻り正式に土下座をした。なんとかお許しを貰えたものの、やはり内心では怒っているのだろう。いまだに口を開こうとしない
「失礼します」
「いててて・・・雷火ちょっと待ってくれよ」
ヘリの中で言われた通り雷の日の部屋に向かった二人は軽くノックをしてから雷の日の返答を待ち、入室する
部屋の中にはいつものようにボスの部屋と最近雷の日が名付けた自分用の豪華な椅子に座り二人を出迎える雷の日と、ソファに寝そべりぼーっとしている雨の日が居た
「任務完了しました」
「うん!やったね二人とも!」
椅子から立ち上がり入り口に立つ二人の元に歩み寄り雷火の日の頭をポンポンと撫でる
撫でられた雷火の日はというと、当然顔を紅に染め上げ俯き照れている
これが世に聞く「撫でポっ」というものだろうか・・・
「ふにゃぁぁん・・・っ」
「ら、雷さん!その辺にしないと雷火が!?」
素知らぬ顔して撫で続ける雷の日だったが、実は雷火の日は失神寸前だったのだ。高身長の雷の日からは見えないだろうが、すでに雷火の日はオーバーヒート寸前。目をぐるっぐるに回しながらふらふら~とし始めていた
「おぉ!?ら、雷火ちゃん!しっかりして!!」
「ら、雷さん!とりあえずソファに!」
「いや、おめーらアホか・・・」
珍しくまともな意見をぼそりと呟いた雨の日の先では、ついに倒れてしまった雷火の日を受け止める晴れの日と慌てふためく雷の日の姿があった―――
「あぁ・・・雷様・・・」
ソファで目を回している雷火の日をよそ眼に晴れの日は雷の日、雨の日と向かい合って座る
「雷火ちゃんごめんね・・・しばらく寝かせてあげようか・・・」
「ったくお前がばかすか撫でっから・・・」
「申し訳ない」
背もたれに腕を回し片手で煎餅をむさぼる雨の日はさも呆れたように雷の日を窘める
雷火の日をダウンさせた張本人は小さく座りキチンと反省しているようだ
「ま、そいつは置いておいて・・・晴れ、任務ごくろーさん」
「え、あ、おう!」
「そこで雷たちと話し合ったんだが・・・お前ら2人にも知っておいて貰たいもんがあってな?」
体制こそいつもの通り不真面目だがその声、目付きは真剣。空気が重くなるのを感じる
特に雨の日の目には一筋の不安が宿っていたのだ
「それは・・・なに?」
固唾をのんで次の言葉を待つ
しかし口を開いたのは雷の日だった
「アナザーの目的の龍脈・・・についてだよ」