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変革者  作者: 雨の日
第三章~轟く雷、火災を起こさん~
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第二話

第二話


「あぁ、そーだ雷火」


部屋を後にしようとドアノブに手をかけた時後ろから雨の日に呼び止められる

どうせ大した要件であるはずがないと勝手に考えて振り返ることなく雷火の日は返答する


「何?」


振り返らずに答えることには何も雨の日は言うつもりがないらしい

そのまま話を再開させる


「今夜宴会な」


たった一言そう呟いた

宴会

言葉通りの意味で、みなで集まり飲み、喰い、騒ぐ会

だがここでの宴会は一つ違う

まず、開く機会は新人が入ってきたとき。それから

命の危機を脱した者の快気祝いだ

今回の宴会は恐らくそのどちらもの意味を兼ねているだろう


「分かったわ。でもだからってまた大騒ぎしてフレディ怒らせないでよね?あの人、あんたより起こると怖いんだから」


昔、宴会をしたときに雨の日は酔いに酔って大騒ぎをしたのだ

能力を使う寸前のところまで行ったとき、フレディが颯爽と現れ、一撃で雨の日の意識を狩り、そのままどこかへ消えていったきり雨の日は帰ってこなかったのだ

その時のフレディの顔は思い出したくもないほど怒りに満ちていたとういう・・・


「うっせ、だーれが騒ぐかっての!」


「雨・・・少しは反省しなよ」


雨の日の反省の色の無さにいつもの事と思いつつも呆れざるを得ない雷の日がぼそりと呟く


「全く・・・じゃぁわたしは行くわよ?」


そういってドアを開けた時、今度は雷の日が声をかけてくる

一度にすべての要件を話してほしいと内心思うが黙って足を止めた


「雷火ちゃん、彼にもお礼いっときなよ?」


「・・・失礼します」


彼が差す人物が誰かまでは言わない

だがそれでも十分に意味は伝わった

雷火の日は眉ひとつ動かすことなくドアをゆっくりと閉め今度こそ退室していった

残された二人は大きくため息を一つつく


「さて・・・問題は山積みだぞ雨」


「だなぁー・・・曇りの奴まだかよ・・・」


雨の日はソファに、雷の日は自分の席に座り曇りの日の到達を待つ

まもなくしてドアがノックされる


「おー来たか来たか。ほれ、入れって!」


まるで自室のように来客者を部屋に招き入れる

だが雷の日はもう慣れっこだと言わんばかりの顔でその様子を見ている

ドアが開かれ、黒いガウンコートを羽織った少しキツイ目をした曇りの日がはいってくる


「すまん。遅くなった」


「大丈夫大丈夫!」


雷の日が気楽に声をかける

その言葉に軽く頷き曇りの日はそのまま雨の日の対面に位置するソファに座った


「さて、と三人そろったしさっさと始めよーぜ」


「・・・アナザーについて、か」


「白さんが出てきたってことはそろそろ本気ってことかな・・・」


雨の日を除く二人の顔付が険しくなる。さすがは無気力政権、雨の日。たとえ案件がアナザーであってもぶれることのない無気力さだ

そう、今回の議題はアナザー。彼らは天候荘の敵である以前に人類的に見ても敵である組織だ


「そういえば次の龍脈の活動予想はどうなんだ?」


椅子に座る雷の日に曇りの日が尋ねる

そうだなぁと言いながら自分の机の引き出し内から束になった紙を取り出して雷の日は言葉を濁らせる


「あー・・・んと、一番早くて二か月後で場所は・・・っと名古屋城かな」


「二か月、ねぇ・・・ならやっぱ晴れと雷火鍛え上げておくか?」


残された期限はあと二か月。二人の強化を自分で言っておきながら面倒くさそうに顔をゆがめ苦虫を噛んだように舌を出す


「それが最優先事項だな。なにせあの双子だけでは対応しきれない事案が増えてきたからな?」


「花の園とか聖騎士とかにも依頼はしてるけど・・・やっぱあの二人かな・・・雨、言いだしっぺだし頼める?」


雷の日と曇りの日の視線が一点に集まる

ソファの背もたれに両手を広げ首を後ろに倒し足を組んでいた雨の日は肩を落として体制を前傾に傾け指を絡め覚悟を決めた


「ふぅ・・・しゃーない。ばっちりしごいてやるか」


「頼んだ。それともう一つ、白さんの事なんだけど・・・」


後半になるにつれてまるで言葉そのものが重いものかのように口調が重くなる雷の日

だがそこまで言ったとき曇りの日が口をはさんだ


「ここに来るまでに白雨さんの話は聞いたが、俺たちが処理している余裕はないだろ?雨さんには悪いが、お兄ちゃん達辺りに頼んでみたらどうだ?」


「あー・・・玉霰か・・・アリかも知れないね、後で連絡入れとくよ。それでいい、雨?」


顎に手を当て少し考えたが明暗と踏んでポンッと手を叩いた雷の日

玉霰とは雷の日達と仲のいい別の件の支部にいる変革者の名前だ


「んあ?別にいーぞ。アイツとは今や敵、気にすることはなーんもね~よ~」


大きく欠伸をしながら背もたれに体を預け眠そうに目をこする


「そっか・・・っとじゃぁ最後に、ラスト・ワンについて」


その単語が飛び出した瞬間、ようやく雨の日も目付きが変わる

流石にこの案件を夢見つつで聞くわけにはいかないのだ


「・・・今のところ分かったのは惑星の並びがある一定の時に発動するもの、らしい。アナザーも恐らくこれくらいの情報しかないと思うよ。でも深髪が向こうの仲間になったとしたら・・・」


深髪 亮。晴れの日達がターゲットにしていた男

天候荘からアナザーに鞍替えした人物で、ラスト・ワン、及び所属者に関する情報を主に担当していたようだ


「深髪は俺の方で追っている。だが何分、外国の首脳からの依頼が多くてな、正直中々に難しい」


「わりーな曇り。もーしばらくは我慢してくれや。ココを維持するのに国に顔打っとかなきゃいけねーし」


「あぁ。それについては俺も同意見だから雨さんも気にしないでくれ」


「さん、はいらねーって・・・」


曇りの日は自分の師である雨の日に対し、訓練生だったころから丁寧にさんを付けて名を呼ぶ

本人は板についてしまい今更変えられないようだが、雨の日は若干複雑な気持らしい

なにせ曇りの日の方が年上なのだ、あまり礼儀に五月蠅くない雨の日も困惑気味の様子


「んーと、じゃぁ今日はこのくらいでお開きにして夜の宴会の準備しますか!!」


バンっと書類を机にたたきつけ元気よく立ち上がる


「あぁ、そういえば雨さん。フレディからの伝言がある」


気持ちの切り替えが速い三人は先の話を全て胸にしまい込む

そして三人そろって部屋を出ながら曇りの日が残念そうに言葉を紡ぐ


「なんだって?」


一呼吸開け、つらい現実を突きつける


「今日は禁酒、らしいぞ」


「なん・・・だと!?」



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