第六話
第六話
「な、なんでみんなほっぺた真っ赤なの・・・?」
当然と言えば当然の流れだが、買い出し班+雷火の日晴れの日が帰宅したときの開口一番はやはりその台詞だった
「気にしないほうがいいと思うわ雷様・・・」
頭を抱える雷火の日
まぁ、身内が路上であんなことしていた、だなんて言いたくもないし、部下がそんなことをしていたなど雷の日に知らせたくもないのだ
「わ、わかった・・・?」
語尾に疑問詞が付いたあたり、納得はしていないのだろう
だがこれ以上追及するわけにもいかない空気を読み取り諦める
「あ、撫子帰ったかわりぃけどこれ手伝ってくれ・・・ってうぉ!?大丈夫かほっぺ!?」
体中にカラーテープを絡まらせて雨の日が現れる。もちろんふざけているわけではない。雨の日は天性の不器用な手の持ち主で、折り紙は飛ばない紙飛行機しかおれず、お菓子の袋は開けようとするたびに爆発するほどの実力で、今回もそれが原因だろう
「大丈夫よ・・・いててて・・・」
雷火の日に叩かれたところがひりひりと痛む撫子。気温が低いときに平手打ちとは雷火の日らしいお仕置きだ。みんなは経験がおありだろうか?寒い時の平手打ちは想像するだけでも身がすくむものだ
だがなぜ被害者である撫子までも殴られたかは雷火の日の気分、と言わざるほかないだろう
「いやいや、かなりあけーぞ?・・・こっち座ってろ、氷とってくっから」
雨の日は全身に絡まったカラーテープをゆっくり落ち着いて取り外す
・・・と思ったが流石不器用。見事に引き裂いて脱出した
「ありがと雨様・・・てかテープ破いちゃだめでしょ!」
「あれ・・・私たちは?」
「姫、多分望むだけ無駄だよ・・・」
加害者である元凶二人は誰からもなぜか心配の言葉を貰えずため息一つついてがっくりと肩を落とすのだった
「それじゃ、時期は遅くなったけど晴れの日、合格おめでとう&雷火の日生還おめでとーう!!!」
パァンとクラッカーが盛大に鳴り響く。時はすでに日も暮れて夜。準備も難なく進み、天候組のほとんどのメンバーが祝いの会に出席していた
並べられたテーブルの上にはフレディが作った色とりどりでおいしそうな食事が並び、各椅子の前にグラスと、人によってお酒やワイン、ジュースが注がれており、それを手に取り全員が祝杯を挙げた
「あ、ありがとうございます・・・!」
「ん・・・ありがとう」
今夜祝われるとは知ってはいたが、それでもこういった席はうれしくも照れる。片手にグラスを持ったまま頭をポリポリと掻く晴れの日と、やはり少し照れてたどたどしい雷火の日
ふと思ったのだが、雷火の日もだいぶ棘が抜けてきたと思う。晴れの日がであった頃の雷火の日であれば、フンッと鼻を鳴らしそっぽを向いたであろう
「はぁ・・・俺だけジュースか・・・」
そんな祝いの席の中、一人うなだれる男の姿が
お察しの通り雨の日だ
手に持っているのは八矢サイダー。炭酸飲料で、当たり前ではあるがノンアルコールである
その背中をポンッと雷の日が叩く
「・・・どんまい」
「おう・・・」
雷の日はお酒、雨の日は八矢サイダーで乾杯してゴクっと一気飲みをする雨の日
自棄飲みというやつだろうか
「全く・・・情けないわね天パ皇子」
そこに雷火の日が歩み寄る
晴れの日にしてみれば雷火の日から話しかけるなど珍しい光景ではあるが、実のところ不仲というわけではないこの2人。たとえるならば反抗期の娘と口うるさい父親のような関係だろう。もちろん本人が言ったわけではないが、雷の日はそうだと思っているようだ
「うっせ・・・ほれ、みんなと騒いで来いよ」
「そーだよ雷火ちゃん!折角の快気祝いなんだから・・・」
雨の日と雷の日は雷火の日に、楽しそうに騒ぐ女子たちを見ながらそう告げる
