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変革者  作者: 雨の日
第三章~轟く雷、火災を起こさん~
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第十六話

第十六話



「子供を殺すのは気分が悪いが死んでくれるかなっ!!」


腰元からナイフを取り出し逆手で取り出す。どうやら雷火の日の読みは当たっていたようで、アイスを舐めている

つまりは何かしらの能力が発動するのだ。二人は攻撃に備え低姿勢に構える


「一人で足りんじゃね?俺ら待機っすか深髪さん」


「そうだな。佐藤一人で足りるだろう」


「舐められたものね」


明らかに舐めた態度に雷火の日が不機嫌になる。だが気を抜くのは確かに危険だ

相手は同じ変革者で、護衛をしていることを考えるにそれなりの実力は持っているだろう


「目の前で会話とは俺も舐められてるね~!」


声の元は想定していなかった後ろからだった

それも、晴れの日の真後ろだ

完全に不意を突かれてしまう。佐藤が振り上げたナイフは的確に晴れの日の首を狙っている。だが、それくらいなんてことはない


「実際一対一なら勝てそうだし、なっ!」


「な、にぃ・・・げぼっ!?」


振り下ろされるナイフを一切見ずに晴れの日はその場にしゃがみ込み、ナイフが晴れの日の体を捉えるよりも速く、的確に銃を佐藤の鳩尾に叩き込む

その攻撃は、なんの防御もせず首を貰ったと慢心していた佐藤にとって精神的にも大きな痛手だろう


「それらしい動きにはなったわね」


近接戦闘がメインの雷火の日は上からの物言いで晴れの日の動きを評価する

確かに雷火の日の言う通り、かなり晴れの日の動きは洗礼されており、前衛を張れるほどには成長を果たしていた

これも、雨の日の指導のお陰なのだろうか?あんないい加減な指導でここまで成長できると信じられない


「ごほっ・・・げほっ・・・がきぃ・・・!」


おなかを抱え膝から崩れ落ちていく佐藤。完全な不意打ちが決まり、ダメージが大きいのだろう。呼吸もろくにできていない


「俺だって、天候組の戦士だぜ?舐めてもらっちゃ困る!!」


「はいはい。決め台詞は後にして頂戴。残った二人を片付けるわよ」


格好良く銃をチャキっと構える晴れの日だが当然のごとく雷火の日に流されてしまう

だがその如何にも余裕そうな二人の振る舞いに、アナザーの変革者達もさすがに危機感を覚えたようだ

残った二人が一歩前に出てくる


「深髪さん・・・ちょいと本気でやらねぇとですぜ」


「・・・仕方ない。好きに暴れろ」


「ほいきた!」


深髪の号令で一人が腕時計を両腕にはめる。もう一人は特に変わった動作をせず、そのままの格好で戦闘の構えをとる

対する晴れの日、雷火の日は一応雷火の日が前衛。晴れの日が後方の布陣で迎え撃つ


「晴れの日、一人足止めしておいて」


「オーライッ」


駆け出して、襲いくる二人の変革者の内腕時計を装着したほうの男を雷火の日に託し、もう一人目がけて熱線を放つ晴れの日

だが難なく避けられてしまう。だがそれでいい。今の熱は牽制だ。むしろ当たらないのが普通なのだ

もちろん熱線を打たれれば足は止まる。そしてこれで一対一の構図が完成したのだ

あくまでも、雷火の日か晴れの日どちらかが敵を倒すまでの話だが


「お前の相手は、俺ってことで!」


「いーけどにーちゃんかよぉ~そっちのねーちゃんの方がよかったぜ・・・」


残念そうに肩を落とす男だが、その動きを見ていても気の抜けない強さが感じて取れる

動き一つとってもなめらかなのだ。先頭スタイルに関係しているに違いない


「やめとけって・・・あいつマジで性格きついぜ?」


戦闘前の戦士の雑談にあいても気前よく乗ってくれる。だがこの時間が緊張感をより増すのだ。お互いにお互いの出方をうかがい、いつでもどんな攻撃が来ても対応できるようにしている。そして両者がにらみ合い、殺気と殺気がぶつかり合う

