第十一話
第十一話
「せりゃあぁああ!」
大きく跳躍し、重力を操作しながら器用に嵐の日の懐に即座に入り込む
その速度はというと人間の目でとらえるのが限界の速度に達しており、嵐の日も即座な対応は間に合わない
「速さは充分、か。雪っ」
「はいナ!」
だが状況を冷静に分析し息の合った連係で雷火の日の目の前に盾のような氷が一枚現れる
速度に合わせた嵐の日もさすがだが、一言で対応して見せた雪火の日も恐るべき戦闘の勘だ
「ちょ!?」
思わぬ妨害に驚きが隠せない
「油断はダメですヨ?」
だがまさに双子のコンビネーションだ。作成した氷の盾を嵐の日が風を操って雷火の日目がけてまっすぐ突撃させる
その攻撃を回避しなければ危ないことを本能的に察し、大きく後ろに跳躍する。その刹那、雷火の日がつい先まで居た場所に氷が衝突し、膨大な破片を散らして砕け散る
「危ないわね・・・」
割れた氷の破片を一枚持ち上げて握りつぶしながら雷火の日がふぅっとため息をついた
「危ないのはまだまだこれからだぞ?」
その言葉が言い終わると同時に一切動くことなく周りに風が嵐の日の周辺に集まっていく。その風は、砕けた氷を巻き上げ光をちらちらと反射させる
光を反射させている破片一つ一つはとても小さく、目にギリギリ見えるほどだ
「一応加減はするが、直撃はまずいからちゃんと避けろよー」
「くっ・・・ならそんな攻撃しないでよ・・・!」
警棒を前に構え嵐の日の攻撃に備える。一応安全を考慮して、防御構え終わったのを確認した嵐の日は不敵に笑い、人指し指を雷火の日に向ける
その瞬間強風が吹き荒れ、破片が襲い掛かる
「万が一は頼むぞ雪」
「えー・・・兄ちゃんの責任デスよ?」
「呑気ねまったく!!」
向かって来る破片を我武者羅に警棒で叩き落とすが、やはりすべてとはいかない。徐々に手や足に切り傷が増えていく
「く・・・」
「ほら、あとすっこしだーぞ」
相変わらず呑気な口調で緊張感こそないが、現状は恐ろしい
徐々にスタミナも減る雷火の日の体には着実に切り傷が増えていく
「訓練を思い出せ・・・わたし・・・!」
撫子と励んだあの訓練を思い出し、感覚を破片にだけ集中する
雑念を捨て去り、ひたすらに破片を撃ち落とすことだけに専念した。すると徐々に音が消え、視界からは破片以外が消え去った
「・・・」
何もかもがスローモーションに見える
意識がクリアになり体が軽い
「まさか無意識で・・・?」
「兄ちゃん、この感じっテ・・・」
双子の目に驚きが宿る
「は、あぁあぁあぁあ!!!」
まさに一瞬の出来事だった
全ての破片が消え去ったのだ
もちろん、雪の日や嵐の日がやったのではない。雷火の日が全てを粉々に砕いたのだ
「おぉ・・・」
思わず感嘆を漏らす嵐の日
「・・・っはぁ・・・はぁ」
だが、雷火の日は既に満身創痍。肩で息をして、意識も朦朧としている
明らかに異常だ。と、そこに晴れの日の教官をしているはずの雨の日が駆け付け、ふらっと足の力が抜けてその場に崩れ落ちた雷火の日を受け止める
「おいおい・・・まさか無意識で今のやったのか?」
急な問いに雷火の日は何とも言い難い
なにをやったのか自分でも理解していないのだ
「わたしが・・・なにを・・・?」
「あー、今のは無我ってんだ。お前かなり大物かもしれねーな・・・」
そう、あの一瞬だけ雷火の日は無我の発動をしていたのだ
あまりに集中しすぎて発動したのだろうが、なんの訓練もなく無意識に発動するなど、ここ天候荘始まって以来の出来事だった
「とりあえず一旦休め?嵐、雪、雷火の事よろしく。撫子、一応診てやってくれ」
「はいナ」
「あーいよ」
「分かったわ!」
三者三様の返事をして各々雷火の日の周りに集まる
雨の日は雷火の日の事を撫子に任せすぐに晴れの日の下に戻り、今起きた状況を説明した
「雷火の奴、無意識に無我使いやがったぞ。お前もがんばんねーと、なぁ?」
「マジで!?でもなんか雨さんと違って雷火の無我は感じが違ったな・・・?」
晴れの日が雨の日の無我から感じた恐怖は、自分が破壊される恐怖だ。しかし、雷の日から感じた無我のイメージは、一言でいえば孤独になっていく恐怖のイメージだったのだ
「・・・お前、やっぱ感受性高いのな。普通素人には分かんねーんだけどな、そーゆーの」
「そうなの?」
「そーなの」
雨の日の目にも驚きが走るのが見て取れる
それほどまでに晴れの日のこの感受性は高いのだろうか
「でもそのくせ人ころしてもそーこまで凹まねぇし・・・お前何なの?バカなの?」
呆れたような目で見てくる雨の日だが、何と聞かれても困る
晴れの日自身深く人の死について考えたことがないのだ
「んー・・・人が死ぬのは悲しいけど、しょうがないことじゃん?いつかは死ぬんだし。人間は。それとバカじゃない!!」
「お前・・・自分の母親についてはどー思う?」
バカについてはあえて無視した雨の日
声のトーンを落として真面目な顔をした
「母親?あー・・・まぁなんかよく分かんないんだよね・・・死んじゃったのは知ってるんだけどさ、なんかこう自分の中でもフワッとしてて」
自分の母親が死んだショックか何かだろうか。確かに身内が死んだ悲しみでそのことを受け入れられず悲しみが現れないという話は聞く。晴れの日もきっとそうなのだろうと雨の日は勝手に結論付ける
「ま、今はどうとも思ってないさ!うん、よし、最強変革者になるためにはやっぱ無我は必須だな・・・やるぞぉ!」
「こいつ・・・いや。やっぱり何でもないか。しゃーない、俺も本気で教えるかな・・・」
「え!?いや最初から本気で教えてよ!?」
相変わらずやる気の感じられない雨の日だが、今度こそ本気を出したようだ
何やら目の色が違う
「いいか?まずは基本の型からだ・・・」
そして、晴れの日の訓練は明け方から夜まで続き、雨の日もそれにつきっきりで教育した
そんな日が、数週間続き、遂に晴れの日は一つの大きな成長を遂げるのであった・・・