だが、雷火の日はその光景をただ眺めるだけで足を踏み出そうとはしない
「折角だけどいいわ。ほら、私同年代との付き合い苦手だから・・・」
幼少期から続いた親のネグレクトによりまともに友情をはぐくんだことのない雷火の日にはこういう場は苦手なのだ
だが、そんなこと露しらず、晴れの日が現れる
「なんの話?雷火、みんなのとこ行かねーの?」
雷火の日の身の上を知らない晴れの日は思ったことを素直に口に出した
「・・・騒がしいのは苦手」
だが、雷火の日は目を合わせることなく手に持ったジンジャーエールを一口飲む
「んー・・・勿体ないぜ?案外楽しいって!!来いよ!」
何気なく手を差し出す晴れの日
だが当然雷火の日はその手をパチン、と振り払う
ここで突然手を取るのも不思議な話だが・・・
「いいってば・・・ここで雷様達といるわ。晴れの日は騒いできなさいよ」
「もぉ・・・雷火ちゃん・・・折角だからさぁー・・・」
隣では雷の日も苦笑いで雷火の日にみんなの輪に行くことを促す
だが、雷の日の言葉ですら雷火の日は動こうとしない。よほど苦手なのだろう
「ったく・・・ほらっ来いっての・・・!」
「きゃっ!?何・・・よ・・・!」
軽くため息を吐いて晴れの日はグラスを持っていない方の雷火の日の手をつかむ
そして女子たちが騒ぎ楽しむ輪に向けて引っ張っていく
「はなし・・・な・・・さい!!」
「んな大人ぶったことやってねーで俺らと、さ・・・わげって!楽しいから!!」
突然引っ張られ一瞬体が傾いた雷火の日だが、すぐに両足で踏ん張り両者譲らぬ一進一退の攻防が始まる
「ぐぬぬぬぬぬ・・・」
「はなしな・・・さい・・・・」
だが、決着は思いもよらない方法で着くことになる
「全く・・・わーあしがすべったー」
これ以上ない棒読みと無表情の雨の日がいかにもワザとらしい動きで足を突き出し雷火の日の足をまとめて払う
つまりは足払いだ
それを受け踏ん張っていた両足が宙から離れ、当然晴れの日の方向に引き寄せられる雷火の日
「こんのっ天パ!!」
だがしぶとい雷火の日はさらに足を地に着け踏ん張る
「あーしがすぅべったー」
だが、それを見越していたのか今度は雷の日が足を掛け、無理やり雷火の日の両足をさばく
支点を完全に失った雷火の日は一気に晴れの日に引っ張られる
「おーい!雷火も混ぜてやってくれよー!」
一応倒れないように足を引っかけた雷の日の計らいのお陰で簡単に晴れの日は雷火の日の行動を握ることができた
そしてここぞ好機と見た晴れの日は女子たちに向かって呼びかける
その声に反応する霙の日や風の日。滅多に輪に入ろうとしない雷火の日が来たことで一瞬目を丸くするが、すぐに笑顔になり二人目がけて駆け寄ってきた
「なになに~っ?ガールズトーク初参加だね雷火ちゃん!」
「さてさて、雷の日の大ファンである雷火の日はどんな話をしてくれるのかな~・・・?」
「え、あ、そのー・・・」
二人の強烈な絡みにあの雷火の日でさえ後ずさりしてしまう
そして両腕をがっしりとホールドされる
逃げ場は完全になくなったようだ
「風さーん、霙―!あとはよろしくっ」
グッと親指を立てる晴れの日に対して悪がらみ二人は同じように親指をグッと立て、白い歯をきらりと輝かせ、黒い笑顔を見せる
雷火の日は完全に二人の思いのまま。逃げ場さえなく連れていかれてしまった
そして最期の最後に・・・
「晴れの日!天パ!!覚えてなさいよ!雷様は足が滑っただけだからいいけども!!」
残念ながら後でお咎めがあるようだ
どんなお咎めなのかは考えたくはないが、今はしてやったりの気分の晴れの日他二人
にやにやと女子2人に絡まれる雷火の日を見ていた
と、そこにチューハイを持った撫子が現れる