一方雷火の日は


「悪いが、俺は仕事はさっさと終わらせたい派なんでね。前置きなくいくぞ・・・!!」


「あら奇遇ね。わたしもその方がうれしいわ」


お互いに短気なようだ

男は、自分の腕を剣に姿を変えて真横に一閃きり付ける

だが雷火の日はそれを待ったく動くことなく片手で持った警棒で防ぐ


「ほう・・・?」


防がれたことに落胆するよりも、感嘆する男。その剣になった腕がギラリと光を反射させ鈍く輝く


「あんたの剣、軽いわね?」


「割と本気で切り付けたのに・・・なっ!」


今度は左腕を剣に変え上から切りかかってくる

もちろん雷火の日にはその攻撃も見切っている。素早く頭上に警棒を横に構え重力を上向きに変換し、重さを変えた

剣と警棒がぶつかり合い、周りに暴風が一瞬吹き荒れた


「ふふっ、やっぱり軽いわね?修行がたりないんじゃ・・・ないっ!!」


受け止めた剣をそのまま警棒で跳ね返し、隙のできたその胴に一撃を叩き込む

綺麗に吸い込まれたその警棒は男の体から鈍い音を立てて骨を砕く


「げふぅ・・・!?」


「ほら、修行不足」


一撃で沈ませる雷火の日の攻撃は何度見ても恐ろしい

横目でその一部始終を見ていた晴れの日はその様子を見て少し身震いしたがすぐに目の前の敵に集中する


「さて、と。俺もさっさと片付けるか!」


「はいはーい、しっかしあいつもあっさり負けたのな・・・」


どうにも晴れの日を舐めているような態度の敵に苛立ちを覚える晴れの日

だがここで怒りに任せて動くわけにはいかない

ゆっくりと相手の動きに合わせて行動しなければどんな能力なのか分からないので危険だ


「さて、そろそろ行くかな!!」


その場でふわっと浮き上がり上空から落下して来る。武器は無いようだ。拳で勝負を仕掛けてくる

だが、たとえ上空からの動きであっても雨の日との訓練の成果は発揮できる


「飛んでる奴には逆に・・・飛び込む!!」


落下して来る男に対して垂直に飛び上がる晴れの日。当然そんな行動思いもよらない男は驚きが隠せない


「うぉっ!?」


「そしたら背中を取って・・・」


ゆっくりと雨の日の訓練を復唱しながら行動を実施していく

落下していく男の背中をしっかりと捉え、好機を生む

そして後頭部目がけて踵落としを食らわせる


「ごふぁ!?」


「せいやぁああ!!」


地面に顔面からたたきつけられる。綺麗に決まった踵落としに晴れの日は自分の成長を実感する。だが、そんな余韻に浸る暇なく男ががばっと起き上り反撃の拳を打ち込んでくる

もちろん、しっかりと警戒していた晴れの日は繰り出された右ストレート外側に回転して避け、銃口を男のコメカミに突き付ける


「降参してくれると、助かるんだよなー・・・?」


「は・・・誰が降参する勝かての!」


どうにも負けず嫌いなようだ

右腕を大きく横に薙ぎ払い、晴れの日をその場から遠のかせる。そして十分な距離を取り、次の行動に移る


「そーれそれそれぇぇ!!」


両の拳で目にも止まらない速さでのジャブを繰り出して迫ってくる

だが、微動だにせず晴れの日はじっとその拳を目で追い、少しだけ口角を吊り上げニヤリと笑った


「雷火!俺あれ試してみるわ!」


「お好きにどう・・・ぞっ!」


雷火の日は背後から迫ってきていた一番最初に沈んだ佐藤を見もせずに警棒をたたきつけ再び沈めた

これも、修行の成果と言えよう。単純な動きであれば、今の雷火の日に死角はないのだ


「行くぜ・・・無我っ」


「!?」


晴れの日の無我のイメージは、完全なる無。なにも感じない純粋な殺気だ

ただ相手の息の根を止める。ただそれだけを目的とした殺気が男を包み込み、心を芯から凍り付かせる


「・・・ふっ!」


無我の効果で戦闘力が上昇している晴れの日は、高速で繰り出されるジャブすらゆっくりに見えている

だからこそ、落ち着いた趣で銃の引き金を三回引いた

銃口から放たれた熱線は全て男の右こぶしをきれいに捉える


「ぐわぁああぁあっちぃぃぃぃい!!」


あついどころではないだろう。もはや皮膚は焼け落ちているのだ

そして焼けた拳を抱えてその場に崩れ落ちる。もはや戦意など残っていないだろう

ほんの一瞬の無我でここまでの飛躍的パワーアップに晴れの日は感動と疲労を覚え、すぐに解除する


「・・・っと俺の勝ちだな、こりゃ」


「遅いじゃない。わたしなんか無我使わずともこの速度よ」


相変わらずの皮肉だが、今の晴れの日は上機嫌。そんなもの、聞き流せる

銃口にフッと息を吹きかけ、深髪の方へと向き直る。そして晴れの日は銃を、雷火の日は警棒を突き出して声をそろえた


「大人しく」


「投降しなさい」


2人が放った殺気は深髪の背筋を凍らせ、さらに戦意そのものを刈り取った

当然、そんな状態の人間を逃がすほど二人は落ちぶれていない。雷火の日のロープで腕を括り、そのロープの重さを50kgに設定する

軽くもなく、重すぎない。まさにうってつけの重さだ

さらに声も出せないように、と猿轡も付けた

そして任務完了の連絡を天候荘に端末で入れ、二人は迎えのヘリを待つ


「・・・それにしても」


「言いたいことは分かるぜ・・・俺たち、強くなったな」


身動きの取れない深髪をよそ眼に無言でうなずく雷火の日

たしかに、変革者三人を同時に相手して、無傷での生還が出来るなど、中々に強くなったと実感できる成果だ

これには雷火の日いえども共感している


「晴れの日、あんた最強の変革者になるって言ったわよね」


「ん?あぁいったぜ」


「・・・最強の、コンビってのはダメかしら」


思ってもみなかった提案だ

だが、願っても居なかった提案でもある


「ははっもちろんOKだ!目指そうぜ・・・最強の変革者コンビ!」


すっと握手を求めて手を差し出すが、さすがに握手はしてくれないようで、雷火の日は腕を組んでしまった

だが、それでも十分に気持ちは伝わる。それにそもそもここで握手をするような人ではないと晴れの日もしっかりと理解していた


「えぇ。いつか雷様に認めてもらって、あの天パを倒して、最強になりましょう。・・・・・・・・・」


迎えのヘリの羽の音が大きく聞こえ、惜しくも雷火の日の最後の一言は晴れの日には聞き取れなかったが、口の動きでなんとなく理解できた

彼女はこういったのだ


―――よろしく。最強候補の晴れの日っ?


最期に疑問視が付いたのが実に雷火の日らしい、と晴れの日は苦笑いを雷火の日に見えないように浮かべるのであった

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