「雷火、案外天候組に馴染んでるじゃない?」
「撫子ちゃんもそうおもうよねっ!」
「馴染む?」
開口一番のセリフにピンとこない晴れの日が尋ねる。たしかに距離のある感じではあったがそこまで拒絶しているわけではなさそうだからだ
その問いには雷の日でもなく撫子でもなくいつのまにか背後に居た曇りの日が答えてくれた
「・・・いままでの雷火なら能力使ってでも全力で逃げていたさ。それだけ他人との関わり方が不器用なんだよ、あいつは」
「そう・・・なんですか・・・?」
思いがけない言葉に晴れの日は一瞬困惑する
うっすら雷火の日の昔に何があったのか聞きたい気もするが、それを第三者から聞くのは反則であると自分なりのルールがそれを許さなかったのでいまだ聞けず仕舞いだ
「ま、若干棘は残ってるけどなー。お、撫子それちょっとくれね?」
「それは雷火ちゃんのキャラだから残っていてもいいんじゃないかな?あげちゃダメだよ撫子ちゃん?」
さり気なく撫子のチューハイを飲もうとする雨の日の手を雷の日が叩く。その光景を撫子はやれやれと言った目で苦笑いを浮かべた
「あ、そういえば雪と嵐は・・・?」
思い返せば双子の姿を見ていない。最初の乾杯の時には居たのだがそれ以降声すら聴かないのだ
「あぁ。双子なら奥の机でフレディにチェスを教わっているさ。最近のブームなのだと」
グラスの生ビールを飲みほしそのグラスで雪の日と嵐の日のいる方向を指す曇りの日
その先を見てみると、双子は熱心にチェス盤と駒を睨んでいる
そしてその横にはフレディが指さしで解説をしている
「ブームなんだ・・・」
「確かフレディ、チェスの有段者じゃなかったかしら?」
撫子が首を傾げながらそう呟く
「え・・・ほんとフレディ一体何者・・・」
これまでに晴れの日はフレディについて数多くの謎を聞いてきたが、それでもいまだにフレディのスペックのすべてを網羅しきれない
「あいつはー・・・俺らもよくわからん」
雨の日が寂しそうに自分の手に握られた八矢サイダーを一気に飲み干し、酔ったような雰囲気を醸し出す
もちろん、全くもってよってなどいないが
「そうなんだ・・・ってそうだ、雨さん!」
急に真剣な面持ちに変わる晴れの日
その雰囲気を感じ取ったのか、雨の日も心なしか真面目な雰囲気を装う
「・・・どーした?」
一呼吸開けて晴れの日がまっすぐに雨の日の目を見る
その光景を周りの人たちは触れてはならない空気と悟り静かに見守る
「俺に・・・前衛としての動きを教えてくれ!!」
「・・・お?」
晴れの日の声は覇気の籠った声ではあったが、なぜか周りの人はほほ笑むだけで驚きの表情をするものは誰もいない。雨の日でさえ、眉ひとつ動かすことなく答えた
「俺、もっと強くなりたい!雷火を、みんなを守れるくらいに・・・いや」
少し間をあけて決意のまなざしで雨の日をしっかりと見据える
「決めたんだ・・・ずっと俺、能力を制御することだけを考えていた・・・けど俺決めた!!俺は天候荘で一番になる。ここの・・・最強の戦士になってやる!!いつか雨さんも雷さんも曇りさんも倒せるくらいの、強い戦士に!だから頼む!!俺に戦いを教えてくれ!!」
頭を深々と上げる。この思いは本物だ。決して楽な道ではないことも、少なからず無謀であるということも百も承知で覚悟を決めたのだ
その話を最後までしっかりと聞いた雨の日はスッと晴れの日に近寄りその肩をポンとたたいた
「・・・明日からはじめっぞ。覚悟しとけ?それと、いって置くが俺らはおめーになんてゼッテェまけんからな?」
「勝って見せるさ・・・っ!今は無理でも、きっとすぐにでも!!」
弾かれたように頭を上げた晴れの日の目には希望とやる気に満ちていた・・・




